住宅地として人気の高いエリアで手にした、古い鉄骨造の事務所兼アパート。スケルトンリノベで、光と開放感を楽しむ住まいにコンバージョン。
text_ Hiromi Matsubayashi photograph_ Hiroshi Tanigawa
静岡のリノベーション
(静岡県静岡市)
- 設計
- 後藤周平建築設計事務所
- 住人データ
- 夫(34歳)会社員、妻(32歳)会社員、長男(5歳)、次男(0歳)
将来は実家に戻ることを前提に、一定期間だけ暮らす住まいを求めた松下さんご夫妻。売却しやすい立地と形状にこだわって土地探しを始めた。見つけた敷地は、古い事務所兼アパートの建物が残された閑静な住宅街の一角。人気がある地域で地価が下がりにくく、南側道路で角地という理想的な環境だった。しかし、人気の高いエリアだけに土地の値段が予算オーバー。そこで松下さんは、売り主が解体する予定だった既存建物を残すことと引き換えに、解体費用分を土地の販売価格から値下げしてもらうように交渉し、リノベーションを検討した。
建物は築44年と古かったので、まずはリノベーションが可能であるか確認することが必要だと思いました(ご主人)
そこで、高校時代の同級生である建築家の後藤周平さんに調査を依頼。その結果、理想的な住まいのプランニングが可能だと分かり、建物ごと購入することを決めた。
既存建物を住宅にコンバージョンするために、後藤さんは内部のスケルトンリノベーションを提案。建物の半分は2層分の吹き抜けを持つLDKに、もう半分は1階と2階に分けて水まわりと個室を設けた。LDKには、2階部分にあたる高い位置に窓をつくり、周囲の視線を気にせず光を取り込むように配慮した。
個室には、いずれもLDKと向き合うように天井まであるFIX窓を設置。家族が思い思いの場所で過ごしながらも、お互いの気配は分かる、適度な距離感を持たせた。
プランはすべて後藤さんにお任せしましたが、素材と設備は自分で選び、好みのインテリアにしたいと思っていました(ご主人)
LDKの床は古材を使い、個性的な表情を楽しむ空間に仕立てた。キッチンはシャープなデザインのオールステンレス製をチョイス。床材とキッチンは施主支給、さらに現しにした既存の梁を自分たちで白く塗装し、コストダウンを図った。
限られた予算で心地よい空間をつくるために、自分でできることはすべて行いました。納得のいくリノベーションができて大満足です
コンバージョンによって手にした空間に、愛用してきたお気に入りの家具を配して、自分らしい住まいと暮らしを謳歌している。
専門家プロフィール
後藤周平
1982年 静岡県磐田市生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科、同大学院博士前期課程修了。中山英之建築設計事務所を経て、2012年 後藤周平建築設計事務所設立。
後藤周平建築設計事務所
- 住所
- 静岡県磐田市国府台2・3 2A
- TEL
- 050・3551・0510
- FAX
- 050・3737・4586
- info@shuheigoto.com
- URL
- shuheigoto.com
〈物件名〉静岡のリノベーション〈所在地〉静岡県静岡市〈居住者構成〉夫婦+子供2人〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉鉄骨造〈建物竣工年〉1971年〈敷地面積〉103.21㎡〈建築面積〉57.16㎡〈床面積〉1階 57.16㎡、2階 28.58㎡、合計85.74㎡〈設計〉後藤周平建築設計事務所〈施工〉鈴木建設〈設計期間〉7ヶ月〈工事期間〉6ヶ月〈竣工〉2016年〈総工費〉1,520万円
※この記事はLiVES Vol.91に掲載されたものを転載しています。
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