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【特集】ぼくらが小屋をつくる理由
2017年12月18日

「小屋をつくる」から「小屋でつくる」へ。
3年で39棟の小屋を建てたYADOKARI小屋部が仕掛ける、小屋ムーブメント

ぼくらが小屋をつくる理由

実際に手を動かすことで、小屋の持つ魅力や面白さを伝えてきたYADOKARI小屋部。2014年4月、唐品知浩さんを部長にWEBマガジン「YADOKARI」内で立ち上がった「大人の部活」です。新しい暮らしかたを探す人から注目を集めるその活動について、改めてお話を伺いました。





いち読者からYADOKARI小屋部部長へ

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(Photo:関口佳代)

来たい時に来てもらえればいいんですよ。部活と言っても、登録部員は僕だけですから

と笑う唐品さん。プロジェクトが立ち上がるとYADOKARIサポーターズ(小屋好きが集まるFacebookグループ)で告知し、その中で興味のある人が参加するというゆるい活動スタンスはずっと変わりません。

じつは、唐品さんも元々はWEBマガジンのいち読者。本業の別荘紹介サイトを運営する中で、「ゴージャスな別荘は今の時代にマッチしないのではないか。今の人が欲しいと思う、新たな別荘の形があるのでは」と感じて情報を集めていたそう。そんな時、あるプロジェクトを通じてYADOKARI主宰のさわだいっせいさん、ウエスギセイタさんにコンタクトをとったことから、小屋部を立ち上げることになったのです。

小屋の情報は見かけるけど、日本で実際に建てている人はいないよねという話になったんです。かわいいデザインもないし、工務店に頼むにも費用が高すぎる。それなら自分たちでやってみようと、知り合いの建築家や大工に声をかけて活動を始めました





「小屋をつくる」から「小屋でつくる」へ

当初のコンセプトは「『Pasco(敷島製パン)』のCMに出てくるような、かわいい小屋をつくりませんか」というものづくりにフォーカスを当てたものでした。

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こちらが1軒目となる、大磯ビーチフェスタ用小屋(※施工途中)

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最後は、この笑顔!

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大磯ビーチフェスタ用小屋づくりで心配して手伝ってくれた地元のおじさん

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完成した自由が丘のガゼボ(西洋風のあずまやのこと)の前で話をする3世代の人

しかし、1軒目の大磯ビーチフェスタ用小屋、2軒目の自由が丘のプランター&ガゼボ制作を行う中で、唐品さんはあることに気づきます。たとえば、大磯では、制作中に声をかけてくれた地元の人がいつしか仲間になり、友達となり、お客さんとして遊びに来てくれました。また自由が丘では、制作に参加したオーナーの娘さんや隣の美容師さん、近所の人が小屋について話す光景を見かけるように。

それまで交流のなかった人たちが、小屋を介して交流する様子を目の当たりにしたんです。これは屋外で小屋をつくったことで生まれた光景なんだと気づきました

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「小屋展示場」の会場で制作し、のちに鈴木菜央さんの自宅に移設したアトリエ兼工房

そこで4軒目は、重点をコミュニティづくりへとシフト。虎ノ門「小屋展示場」で制作したgreenz.jp編集長 鈴木菜央さんのアトリエ兼工房です。

人が長時間入る初めての小屋だったので、コミュニティビルドをかなり意識しました。工数を増やして参加者の満足感を高めたり、廃材を提供してもらってリサイクル意識も提案したりしました

これらの経験を経て生まれたのが、現在の活動コンセプトです。

小屋づくりを介してコミュニティをつくる『コミュニティビルド』と、DIYの技術で対価をお支払いすることです。コミュニティビルドは、つくる人同士とそれを取り巻く人々をつなぐ試みです。まずつくる人同士は、ほぼ初対面でも『小屋を建てる』という共通意識があるので仲間になりやすいんですよね。さらに屋外で小屋を建てていると通りがかりの人や近所の人が声をかけてくれるので、『ぜひ釘一本でも打っていって』と巻き込むように意識をしています

たとえば、建てるのが店舗なら、つくる過程で話題も広がり、参加してくれた人ほどファンにもなりやすい。小屋が場所と人をつなぐハブになるというわけです。

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YADOKARI×SuMiKa小屋キャンペーン第1弾で手がけた「オフィス小屋」。3Dプリンタで制作した樹脂ジョイントなど斬新な構造になっている。

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第2弾「子どもの秘密基地小屋」。みんなのパパはこんなすてきなものがつくれるんだよ、という姿を依頼主の子ども達に見せたいという思いも込めて……。

以降、建築界からの実険的構造が斬新だった5軒目の「オフィス小屋」、施主参加型へと変更し、初めて屋内に小屋を建てた6軒目の「子どもの秘密基地小屋」へと、YADOKARI小屋部は次第に複合的な意義を持ち始めます。最新の活動は、BETTARA STAND日本橋。小さな小屋や建物の壁面などを仕上げました。

