プロの手を借りながら、外壁張り、内部仕上げも自分たちの手で。木造在来工法のシンプルな三角屋根の平屋で、施主施工による変化を受け入れる。
text_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara
網代の家
(東京都あきる野市)
- 設計
- アラキ+ササキアーキテクツ
- 住人データ
- 夫(36歳)会社員、妻(42歳)音楽家、長女(5歳)、次女(1歳)
高見澤克哉さんは、奥さまの淳子さんと2人の娘さんとの4人家族。山や川が近くにある田舎暮らしを希望し、勤務先の都心までなんとか通えるエリアとして、あきるの市に一戸建てを建てた。
家を建てるなら、できるだけ自分たちの手でつくりたいと思っていました。友人の紹介で知り合ったアラキ+ササキアーキテクツ(以下A+Sa)に相談したことで、思いを汲み取ってもらい、サポートを受けながら施工に参加することができました(克哉さん)
さらに、淳子さんの親戚が茨城県に山林を所有していたことから、その山の木を使って家を建てることもご夫妻の夢だったという。
家にブラックボックスをつくらず、成り立ちを知っておきたかったんです。木材はどこからきて、誰がどのようにつくったかなど、食と同じように過程を知ることで、安心して暮らせる家になると感じています(淳子さん)
山から伐り出したスギやヒノキは、自分たちで表面をなめらかに削り、保護塗料を塗って、外壁としてよろい張りに。地元の多摩産のスギのフローリングを敷いた床、玄関の庇も施主施工した。さらに、断熱材として籾殻を内壁に封入。薪ストーブを囲うレンガは、基礎工事のときに出た土を使って自作した。
伐採した木を丸太から荒挽きして運搬し、設計をしている間に、地元の製材所に製材と乾燥をお願いしました。その流れを知り、木が家の材料になるまでに、たくさんの人の手間と時間がかかっていることを痛感しました(淳子さん)
A+Saにより設計された家は、十分な高さがある三角屋根の平屋。箱に収まった水まわりで、ゆるやかにLDKとピアノ室を分けている。木造在来工法のシンプルで明解な構造体にすることにより、計画しきれない施主施工による変化を受け入れられるようにした。
高見澤さんご夫妻は、引っ越してきてからも、壁に珪藻土を塗ったり、梁に床を張ってロフトをつくったりするなど、自分たちの手で家をつくり続けている。
追加工事をするときは、A+Saに相談してアドバイスをもらい、施工を手伝ってもらうこともあります。家が建ってからもパートナーとして支えてもらえるから、できることだと思います(克哉さん)
専門家プロフィール
Araki+Sasaki Architects
荒木源希+佐々木高之+佐々木珠穂+岡美里+井辺陽子+河埜智子+大園未来+小林佑輔+青木昂志良+秦達也により、建築やインテリアのデザインを行う一級建築士事務所。A+Sa設計方法論[hands-on approach]に基づいて建築設計を行う。
Araki+Sasaki Architects
- 住所
- 東京都調布市深大寺元町 1・11・1・2F
- TEL
- 042・440・3141
- FAX
- 042・440・3142
- mail@arakisasaki.com
- URL
- arakisasaki.com
〈物件名〉網代の家〈所在地〉東京都あきる野市〈居住者構成〉夫婦+子供2人+犬1匹〈用途地域〉指定なし〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉518.74㎡〈建築面積〉79.50 ㎡〈床面積〉79.50㎡〈建蔽率〉20.12%(許容40%)〈容積率〉20.12%(許容80%)〈設計〉アラキ+ササキアーキテクツ〈施工〉アラキ+ササキアーキテクツ+施主〈設計期間〉14ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2014年
※この記事はLiVES Vol.85に掲載されたものを転載しています。
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