平屋造りの日本家屋を、カリフォルニアテイストを加えてリノベーション。今までの暮らしを見つめ直して手に入れたのは、海辺の街での心安らぐライフスタイル。
text_ Makiko Hoshino photograph_ Takuya Furusue

どこを見ても好きなものが目に入るよう、お気に入りばかりを飾ったLDK。断熱改修をするほか、ペレットストーブを導入し、冬にあたたかく過ごせるようにした。
フラットヴィンテージハウス
(新潟県新潟市)
- 設計・施工
- 一世紀住宅
- 住人データ
- 夫(34歳)カメラマン、妻(35歳)主婦

新設した白壁と既存の設えとの対比が冴えのあるインテリアを形成。観葉植物が空間に潤いを与えている。
夫婦共働きで、忙しく日々を過ごしていた吉沢さんご夫妻。仕事中心の生活から、もっと自由なライフスタイルに切り替えたいと、利便性のいい賃貸アパートから、一戸建てに移り住むことを考えるようになった。
新築でも中古でも、特にこだわりはなかったのですが、いざ住みたい家を追求すると、ピカピカの真新しい家にはなじめないと思いました
そう話すのは、奥さまの麻貴さん。一方、浩二さんは〝家を探す〞より、健やかな暮らしができる〝場所を探す〞意識が強かったという。

モノクロのアートを飾った洗面室。ゲストがたくさん訪れても混雑しないよう、浴室と離して配置した。
そんなとき、一世紀住宅の石田伸一さんに紹介されたのが、築144年の古民家だ。劣化が著しく住めない古民家もある中で、ほとんどの部分がそのまま使える、状態のいい物件。立派で味わいのある造りに、ご夫妻もひと目で惹かれたそう。市街地から車で約40分かかるものの、歩いて5分の距離に海が広がり、自然を感じながらゆったり暮らせる点も、購入の決め手となった。

ゲストルームとして使っている蔵。敷地中央にパーゴラやBBQスペースなどを配した“遊べる庭”を設けた。
リノベーションに際してご夫妻が希望したのは、海辺の暮らしならではのリラックスした空気が漂う、カリフォルニアテイストの空間だ。

玄関ホールには、浩二さんの作品やグリーンを飾ってギャラリー風に。

玄関は明るい南側に配置。ユニークな回転式の扉を採用した。
手を加えるところと残すところを見極めて、ヴィンテージ感を活かしながら、のびのびと快適に過ごせる空間づくりを目指しました
と石田さん。田の字型に8室も並んでいた和室はすべて仕切りを取り払い、オープンで広々としたLDKや玄関ホールに刷新。大容量のウォークインクローゼットやスムーズな動線に配慮した浴室、ゲストが訪れても混雑しないように浴室とは別に設けた洗面室など、暮らしにフィットするプランを徹底した。

農機具がしまわれていた小屋は、浩二さんのカヤックやサーフボードなどを収納するガレージに。既存の焼き瓦の屋根を残し、鎧張りの外壁へ新装。

ハンガーラックを多めに設けたウォークインクローゼット。

蔵にはゲストが快適に過ごせるようトイレと洗面を新設。
内装は古民家ならではの重厚感のある柱や長押の魅力が引き立つようデザイン。床には無垢のパイン材を、壁には白くペイントした杉板を横張りし、ほどよく洋のエッセンスをプラス。白い壁に自作のアートやグリーンが映えて、海辺の暮らしに似合うインテリアに仕上がった。また、LDKだけで40畳の広さがあるため、冬の寒さ対策として壁や床には断熱材を入れて改修。性能面でもグレードアップした。

襖を撤去し、フローリングを全面に張って縁側とLDK をひと続きに。ウッドデッキは隣人を迎えて会話を楽しんだり、ご夫婦で夕涼みをしたり、交流と憩いの場所。

小壁に囲まれ、ほどよく落ち着いた雰囲気が生まれているリビング。愛犬のロコもソファの上で心地よさそうだ。押入れには扉を付けてクローゼット風に。
浩二さんはサーフィンにカヤック、フィッシングと毎日のように海の遊びを満喫。家に戻れば、古民家のぬくもりと好きなインテリアに囲まれ、心安らかな時間を過ごしている。

両端からアクセスできて便利なアイランド型キッチン。数多くの電球が並ぶ光景は星空のよう。

蔵は和洋折衷のゲストルームとして活用。柱や漆喰壁には手を加えず、昔のままの趣を残した。

たっぷりスペースをとった玄関ホール。ルーバー状の扉を取り付けた壁面収納は通気性も良好。
専門家プロフィール

1979年 新潟県生まれ。専門学校を卒業後、アサヒアレックス株式会社に入社。近年、アサヒアレックスグループ内で株式会社 一世紀住宅を立ち上げ、住宅新築の他に古民家リノベーションや海上コンテナを利用した建築も行っている。
一世紀住宅(アサヒアレックスグループ内)
- 住所
- 新潟県新潟市中央区美咲町1・9・48
- TEL
- 025・285・1112
- FAX
- 025・285・4434
- URL
- asahi-alex.co.jp
- blog
- ameblo.jp/ishida-architect/

〈物件名〉フラットヴィンテージハウス〈所在地〉新潟県新潟市〈居住者構成〉夫婦+犬1匹〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈建物竣工年〉1870年〈床面積〉本宅154.55㎡、蔵49.68㎡、ガレージ39.74㎡〈設計・施工〉一世紀住宅〈設計期間〉6ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2014年〈総工費〉本宅1,512 万円、蔵+ガレージ280万円、庭200万円
※この記事はLiVES Vol.83に掲載されたものを転載しています。
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