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YADOKARI小屋部が制作したBETTARA STAND日本橋の壁面と小屋、バーカウンターの壁面。(Photo:関口佳代)

2014年の「小屋展示場」以降、不動産業界主導の小屋イベントも増え、新たな市場として小屋の認知度は上がってきました。それは、小屋との親和性が高いミニマルライフと小商いというマインドの定着の影響も大きいのではと唐品さんは分析。また近頃は、募集をかけると必ず10人前後が集まり、その6〜7割は女性なのだそうです。小屋を取り巻く社会、小屋と人の関係も少しずつ変わりつつあります。

女性のほうがコミュニティや面白そうなことに素直ですね。1人で参加される方も多いですが、男性はその第一歩が踏み出しにくいという印象です。でも気持ちはよくわかりますよ。自分も主宰じゃなかったら参加できるかどうか(苦笑)。だからこそ、できるだけ垣根を下げ、縛らない、決まった活動にしていないんです。まずは少しでも体験して、僕らと顔見知りになってもらえれば、次に参加していただく取っ掛かりになると思うんです





つくることを身近にする「屋台キット」

つくることをより気軽にしたい。そんな思いを形にしたのが、2016年発売の屋台キットです。

このキット化は、僕らの悲願でした。大工さんや僕らがいないとできない状況は、コミュニティビルドの意味で違うんじゃないかなと。一方で、マネタイズできるものをつくれば、部活へのモチベーションにも繋げられると思ったんです

設計はチョウハシトオルさん、キット化は相談家具屋さん、材料は中古足場板No.1メーカーのウッドプロさん。古材だけに完成時から味のあるかわいい仕上がりです。

キットを購入した方が、自分のオリジナリティを出しやすいです。僕は自分で手を入れられる手軽さがあってこそ小屋だと思うので、キットもその点を意識しました。きれいすぎる小屋には萌えないんです(笑)

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大型屋台キット。タイヤがあるので女性でも簡単に移動できる。(Photo:関口佳代)

そして、12月には大容量の大型屋台キットが発売されます。木材とキット製作は、BETTARA STAND日本橋をつくる時にワークショップに参加してくれた岡崎製材さん。

キットを購入してくださるお客さんの活動も面白いんですよ。たとえば3月に沼津市リノベーションまちづくり実行協議会さんと作った屋台は、市役所前の空き地や河川敷の利活用に活かしたいと話されていました。市民と一緒につくる小屋づくりワークショップを開き、つくる段階から活用されていましたね

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© Chiaki Toyozumi
屋台とガゼボとテーブル、ベンチのキットセットを公園に置くだけで、公園主催のアウトドアウェディングが気軽に開催できる。

6月にはHappy Outdoor Weddingと共同でアウトドアウェディングキットも企画。町おこしや公共施設の活用など、YADOKARI小屋部から派生する形で新たな動きが生まれ始めています。

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(Photo:関口佳代)

こんな状況になるとは思いませんでしたね。でも今はいい段階にあると思います。小商いというムーブメントと屋体がうまく合致して、手を加えられる存在になってきたんじゃないかなと。小屋や屋台は小さい存在ですが場の雰囲気を変える力があるので、その力をもっと活用できればと最近よく考えます





さまざまな可能性をひらく、小屋と屋台

プロデューサーの一人として関わったBETTARA STAND日本橋のように、今後はコミュニティビルドを通して、お客さんをファンにする活動が増えそうだという唐品さん。

ただ、繋がりといっても昔のようなウェットな形ではなく、自由度とドライさが大事なんです。ですから、運営側は人を繋ぐ場としてどれだけ魅力を持たせ続けられるかが重要だと思っています

活動の魅力をうまく発信し、素人だけでもワークショップやイベントができる状況をつくる。そのレベルにまで、小屋や屋台の存在を定着させられればと語ります。

僕が本当にやりたいのは、別荘と小屋の存在をつなげることです。たとえば、つくった人は自由に泊まれるタイヤ付小屋のホテルとか。それが各地にあって、仲間なら泊まれるという仕組みも面白いですよね。動くもの、自由度の高い小屋に興味があります

小屋部部長として、小屋と関わりを持つ第一歩について伺ってみました。

まずは一歩動き出すためのガワをつくるといいですよ。たとえば、屋台キットみたいなもので屋台をつくれば自然とマルシェに出たくなります。つかわない時は人に貸せばいいんですから、一回つくることにチャレンジしてはどうでしょう。単純に面白いと思います。あとは口に出してみること。僕はすぐSNSに書くんですが、それで反応をいただけることも多いです。自分から発信することも大事ですよ

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(Photo:関口佳代)

大人の部活としてゆるく続くYADOKARI小屋部。唐品さんの視点は少しずつ変化し、可能性は広がり続けています。しかし「誰にも強制されず、興味を持てば誰でも参加できる」場であることは、今後もずっと変わりません。

Text 木村早苗
Photo 関口佳代

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