斜めの壁が2層を縦断する大空間は、ボルダリングと木工、裁縫に園芸と、多趣味な夫婦が暮らしをクリエイトするためのフィールド。
photograph_ Yasunori Shimomura
O邸
大阪府岸和田市
〈設計〉 タトアーキテクツ
島田陽建築設計事務所
♦ 住人データ
Oさんご家族
夫 30歳 (会社員)
妻 35歳 (会社員)
施主のOさんご夫妻は、ご主人が30歳、奥さまが35歳。共に会社員で、今秋には第一子が誕生予定だ。結婚後の新居として、ご主人のご両親から譲り受けたのは、なんと倉庫。倉庫に住むという提案に当初は戸惑ったと話すOさんだが、
「最近は倉庫をリノベーションしたお洒落なカフェなどが増えているし、リノベーションでなんとかできるだろうと思いました」
リノベーションは、奥さまの知人だった建築家の島田陽さんに依頼。築15年の鉄骨造2階建ての倉庫は状態が良く、シンプルな造りは、解体してみないと状態がわからない住居よりも、リノベーションしやすいと感じたと島田さんは話す。
「倉庫らしい佇まいは好ましかったので、既存の躯体部分は覆い隠さず、白く塗装し直しました。断熱材が裏打ちされた畜産用のガルバリウム鋼板波板で建物を覆い、断熱性と止水性を確保し、既存床の上に蓄熱型床暖房を新設して、住居としての温熱環境を整備しています」
1階には、ポリカーボネート壁で囲まれた駐車場側に開く吹き抜けのリビングダイニングキッチンがあり、壁で仕切られた側に個室や水回り、パントリーを配置。2階は趣味室と寝室という構成だ。2層を縦断する傾斜した壁は、当初は垂直でプランニングされていたというが、
「そもそも広い空間ですし、スペースを持て余しそうな気がしたんです。そんなとき、Oさんに趣味のボルダリングの練習用の壁が欲しいと言われ、壁を傾斜させることを着想し、一気にプランが進みました」(島田さん)
ボルダリングとは、ロッククライミングの一種で、低めの岩や石をロープを使わずに登るスポーツ。2階の趣味室と寝室を仕切る傾斜壁にはカラフルなホールドが取り付けられ、Oさんが練習に励む。2階の趣味室は、裁縫が趣味の奥さまのためのスペースだが、Oさんご夫妻はほかにも、木工や園芸など、多くの趣味を持つ。
「ダイニングの床を土間にすることは、畑から持ってくる野菜を置くのに便利なので、希望しました。アウトドアも好きで、キャンプやバックパッキングにも行きますね」(Oさん)
リビングの大きなスチール製の窓や趣味室の棚などは、Oさんが好きな海外のロフトにヒントを得て造作したもの。まさにロフト・スタイルなO邸は、住まい手のクリエイティビティを刺激する要素に満ちている。
〈物件名〉O邸〈所在地〉大阪府岸和田市〈居住者構成〉夫婦〈用途地域〉第2種住居地域〈建物規模〉2階建て〈主要構造〉鉄骨造〈敷地面積〉162.15㎡〈建築面積〉79.20㎡〈床面積〉1階 79.20㎡ 2階39.21㎡ 計118.41㎡〈建蔽率〉48.84%(許容60%)〈容積率〉73.02%(許容200%)〈設計〉タトアーキテクツ 島田陽建築設計事務所 島田 陽〈施工〉株式会社 キョーワテクノ 担当:岡本雅史〈設計期間〉5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2011年〈総工費〉1600万円
Yo Shimada
島田 陽 1972年 兵庫県神戸市生まれ。95年 京都市立芸術大学環境デザイン科卒業。97年 同大学大学院修了。99年 タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立。
タトアーキテクツ 島田陽建築設計事務所
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