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LiVESの家
記事作成・更新日: 2017年 2月25日

雄大な棚田を見渡す。自然の大地や光、風と一体になる家

風景を通す家

風に揺れる麦の穂、朝日で目覚める心地よい朝、空気に含まれる緑の匂い、小さな鳥のさえずり。家にいながら、自然に包まれるように暮らす。

text_ Shiho Ikeda photograph_ Takuya Furusue

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敷地の南側にゆったりとつくった庭。北側の玄関ポーチからもアクセスできる。ジューンベリーが育ち、実を摘んで奏汰くんに食べさせてあげるのがご夫妻の楽しみ。

風景を通す家

(愛知県豊田市)

設計
ihrmk
住人データ
夫(33歳)会社員、妻(30歳)主婦、長男(1歳)

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莉沙さんのお祖父さまが所有していた農地の一部を住宅地に転用。建物の南には、段々に連なる麦畑や田園が広がる。夜には遠くからでも家の明かりが見える。

斜面一帯に広がる棚田の細道を下りて行くと、街の集落から離れて佇む一軒の家が見えてくる。

夜の帰り道、我が家から明かりが漏れているのを見ると、ほっと心が安らぐんです

そう話すのはこの家の主、井原拓さん。奥さまの莉沙さんと結婚してから、いつか建てたいと思い続けていた念願のマイホーム。息子の奏汰くんも産まれ、のびやかな環境での子育てライフを満喫中だ。

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来客を通すリビングは1階に配置。リビング階段で上下階で過ごす家族の気配を伝える。

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生活感が現れやすいキッチンはダイニングと一緒に2階へ。左奥にパントリーを設けた。

もともとこの場所は、莉沙さんのお祖父さまが所有していた農地の一角。市街化調整区域のため、周りに建物がほとんど建っておらず、将来的にも抜群の眺望が期待できた。

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アートポスターを随所に配したカフェのようなインテリア。

大きな窓から、光と風が気持ちよく入ってくる家にしたいと思いました。自然の光で目覚める生活がしてみたいなって…

拓さんのその言葉が、設計の出発点となった。1階には棚田との一体感を楽しむ庭とフルオープンの窓で外とつながるリビング。2階はスキップフロアでつながるキッチンとダイニング、書斎、個室の寝室を配し、それぞれの空間に壁一面のガラス開口部を設けている。

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室内壁は白く塗装したシナ合板の目透かし張り。板の継ぎ目に棚柱を埋め込み、自由な位置に棚を取り付けて雑貨などのディスプレイを楽しめるようにした。

景色を楽しむのはもちろん、外の風の流れを家の中でも感じられるように、風配図を参考に窓や部屋の配置を決めました。この敷地は南北に風が抜けるので、南に大きく外部空間を取り、リビングを開放しました

と話すのは、拓さんのお兄さまで建築家の井原正揮さん。

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自然の光で目覚められるように、2階の寝室にも壁一面に窓をたっぷりと設けた。上部に半透明のポリカーボネートを使い、直射日光の眩しさを軽減している。

2階の壁一面の開口は突き出し窓とFIX 窓を組み合わせることで開閉しやすく、必要なだけの風を取り入れて快適な温度に調整できるように工夫。高窓も設けて、夏はこもった暖気を外に排出。冬は土壌蓄熱床暖房で室内を
あたためる。なるべくエアコンに頼らず暮らせる、自然と調和した住まいとなった。また、室内の間仕切りを極力なくして吹き抜けのリビング階段を配し、常に家族の気配を感じられるつくりに。目透かし張りの壁・天井やオークの無垢フローリング、窓には木製サッシを用いるなど、自然素材もふんだんに採用し、ナチュラルで心地よい空間に仕上げた。

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庭に面したリビングに縁側を設けて内外を連続させ、窓はフルオープン可能な折れ戸に。木製サッシで高い断熱性を実現。外の自然の風景ともよく馴染んでいる。

公園に行かなくても、自宅にいながら自然の中で遊んだり寛いだりできるのが嬉しいですね。この春、庭のジューンベリーが初めて実をつけて、息子に摘んであげたらとても喜んで。いつもおかわりしならが美味しそうに食べています(莉沙さん)

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周囲の雄大な風景を切り取る2階の開口部。大きな開口を分割し、高さを変えて開閉可能な突き出し窓を配置。風通しを細かくコントロールできるようにした。

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2階はスキップフロアでつながる書斎、ダイニングとキッチン、個室の寝室と、それらを見下ろすロフトがある。床レベルが高くなるほど私的な空間になっていく。

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〈物件名〉風景を通す家〈所在地〉愛知県豊田市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈用途地域〉市街化調整区域〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉243.11㎡〈建築面積〉62.11㎡〈床面積〉1階50.94㎡、2階48.86 ㎡、合計99.80㎡〈建蔽率〉25.55%(許容60%)〈容積率〉41.05%(許容200%)〈設計〉井原正揮/ihrmk〈施工〉丸長ホーム〈設計期間〉9ヶ月〈工事期間〉9ヶ月〈竣工〉2014年〈総工費〉2,900万円


※この記事はLiVES Vol.82に掲載されたものを転載しています。

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