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LiVESの家
記事作成・更新日: 2017年 8月28日

日本家屋の古いしつらえに倣う、
光と陰影が交差する住まい

東古佐の家

インテリアデザイナーと建築家が恊働し、セレクトショップのオーナー夫婦のセンスが活かせる空間に改修。住み心地にも配慮して、断熱性能も強化。

text_ Aki Miyashita photograph_ Takashi Daibo

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土間と住居部分を交差させ、垂直・水平を意識して設計。窓の位置はすべて以前のまま。建具と仕上げを中心に取り替えて、日本家屋の雰囲気を受け継いでいる。

東古佐の家

(兵庫県篠山市)

設計
masayuki takahashi design studio+arbol
住人データ
夫(33歳)ショップオーナー、妻(31歳)バイヤー、長男(4歳)

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暮らしの道具や器などを扱う店「archipelago」の開店に向け、洋間を仕事場にして準備。内装は建具のみ変更し、既存のシャンデリアの1灯をペンダント照明に。

玄関を入ると土間が続き、中の戸を開け放てば暗闇の向こうに紫陽花が見えました。初めて来たとき、だいぶ朽ちていたけど、いい家だなぁって(小菅庸喜さん)

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風格ある日本家屋。洋間にあたる部分だけ洋館風の外装に変更。

大阪市内から車で1時間ほど、兵庫県篠山市ではここ数年、移住して工房や店を構える若い世代が増えている。小菅さんご夫妻は、篠山に暮らす友人たちを訪ねてはその魅力を実感。住まいを探し始めて4年目、小さな集落にある古い民家と巡り合い、リノベーションを行った。

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解体中に急遽ご夫妻のリクエストで残したキッチンの梁が、空間に個性を与えている。土間と仕切る格子戸は真空ガラスを採用。断熱性を高め、寒さから住居部分を守る。

軒が深い日本家屋は日中でも薄暗いけれど、だからこそ、差し込む光や窓の向こうの緑が生きる。影や暗闇がつくり出す美しさは、そのまま引き継ぎたいと思いました

そう話すのは、インテリアデザイナーの髙橋真之さん。建築家の堤庸策さんと組み、初めて住宅設計に取り組んだ。小菅さんご夫妻とは、ディレクターとして改装や運営に関わった篠山の旧郵便局舎にあるカフェ「コリシモ」で出会い、友人関係に。

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店で取り扱う予定の益子の陶芸家、郡司庸久さん・慶子さんの蓋物や古い木の道具など、古今東西のさまざまなものが共存。ディスプレイからセレクト力が伝わる。

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元のキッチンは使えたため、面材や金具だけを替えて、シェーカーテーブルや「TRUCK」のベンチ、「6[rock]」に製作を依頼したカウンターと馴染むように新調。

親しい間柄ですが、リノベーションにあたって僕らの好きな益子を一緒に旅したり、夜な夜な話し込んだり、共に時間を過ごして好きなものや感覚を共有しました(庸喜さん)

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日本家屋の暗がりと障子越しの光が美しく調和する土間。灰中塗りの白壁には、土地とのつながりを思い、東古佐の土も混ぜている。和室は客間として使用。

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リビングの一角に照明を深く垂らし、床の間のような場に。丸い台は鉄工所で雨ざらしだった廃材をもらってきたもの。野花などを飾るディスプレイ台として再利用。

家全体を一新するのではなく、暮らしの中心となる土間や住居部分を重点的に改装。それ以外は元の家屋の良さを活かし、予算にも配慮しながらテコ入れしていった。印象的だった土間は建具を取り払い、畳の間が並行する広々とした空間へ。梁や土壁を現し、片面の壁を地元の土を混ぜた篠山独特の灰中塗りで仕上げている。さらに玄関を入ったところの出隅をカーブさせ、無国籍なムードをもつ空間に生まれ変わらせた。

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大きな棚は置かず、随所に小さなコーナーをつくって好きな世界を楽しむ。

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髙橋さんがデザインし、「千 sen」の西本卓也さんが制作した真鍮の照明。

その先に設けた住居部分は、寝室のある2階まで断熱材を入れて快適性を重視。窓から田園の風景が眺められるLDKには、気に入ったものだけを置き、すっきりと暮らしている。

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洋間とトイレの戸は細い桟を入れて、古民家の舞良戸のようにしつらえた。洋間には透明、トイレには半透明のアクリル板を一枚入れて、明かりが漏れるようにした。

住居部分と土間を仕切る格子戸は元の建具とピッチを揃えたり、照明や金具に経年変化が楽しめる真鍮を用いたり、古いものの記憶に線引きするのではなく、混じり合うようにしました。そうした繊細なあしらいはデザイナーの髙橋さんの感性によるところが大きいですね(堤さん)

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リビングにはソファに代えて、1933年にコーア・クリントがデザインしたサファリチェアを。のどかな景色を臨む窓は全開にでき、月見台が設けられている。

小菅さんは夫婦共にセレクトショップで長年勤め、その経験を糧に春から篠山で店を営む。2人のセンスによって、これから年々、住まいの味わいも増していくに違いない。

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植栽には季節が感じられる実が成る木や落葉樹を。玄関先にはつくばいも。

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和室の2階部分は手つかずのまま。いずれここにロフトをつくることもできる。

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Before

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After


〈物件名〉東古佐の家〈所在地〉兵庫県篠山市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈築年数〉築50年以上〈敷地面積〉320㎡〈床面積〉1階 118㎡、2階 47㎡、合計 165㎡〈設計〉髙橋真之/masayuki takahashi design studio+ 堤庸策/ arbol 〈施工〉大西工務店〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2015年


※この記事はLiVES Vol.86に掲載されたものを転載しています。

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