建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
【連載】DIY的暮らしのつくりかた
2018年 4月 9日

豊田大作の小屋ニスト日記|第5回「ぼくが小屋を作る理由 その2」

将来の住まいとするため、とある山のふもとにコツコツと小屋を作る40代男の手記。
小屋を作り始めて4年半が経とうとする今、いずれ始まる小屋暮らしを想像してみる。

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小屋のまわりに広がる豊かな自然。その恩恵を享受しながら、心身ともに健やかな日々を送りたい

これから作りたいものは…

この連載の初回を「ぼくが小屋を作る理由」と題した。そして、停滞した人生が「山のふもとに小屋を建てて暮らす」という計画を思いついたときからカラフルになったこと、現在はその計画を少しずつ実行するのがライフワークだということを書いた。

では、小屋が完成したら、果たしてぼくはそこでどんな時間を過ごすのだろうか?

正直なところ、小屋を作り始めた当初、小屋暮らしのイメージはとても漠然としていた。具体的なビジョンはひとつもなかったと言っていい。それでもとにかく始めることが大切だと思ったから、ある意味では無造作に小屋を作り始めた。それは小屋のデザインにも表れていると思う。

ドアをふたつつけた。窓は開閉式、固定式を合わせて7つつけた。こんなにたくさん建具をつけたのに、小屋に入ると、なんとなく閉塞感を感じてしまう。すべての建具が小さく、外があまり見えないのだ。いや、それは狙いどおりだった。窓は明かり取りや風通しのために必要だが、外から室内がよく見えるのは嫌だから、小さく作ろうと考えたわけだ。滅多に人など来ないこの場所を、住宅密集地と勘違いしたような発想に、我ながら笑ってしまう。本当は、いつでも周囲の自然が目に入る、大きな窓をつけるべきだった。そうすれば雨で作業ができないときは、小屋の中から雨を眺めて呑むという趣ある時間を過ごすこともできただろう。

そういえば以前取材したある人が、「里山に土地を購入して1年間は、週末に通ってはテント泊をして四季の様子を観察し、それからその地に合う建物を作り始めた」と言ったことを、この原稿を書いていて思い出した…。

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小屋の入口から見て左面の壁。この壁の向こうには山があるから、いつもそれを眺められる大きい窓をつけるべきだった…

さて、そんなぼくでも、小屋を作り始めてから4年半の間に、少しずつ小屋暮らしのイメージが固まりつつある。この連載で、ピザ窯を作ったことや、コンポストトイレを作り始めたことを書いたが、そんな設備をひとつずつ作るたびにも、小屋暮らしのイメージは少しずつはっきりしてくる。どこに、どんな機能を持つ、どんなサイズのものを作るか?その判断を下すためには、小屋での過ごし方をじっくり想像する必要があるからだ。

そして、コンポストトイレはまだまだ完成しそうにないけれど、既に、その後に作りたいものは目白押しとなっている。それらを挙げてみることも、ぼくの小屋暮らしの方向性をある程度示すことになるだろう。

まずアウトドアキッチンを仕上げたい。ピザ窯の横には、かまどを作る。ピザ窯、かまどとくれば必須なのは薪。薪を常にストックしておくことが求められるわけだ。かまどの横は水場にする予定。給水はどうするか?かつてこの土地に住んだ人たちがしたように、沢から水を引くことにチャレンジしたい。給湯もできれば言うことなしだ。太陽熱利用や、かまどの薪を熱源にする仕組みを考えてみよう。キッチン棟の地面にはテラコッタタイルを敷いて快適な空間に。テーブルを置いて日常的に屋外での食事を楽しめたらいい。

次は風呂。もちろん薪風呂だ。露天の浴槽はぜひ欲しい。室内浴槽と両方作れれば理想的。それからもう1棟、小屋を作りたい。オンドルのような蓄熱式ストーブを基盤とした小屋を作ってみたい。今度こそ壁一面の窓をつけよう。その後はガレージだ。昔に作られた単純な機構の自動車とオートバイを並べて、ちょこっといじっては田舎道を走らせるなんて最高じゃないか。さて、ここまで作ったとして、いったいぼくは何歳になっている?

