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2017年 7月25日

「6畳間」からつくる小さな暮らし
-「casa cago」(casaの小屋)

ぼくらが小屋をつくる理由

明確なコンセプトと高いデザイン性が特徴の、(株)カーサ・プロジェクトが展開する住宅シリーズ「casa」。その最新モデルであるミニマムなロケーションハウス「casa cago」がこの4月に誕生。泊まれる住宅展示場「SHARES蒲郡」にお目見えしました。展示場でも1、2を争うという話題の商品。その誕生の経緯や特徴について、設計担当の住宅アカデメイア事業企画室室長 窪田国司さんと、カーサ・プロジェクト取締役の佐藤共之さんに伺いました。



6畳間から考えるローカル・ラグジュアリー


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「casa cago」(以下 cago)のテーマは、「敷地にあわせて可変するロケーションハウス」。その出発点には、いくつかのコンセプトがありました。

蒲郡のような郊外でアウトドアを楽しむ人のための24坪程度の平屋、というオーダーが出発点でした。そこでローカルなラグジュアリーライフとは何かを考える一方、現状の暮らしへの違和感や住宅の問題点を指摘し、余計なデザインはしないというcasaの基礎を意識しました。そこで着目したのが『6畳間』です

設計担当の窪田さんは、開発の初期をこう振り返ります。家を建てる人と家づくりの問題点として、専門表現が多く理解しにくい状況にある点を指摘。「畳」を基本にした、一般の人々も想像しやすい「きれいに説明できるデザイン」を考え出したのです。

さらにその6畳間に、コンテナの意味も持つ『カーゴ(籠)』の単位をつけてより計算しやすくしました。『casa cago』という名前もここからついたんです

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casa cagoの基本は8カーゴ。上記3種類のデザインがベース提案になっている。

カーゴは敷地や環境に合わせて増減できますが、基本は1,500万円台の8カーゴ(6畳×8個)。4カーゴを2列に並べた「スティック」、コの字に並べた「コートハウス」、コの字の両端の長さを変えた「ダブルウイング」の3種類が準備されています。

スティックは前面に道路がある土地、中庭のあるコートハウスは風景があまり望めない土地を想定しました。ダブルウイングは、郊外で1箇所でもよい風景があればそこに寄せられる形です。ウイング側に風景を向けられない場合も内側に大きな窓があるので、抜け感も工夫できます

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海と山が楽しめる「SHARES蒲郡」では、オプション付の「ダブルウイング」に宿泊可能。長いウイング端にあるリビングの窓から、またアウトバス(オプション)から美しい海が楽しめる。斬新なデザインが来場者の間でも話題になった。

窪田さんは、「ローカルなラグジュアリー」の要素は景色と敷地の広さにあると考えました。景色のいい角度と籠の組み合わせを家を建てる人が考えることで、その地を楽しめる家にしてほしいという思いを込めています。この3種類はあくまでたたき台。リビングを2カーゴ広げるなど幅広いライフスタイルに対応が可能です。

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コートハウスは1カーゴ分のウッドデッキ(ソファ部分)がデフォルトデザイン。掃き出し窓とデッキが同じ高さなので、アウトドアリビング的な屋内外の繋がりも楽しめる。

同社のcasaシリーズにおいて、cagoは「casa piatto」の“コストを意識したコンパクトな平屋”という点で共通しており、近いラインで捉えていると語る佐藤さん。

ただ、こちらは籠の数を変えることで1カーゴで小屋、3は離れ、8で持ち家と小さな暮らしに柔軟に対応できる点が特徴でもあります。持ち家として、2拠点住宅として、誰もが別荘を持つ現代の流れにもマッチするのではないでしょうか

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カーサ・プロジェクト取締役の佐藤共之さん



ル・コルビュジェの「モデュロール」を発想源に


このcagoには、実は構造部分にも大きな秘密があります。海外では注文住宅は大富豪のもの。一般的には住宅よりも生活を充実させることが普通なのに、日本では家づくりになると過剰にこだわり出すという常識に一石を投じたかったという窪田さん。苦労せずに品質のよい住宅が手に入れば、暮らしの豊かさに意識を向けられるのに、と。

そこで参考にしたのがル・コルビュジェの『モデュロール』でした。これは身体の寸法からコルビュジェが独自に算出した建築の基準寸法システムで、その仕組みをつくったコルビュジェは、日本の畳や尺を見た時に自分の考えと同じだと驚いたそうです。そんな優秀な日本の伝統的な寸法や畳の文化を構造に使わないのはもったいないですよね(窪田)

