インテリアデザイナーと建築家が恊働し、セレクトショップのオーナー夫婦のセンスが活かせる空間に改修。住み心地にも配慮して、断熱性能も強化。
text_ Aki Miyashita photograph_ Takashi Daibo
東古佐の家
(兵庫県篠山市)
- 設計
- masayuki takahashi design studio+arbol
- 住人データ
- 夫(33歳)ショップオーナー、妻(31歳)バイヤー、長男(4歳)
玄関を入ると土間が続き、中の戸を開け放てば暗闇の向こうに紫陽花が見えました。初めて来たとき、だいぶ朽ちていたけど、いい家だなぁって(小菅庸喜さん)
大阪市内から車で1時間ほど、兵庫県篠山市ではここ数年、移住して工房や店を構える若い世代が増えている。小菅さんご夫妻は、篠山に暮らす友人たちを訪ねてはその魅力を実感。住まいを探し始めて4年目、小さな集落にある古い民家と巡り合い、リノベーションを行った。
軒が深い日本家屋は日中でも薄暗いけれど、だからこそ、差し込む光や窓の向こうの緑が生きる。影や暗闇がつくり出す美しさは、そのまま引き継ぎたいと思いました
そう話すのは、インテリアデザイナーの髙橋真之さん。建築家の堤庸策さんと組み、初めて住宅設計に取り組んだ。小菅さんご夫妻とは、ディレクターとして改装や運営に関わった篠山の旧郵便局舎にあるカフェ「コリシモ」で出会い、友人関係に。
親しい間柄ですが、リノベーションにあたって僕らの好きな益子を一緒に旅したり、夜な夜な話し込んだり、共に時間を過ごして好きなものや感覚を共有しました(庸喜さん)
家全体を一新するのではなく、暮らしの中心となる土間や住居部分を重点的に改装。それ以外は元の家屋の良さを活かし、予算にも配慮しながらテコ入れしていった。印象的だった土間は建具を取り払い、畳の間が並行する広々とした空間へ。梁や土壁を現し、片面の壁を地元の土を混ぜた篠山独特の灰中塗りで仕上げている。さらに玄関を入ったところの出隅をカーブさせ、無国籍なムードをもつ空間に生まれ変わらせた。
その先に設けた住居部分は、寝室のある2階まで断熱材を入れて快適性を重視。窓から田園の風景が眺められるLDKには、気に入ったものだけを置き、すっきりと暮らしている。
住居部分と土間を仕切る格子戸は元の建具とピッチを揃えたり、照明や金具に経年変化が楽しめる真鍮を用いたり、古いものの記憶に線引きするのではなく、混じり合うようにしました。そうした繊細なあしらいはデザイナーの髙橋さんの感性によるところが大きいですね(堤さん)
小菅さんは夫婦共にセレクトショップで長年勤め、その経験を糧に春から篠山で店を営む。2人のセンスによって、これから年々、住まいの味わいも増していくに違いない。
専門家プロフィール
インテリアデザイナー。1982年兵庫県生まれ。大阪モード学園卒業後、デザイン事務所、colissimo(篠山)ディレクターを経て、2013年 masayuki takahashi design studio 設立。
masayuki takahashi design studio
- 住所
- 大阪府大阪市生野区桃谷4・1・11 2F
- TEL
- 090・3357・3093
- info@masayukitakahashi.com
- URL
- www.masayukitakahashi.com
建築家/一級建築士。1979年 東京都生まれ、徳島県育ち。国立阿南工業高等専門学校修了後、専門学校アートカレッジ神戸卒業。田頭健司建築研究所を経て、EU、USA 放浪後、2006年 フリーランスで活動開始。09年 建築設計事務所arbol 設立。
arbol
- 住所
- 大阪府大阪市西区西本町2・4・10 201 FACTO内
- TEL
- 06・6777・3961
- FAX
- 06・6567・8188
- info@arbol-design.com
- URL
- www.arbol-design.com
〈物件名〉東古佐の家〈所在地〉兵庫県篠山市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈築年数〉築50年以上〈敷地面積〉320㎡〈床面積〉1階 118㎡、2階 47㎡、合計 165㎡〈設計〉髙橋真之/masayuki takahashi design studio+ 堤庸策/ arbol 〈施工〉大西工務店〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2015年
※この記事はLiVES Vol.86に掲載されたものを転載しています。
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