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まだピザ窯しかないアウトドアキッチン。これから機能性も見た目もナイスに仕上げよう

自給自足を目指して

漠然と小屋を作り始めた当初のぼくでも、山のふもとに小屋を建てて暮らすなら、多少なりとも食料や日用品を自給したいとは考えていた。以来、それを目指して、いくつかの取り組みを始めてもいる。いずれもささやかな経験ではあるけれど、一歩を踏み出すことで、小屋暮らしのイメージはまた少しだけはっきり見えてくるものだ。

米作りは今年で5年目になる。神奈川県相模原市で活動するNPOに参加し、休耕田を借り受けている。面積はわずか2.5畝ほどだが、種籾をまいてから、収穫し、脱穀・精米して食べるまでの流れを年々繰り返し、そのペースを身体に沁み込ませられたらいいと思っている。小屋で暮らすようになったら、米に加えてそば、小麦を少しずつ作りたい。小麦はぜひ石窯パンの材料に。いろんな野菜と果物も育てたいものだ。山菜や野草を上手に活用できるようにもなりたい。

狩猟はこの冬に始めた。といっても、フィールドに出たのは2回だけだが、千葉・房総でエアライフルを使い3羽のカモを獲った。苦労しながら捌き、肉や内臓を焼いて食べた。来シーズンは散弾銃でシカやイノシシといった獣を獲るのが目標だ。小屋のまわりには、シカ、イノシシ、キジなどがたくさんいるようだから、うまく肉を調達できればと思っている。また、小屋から海までは車で20分ほどとそう遠くない。海の幸を得ることもできるだろう。さらに、いい渓流を見つけられれば、フライフィッシングという特別な遊びを楽しみながら、川の恵みをいただくことも期待できる。

身のまわりの自然素材を使って、日用品や家具を自給することにも挑戦したい。竹細工、蔓細工などにも興味があるが、いま最も関心を持っているのがグリーンウッドワークだ。それは、伐採して間もない、みずみずしいグリーンウッド=生木を材料にする木工のこと。生木は柔らかくて削りやすく、斧やナイフなどの刃物でサクサク削れていく。そのため、この木工では電動工具は使わない。刃物のほかに、削り馬や足踏みロクロといった自作の道具を駆使し、合理的な方法で加工する。送電線につながっていない小屋暮らしに、なんとぴったりな木工だろうか。

3月17日~21日、岐阜県立森林文化アカデミーで、アメリカのグリーンウッドワーカー、ジャロッド・ダールさんを講師に招いて開催された短期集中講座に参加した。グリーンウッドワーク漬けの濃密な5日間の中で、さまざまなテクニックを学ぶとともに、グリーンウッドワーカーの在り方のようなものを感じることができた。ウィスコンシン州在住のジャロッドさんは、若い頃からネイティブアメリカンの文化や、自身の祖先が暮らしたスウェーデンの木工などに関心を持ち、自然とのつながりを大切にしながら物作りを実践してきた、風格漂う男だ。年齢はぼくと同じ。彼の存在は、いずれ始まるぼくの小屋暮らしに大きな張り合いを与えてくれるだろう。

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ナイフのさまざまな使い方をレクチャーするジャロッドさん。家作りやカヌー作りの経験も豊富なクラフトマンであり、偉大なカントリーマンだ

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ジャロッドさんのグリーンウッドワーク作品の一部

と、今後の展望を思いつくままに綴ってみたが、もちろんすべて実現するかはわからない。ただ、「今現在、ぼくが小屋を作る理由は、こんな暮らしをするためだ」と、少しは具体的に記すことができたのではないだろうか。目指すべきは自然とともにある暮らしなのだと、自分でも再確認した次第だ。そして「山のふもとに小屋を建てて暮らす」というアイデアは、決して唐突な思いつきなどではなく、自分自身をあるべきところへ導くための切実な願いだったのだと、今となっては感じている。

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