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【特集】ぼくらが小屋をつくる理由
記事作成・更新日: 2017年 5月15日

簡単キットで実現できる、本格的な小屋「パネルハウス」(北都物産の小屋)

ぼくらが小屋をつくる理由

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ひとりで建てられる簡単さながら、本格的な小屋が完成できる北都物産の「パネルハウス」。製材工場時代に培った木材の知識と北海道の気候を意識した、輸入商品とは一線を画す小屋キットです。その設計者である北都物産の春木郷志さん、販売担当のモダンクリエート浅井正輝さんに、同製品の特徴とつくる楽しさを伺いました。

輸入キットハウスとは一線を画すものを

「パネルハウス」は2004年、お客さまの要望を元に開発されました。

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パネルハウスの新規企画や設計を担当する、北都物産代表取締役の春木鄕志さん。「思い立ったらすぐ形にしたくなるんです」。

『簡単組み立て』と『本格建物』をコンセプトに、一般の方でも建てられるキットを考えました。当時一般的だった輸入キットハウスとの差別化を図るため、耐雪設計でのこぎり不要のツーバイフォー方式を取り入れ、国産材を外壁に使うなどの工夫をしました

設計担当の春木さんは、当時から変わらないテーマをこう教えてくれました。国産材はカラマツやトドマツなどの間伐材。ヤニや狂いが出やすい欠点を補うべく、通常より薄い12ミリ厚にして外壁材に充て、躯体用には輸入ツーバイ材を利用するキットを開発しました。

板ログ工法ではないので組み立て時の差も出にくく、木の痩せを調整する作業も必要ありません

1ミリの違いも積み重ねれば数センチの狂いになってしまう。そんな問題を意識せずに楽しく組み立てられるのが強みです。

時代の変化が小屋のニーズを変える

北都物産のWebサイトには、実に60種類以上のモデルが掲載されています。このバリエーションの豊富さは、卸売りを行わず、購入希望者向けイベントで依頼者と直接やり取りする販売方法とも関係があるのだとか。

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シリーズ中で最もコンパクトな3畳モデル「1818 Lite」(幅1800×奥行1800)。写真は外壁材のつかないLiteモデルを壁材やペンキで独自に塗装した状態。

打ち合わせの中でウッドデッキがほしい、ロフトがつけたいなどのご要望が見えてくるんですね。それを次の企画で取り入れた結果が今です(笑)。でも、1モデルで使うのは50パーツほど、大半が共有できるので特に大変ではないんですよ

現在に至るまで500カ所以上の修正、調整を加えてきました。中でも注目すべき転換点は、2011年の小住宅への対応でしょう。いわゆる物置から住める空間としての進化ですが、その3年ほど前からニーズの兆候はあったと言います。

2008年は産業の転換点でしたからね。リーマンショック後から住宅用の予算がなくなった、そこまで家にかけられないからパネルハウスを住宅に使いたいという要望が増えました。そのノウハウがひとつの形になったんです

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閃いたアイデアも素材や構造、量産の仕組みに当てはめるのは至難の業。ひとつのモデルを完成させるまでにも、たくさんの設計図が描かれます。

大きな変化は、電気や水道、ガスなどのインフラが加わったこと。さらにインフラの追加によって基礎工事が必要となり、その提供サービスを始めたことなどもあります。それから数年間、基礎工事やインフラ整備なども依頼できる、高い技術を持った販売業者を探し続けてきました。

昨年の秋、モダンクリエートさんと出会うことができたんです。この販売提携により、デザイン開発も含めて新たな段階に入れた気がします

浅井さんが代表を務めるモダンクリエートは、ウッドデッキの設計・製造を得意とする施工会社。幅広い技術に長けた職人が揃っています。

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モダンクリエート代表取締役の浅井正輝さん。ウッドデッキのデザインや設計のほか、新築やリフォームなどの幅広い要望に関東一円で対応しています。

いわゆる何でも屋さんです。目だった強みはないけど、弱みもないというか。でも、お客様のご要望にはなんでも対応できる体制をつくっていますよ

控えめな言葉に対し、その柔軟さがパネルハウスにはぴったりなんです、と春木さん。

僕らはパネルハウスの量産はできても個別対応はできません。お客様と密に接し、要望を形にしてくれる販売店さんが頼りなんです(春木さん)

パネルハウスを楽しいデザインに

3畳の1818(W180×D180)や6畳の3627(W360×D270)などが実際に建てられたモダンクリエート内の展示場。そのどれもが楽しい色や外壁材などで装飾されているのが印象的です。

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量産キットは面白みが少なくなりがちです。彼はデザイン力に長けた方ですし、東京展示場では、デザインや材質で実験をして遊び心を出したいと。やっぱり、お客様に『何これ?』と驚いてもらえる小屋にしたいですから(春木さん)

紺色の壁がシックな電気工事屋さんの棟の横にある、制作中の大型パネルハウスもそのひとつ。

住めるパネルハウスの実例です。シャワーユニットやトイレを入れて、私が実際に住んでみようかなと。それ以外のパネルハウスの装飾にもいろいろ挑戦しているところです。お客さんはどんな装飾がほしいんだろう、次はどんな形にしようかといつも考えています。うちは、ひとりで複数の異なる作業や工程を行う技能を身につけた”多能工”が多いのが強みなので、関東周辺なら出向いてお客さんのイメージを形にしてあげたいですね(浅井さん)

漠然としたイメージを話し合って形にする。打ち合わせ中に飛び出すイレギュラーな要望にも慣れたと言う様子は、どこかプロの余裕が垣間見られます。またそんな要望を実現してきたノウハウを実際に見られるのも、東京展示場のよさのひとつです。

たとえば、外装はすべてホームセンターで購入できる、欠品や廃番が少ないオーソドックスな量産品を使っています。ステインやペンキなどの塗料、壁材はもちろん、普通は縦貼りするガルバリウム波板を横貼りにして印象を変えたり、素材や使い方の参考にしていただけるようにしています(浅井さん)

デザインの多様化を実感する中で、多様化する要望にどう対応するのか。DIY用品を積極的に使い、普段の助言に活かしたいと考えています。

浅井さんとは仕事という感じではないから打ち合わせも楽しいです。どちらの会社も小さいから、決まったらすぐ進められることもよさですね(春木さん)

確かに、デザインの話をするおふたりの様子はとても楽しそう。会社の枠を超え、もはやチームといった印象です。

パネルハウスとこれからの住宅

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20代から70代まで幅広く売れているというパネルハウス。今後はより住宅に近い、断熱機能やライフラインを追加できる高性能なモデルの製造に力を入れたいそう。いち推しは3627のハイルーフタイプ。トイレやシンク、2階のロフトをつければ住宅機能も充分、価格や組み立て作業の面でもバランスが取れた気軽なモデルです。そんな時代に沿ったものづくりを続けるおふたりに、パネルハウスのこれからと住宅のあり方を伺ってみました。

お客様にも田舎暮らしや移住される方、週末移住の方が増えてきました。その中で世帯数は増えるけれど建物は小型化していく…という流れだと思います。私たちもそこに合わせた商品を企画したいです(春木さん)

減築、リノベーションがさらに増えると思います。そんな依頼があった時に、私たちは精度だけに拘るのではなく、お客様と打ち合わせをし、楽しんで工事を進められる形を提供できたらと思います(浅井さん)

ユーザーと同じ方向を見て進めるものづくり。パネルハウスのめざすものは、今後の住宅づくりのあり方も予見していると言えそうです。

Text 木村早苗
Photo 関口佳代



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