風に揺れる麦の穂、朝日で目覚める心地よい朝、空気に含まれる緑の匂い、小さな鳥のさえずり。家にいながら、自然に包まれるように暮らす。
text_ Shiho Ikeda photograph_ Takuya Furusue
風景を通す家
(愛知県豊田市)
- 設計
- ihrmk
- 住人データ
- 夫(33歳)会社員、妻(30歳)主婦、長男(1歳)
斜面一帯に広がる棚田の細道を下りて行くと、街の集落から離れて佇む一軒の家が見えてくる。
夜の帰り道、我が家から明かりが漏れているのを見ると、ほっと心が安らぐんです
そう話すのはこの家の主、井原拓さん。奥さまの莉沙さんと結婚してから、いつか建てたいと思い続けていた念願のマイホーム。息子の奏汰くんも産まれ、のびやかな環境での子育てライフを満喫中だ。
もともとこの場所は、莉沙さんのお祖父さまが所有していた農地の一角。市街化調整区域のため、周りに建物がほとんど建っておらず、将来的にも抜群の眺望が期待できた。
大きな窓から、光と風が気持ちよく入ってくる家にしたいと思いました。自然の光で目覚める生活がしてみたいなって…
拓さんのその言葉が、設計の出発点となった。1階には棚田との一体感を楽しむ庭とフルオープンの窓で外とつながるリビング。2階はスキップフロアでつながるキッチンとダイニング、書斎、個室の寝室を配し、それぞれの空間に壁一面のガラス開口部を設けている。
景色を楽しむのはもちろん、外の風の流れを家の中でも感じられるように、風配図を参考に窓や部屋の配置を決めました。この敷地は南北に風が抜けるので、南に大きく外部空間を取り、リビングを開放しました
と話すのは、拓さんのお兄さまで建築家の井原正揮さん。
2階の壁一面の開口は突き出し窓とFIX 窓を組み合わせることで開閉しやすく、必要なだけの風を取り入れて快適な温度に調整できるように工夫。高窓も設けて、夏はこもった暖気を外に排出。冬は土壌蓄熱床暖房で室内を
あたためる。なるべくエアコンに頼らず暮らせる、自然と調和した住まいとなった。また、室内の間仕切りを極力なくして吹き抜けのリビング階段を配し、常に家族の気配を感じられるつくりに。目透かし張りの壁・天井やオークの無垢フローリング、窓には木製サッシを用いるなど、自然素材もふんだんに採用し、ナチュラルで心地よい空間に仕上げた。
公園に行かなくても、自宅にいながら自然の中で遊んだり寛いだりできるのが嬉しいですね。この春、庭のジューンベリーが初めて実をつけて、息子に摘んであげたらとても喜んで。いつもおかわりしならが美味しそうに食べています(莉沙さん)
専門家プロフィール
1980年 福岡県生まれ、愛知県育ち。2002年 名古屋大学工学部社会環境工学科卒業。03~06年 東京工業大学大学院理工学研究科。07~14年 シーラカンスアンドアソシエイツを経て、15年 ihrmk 設立。
ihrmk
- 住所
- 〈東京〉東京都港区愛宕1・7・7
〈豊田〉愛知県豊田市渋谷町1・1・12 - TEL
- 03・6757・2529
- info@ihrmk.co.jp
- URL
- ihrmk.co.jp
〈物件名〉風景を通す家〈所在地〉愛知県豊田市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈用途地域〉市街化調整区域〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉243.11㎡〈建築面積〉62.11㎡〈床面積〉1階50.94㎡、2階48.86 ㎡、合計99.80㎡〈建蔽率〉25.55%(許容60%)〈容積率〉41.05%(許容200%)〈設計〉井原正揮/ihrmk〈施工〉丸長ホーム〈設計期間〉9ヶ月〈工事期間〉9ヶ月〈竣工〉2014年〈総工費〉2,900万円
※この記事はLiVES Vol.82に掲載されたものを転載しています。
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