平面の縦横はもちろん、高さも畳の短辺910(3尺)が基準。たとえば、梁上までは畳横3枚分の2730センチ、屋根勾配は2.5寸で屋根高が畳横1枚分910センチと、全寸法に尺モジュールが踏襲されています。

ここまで工業化住宅を追求できた設計は初めてです。日本的なコルビュジェの家が実現できたのは、余計なデザインをしないcasaだからこそだなと。煌びやかさや派手さはないですが、小さな家の楽しさに気づいてもらえる形になったと思います(窪田)

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設計担当の住宅アカデメイア事業企画室室長 窪田国司さん



デザインとコストカットを両立する秘密


また、組み立てには釘を使わないピン構造を採用。窪田さんがめざす「地震でも倒れない家」を可能にした金具は、組み立てが簡単なだけでなく最新の耐震基準にも耐える強度があるというから驚きです。そんな簡便な金具や規格化された建材を用いた既製品でありながら、見た目ではそう感じないデザインがcagoの面白さでもあります。

『デザインしないデザイン』だからです。下手にデザインせず、デザインを削ぎ落とせば、それだけできれいな家になります。構造も同じで、梁や柱が同じ幅で入るような『リズム感のある構造躯体』は、それだけでも充分美しいんですよ(窪田)

この無駄のデザインは、一方でコストダウンに大きく貢献している部分でもあります。佐藤さんは、その理由を教えてくれました。

まず、建材やパーツの規格化はある程度ボリュームがないと難しいのですが、私たちには工務店のネットワークがあります。大量注文ができると、安価で品質の良いパーツが購入できるようになります。さらにcasaはシンプルなデザインであり、建材はすべてジャストカットです。cagoの場合はピン構造で組み立ての手間がさらに軽減されます。切る、打つなどの人工(にんく)のコスト削減が可能だからこそ、この価格が実現できるわけです(佐藤)

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屋内の横窓はサッシを木枠で囲い、剥き出しにならないデザインに。また屋外のサッシはすべて黒で統一されたオリジナル。

窪田さんはインダストリアルデザイナーの視点で、この仕組みを分析します。

ローコストだけど安普請(やすぶしん。お金をかけずに建てた上等ではない家のこと)ではありません。オリジナルのサッシは高品質ですしね。大量になるほど安くなる工業製品の利点とこだわる部分、その2つを適材適所に当てはめる。そのアイデアと工夫が、この仕組みをつくったと言えます(窪田)

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確かにcagoからは、無垢材を活かした暖かみのある内装、左官の技術が踏襲された塗り外壁など、手間暇かけたこだわりが感じられます。大工と左官は日本建築における重要な技術。彼らは、そんな職人の技を活かせる建物にしたいとも考えています。



ミレニアル世代にフィットしたこだわりの適材適所の家


では、この随所にこだわりあるcagoは、どんな人におすすめなのでしょうか。

仲のいいご家族に住んでいただきたいですね。内側にすべて窓があるので、家族の気配も感じる一方でプライベートも確保されている。『子どもを下宿人にしない』ことを意識した、自然とリビングに人が集まる間取りを考えました。喧嘩なんてしていられないですよ。思いやりあるご家族にぴったりの家だと思います(窪田)

インターネットが一般化した30代後半以下、ミレニアル世代がそのご家族の中心になっていくと思います。モノの意義と理由を考え、値段が高くても納得がいけば購入するという賢い選択をされる。そんな方々にもcagoはご納得いただけるのではないかと思います(佐藤)



これからの住宅と暮らし


最後に、これからの家についての予想を伺いました。

モノづくりからコトづくりは以前から言われていますが、そのコトがさらに多極化している状況です。私たち住宅メーカーには、住空間に加えて多様なライフスタイルを提案するプロデューサー的な役割も必要になってきました。新築戸建が減る中で選んでいただくには、値頃感と明確なコンセプトはもとより、カッコいいと感じてもらえるプロダクトが必要になるだろうと思います(佐藤)

家がどこまで小さくなるか。その見極めが今後の鍵になる気がします。ミレニアル世代が従来の家が広すぎることに気づき、そこからどれだけ削ぎ落としていくか。私たちは、本質的な暮らしを求め始めた社会に見あう家づくりが必要だと感じています(窪田)

カーゴというギミックが利いた小さな暮らし。その楽しさの中には、実は新たな世代が求める本質的なものへの回答がしっかりと詰め込まれているのです。

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casa cago 公式ページはこちら
http://www.casacago.com/

今すぐ casa cago の見積りシミュレーションをしたい方はこちら
https://sumika.me/smartmade/programs/9


Text 木村早苗 Photo 関口佳代

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