父の植林畑の痕跡を継承。カフェ空間には樹木に見立てた柱がランダムに並び、芝生のテラス席、筑波山を見渡すロフト席や半個室も。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
grove(IKS)
(茨城県つくば市)
- 設計
- no.555一級建築士事務所
- 住人データ
- 夫(35歳)自営業、妻(39歳)カフェ経営、長男(2歳)
三角屋根の2つの建物。ここは、奥さまの弘江さんが営むカフェ「JOURNAL」を併設した、池田さんご家族の住まいだ。周囲に田園が続く敷地は、元は弘江さんのお父さまが所有する植林畑だった。この敷地を譲り受け、住居を新築するとともに、以前は筑波大学の近くで営んでいたカフェを移転し、新装オープンすることにした。
筑波山が見える場所でカフェを開くことが夢だったんです。庭や畑もつくり、周辺の自然と合わせて、心地よい景色を見渡せる場所にしたいと思っていました(弘江さん)
設計はナンバーファイブス一級建築士事務所の土田拓也さん。
近隣に点在するビニールハウスの三角屋根の形状を取り入れました。家と店舗を分けることで、全体のボリュームを緩和し、周辺環境との親和性を高めています(土田さん)
建物の裏にある芝生には、植林畑にあった樫を2本残し、くつろげる木陰をつくった。ここは家族のための庭であり、カフェのテラス席でもある。また、弘江さん念願の畑のスペースも十分に確保し、その奥には既存の植林をそのまま残している。
住居は必要最小限の空間とし、1階に吹き抜けのLDKと水まわり、2階に寝室を設けたシンプルな構成とした。LDKは天井が高く、開放感があり、窓辺のソファやオープンキッチンから庭の緑を楽しめる。
カフェは「いろいろな居心地が楽しめる席をつくりたい」という弘江さんの希望に合わせ、オープンな席のほかに箱型の半個室を設けた。筑波山が見えるロフト席もある。
カフェの内部は、ランダムに配置した木造の柱を露出させ、樹木に見立て、元の植林畑の雰囲気を抽象化して表現しました(土田さん)
休日にはご家族で、庭に出て食事やお茶をすることも多い。また、弘江さんは事務作業をテラス席で行うこともあるという。
風の匂いや肌触りを感じ、鳥の声を聴きながら仕事をすると、気分転換になるんです。テラス席で過ごすひとときは、いろいろな豊かさをもたらしてくれます(弘江さん)
芝生にマットを敷いて、ヨガをすることもある。カフェでは今後、畑から収穫した野菜でつくる料理教室などを開催予定だ。
今後も心地よい外部空間を活用し、人が集う場所として可能性を広げていきたいです(弘江さん)
専門家プロフィール
1996年 関東学院大学建設工学科卒業。同年~2001年 株式会社 前澤建築事務所。05年 no.555一級建築士事務所設立。14年 株式会社 no.555一級建築士事務所改組。生活していく上で使い手の可能性が広がる、「ワクワク感」を感じられるような家づくりを提案する。
no.555一級建築士事務所
- 住所
- 神奈川県横浜市中区山手町26 Bluff gatehouse
- TEL
- 045・567・7179
- go.go.go@number555.com
- URL
- number555.com
〈物件名〉grove(IKS)〈所在地〉茨城県つくば市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈用途地域〉無指定〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉480.65㎡〈建築面積〉172.24㎡〈床面積〉住居部分 1階 57.96㎡ 、2階 28.98 ㎡、店舗部分 1階 112.60㎡ 、2 階 26.03㎡、合計 225.57㎡〈建蔽率〉35.83%(許容60%)〈容積率〉46.93%(許容200%)〈設計〉土田拓也/ no.555 一級建築士事務所〈施工〉冨祥工務店〈構造設計〉秋元恵美/ frameworks〈設計期間〉12ヶ月〈工事期間〉10ヶ月〈竣工〉2013年
※この記事はLiVES Vol.82に掲載されたものを転載しています。
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