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いまさら聞けない!家と暮らしのキーワード
記事作成・更新日: 2017年 2月17日

可愛い見た目でエコロジー。
ストローベイルハウスってどんな家?

いまさら聞けない!家と暮らしのキーワード

photo by Sandra Cohen-Rose and Colin Rose

ストローベイルハウス(藁の家)という言葉は、日本ではまだ一般的ではないので、ご存じない方も多いと思います。

ストローベイルハウスとは、藁のブロックを積んで表面にモルタルや土を塗った家のこと。外見のイメージは映画「ロード・オブ・ザ・リング」に出てきたホビットの家といえば分かりやすいでしょうか。

壁の表面はどことなくデコボコとしていて、全体的に丸みのあるフォルムのそれは、絵本に出てくるような可愛らしくて温かみのある外見です。

ストローベイルハウスはアメリカの草原から生まれた

photo by Brett and Sue Coulstock

ストローベイルハウスは1850年頃にアメリカで誕生した家で、現在アメリカでは3,000棟以上あると言われています。

人間は古くから身近にある材料を使って家を建てました。日本では木材、乾燥した土地では日干しレンガが家の材料に選ばれていますが、ストローベイルハウス発祥の地と言われるアメリカのネブラスカ州は、樹木がほぼ生えていない草原地帯でした。そこで開拓者たちが草原の草を固めて家を建てたのがストローベイルハウスのはじまりだと言われています。

当初は土地の風土に根ざした建築方法でしたが、可愛らしく素朴な見た目や機能が注目され、書籍やメディアでとりあげられる中でムーブメントが起こりました。このムーブメントが起こったのは発祥の地アメリカでも1990年代以降のこと。ストローベイルハウスはまだまだ歴史の浅い家なのです。

ストローベイルハウスは、先述したように藁を積み上げ、その表面を土壁が覆っている家。日本では耐震性や建築確認をクリアするため、木材で柱をつくり、その周りに藁を積み上げることが多いようですが、外壁を土と藁でつくるため、壁が呼吸を行い、室内の空気の温度・湿度を一定に保ってくれます。このおかげで、夏は涼しく、冬は暖かい室内空間をつくることができます。そのほかに、材料の藁が音を遮ってくれるため、防音機能にも優れています。

また、ストローベイルハウスは自然由来の材料のみで建てることも可能です。そのような建て方をした場合、家は放っておけば土に還ります。これは「アースバックハウス(地球に還る家)」と呼ばれ、サスティナブル(持続可能)な建築方法として注目されています。

※ストローベイルハウスは全てが土に還るわけではありません。中には、耐久性や耐震性を持たせるために、コンクリートの基礎を打ち、柱に鉄骨を使うこともあります。

エコロジーで、自分でも建てられる

photo by Peter Blanchard

「エコロジー」という言葉を私たちが使い始めたのは、1990〜2000年代のことでしょうか。「環境破壊」や「地球に優しい」という言葉もこの年代から登場して、今や誰も知っている言葉になりました。

アメリカで生まれたストローベイルハウスは、「エコロジー」という価値観と共に日本にも少しずつ広まっています。たとえば、埼玉県鳩山町には「Peace Villa はとやま」という、ストローベイルハウスの家を集めたシェアビレッジがあります。

ストローベイルハウスは材料も軽量で比較的簡単に建てられるので、女性や子供でも建築に参加でき、セルフビルドしてしまう人も。中には佐賀県唐津市に住む本山早穂さんのように、女性一人でストローベイルハウスを建てる人も現れています。

建築費用は施工業者に頼んで建てる場合、1,500〜2,000万円と通常の家と変わりませんが、セルフビルドの場合は材料費のみで建てられるので、費用を大きく削減することができます。

サスティナブルで、防音・断熱・調湿に優れ、やろうと思えば個人でも建てられてしまう…と聞くと、ストローベイルハウスが注目されていることも頷けます。

反面、難点なのは外壁を藁でつくることから壁に厚みができてしまい、敷地面積に対して居住スペースが狭くなってしまうこと。他にも強度の問題から、2・3階建ての家には向いていないこと。また、藁は雨に濡れると腐ってしまうため、壁にひび割れができたら修復が必要で、メンテナンスが必須なことなど、いくつかのデメリットもあります。

アメリカには100年以上前のストローベイルハウスが現存しているといいます。しっかりとメンテナンスをすれば耐久性は問題なさそうです。

ストローベイルハウスのつくりかた

photo by Brett and Sue Coulstock

ストローベイルハウスのつくり方はいたってシンプル。大まかですが、その手順を説明します。

1. まずは土地を平らにならす
2. 石で基礎をつくり、その上に柱を建て、梁を乗せる
3. 圧縮した藁の束を用意して柱の間に積んでいく
4. ある程度藁を積んだら上から圧縮して、さらに藁を積んでいく
5. 藁を積み終えたら、紐で固定する
6. 紐で固定したら、藁の表面にモルタルを塗る
7. 藁が見えなくなるまで土壁を塗り終えたら、乾燥するのを待ち、屋根を乗せて完成

以上がストローベイルハウスのつくり方です。比較的簡単につくれる家とはいえ、そこはやはり家。各行程にそれぞれコツがあり、つくり方で壁の強度も耐水性も大きく変わってしまいます。

十数人で集まりストローベイルハウスを建てるワークショップも開催されているようです。ストローベイルハウスは比較的簡単に建てられる家ですが、基礎づくりや左官の技術が必要です。もし建ててみたいと思った方はワークショップに参加し、専門家に学ぶのが良いでしょう。

現状、ストローベイルハウスの建材になる藁のほとんどは、家畜の飼料用に使われているため、材料の確保に少し手間がかかります。農家さんに交渉して譲ってもらうほか、NPO法人富山ストローベイルハウス協会で藁のブロックを販売しているので、これを利用するのも良さそうです。

見た目の可愛らしさだけでなく、断熱・調湿・防音に優れ、サスティナブルなストローベイルハウスは、メンテナンスの手間を考えても魅力的な家です。
まだ国内に施工業者は少ないですが、先述したNPO法人富山ストローベイルハウス協会のほか、有機建築左吉など、ストローベイルハウスに特化した施工業者も生まれています。

家は藁で建てる、という選択肢も今後は少しずつ一般的になってくるかもしれませんね。

また、長野県安曇野市にある「ホリスティックリトリート 穂高養生園」や、長野県小諸市のゲストハウス「読書の森」のように、ストローベイルハウスがある宿泊施設もあるので、実際に足を運んでみるのもいいですね。

Text 鈴木雅矩

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