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記事作成・更新日: 2011年10月 1日

必要なものをつくりながら暮らす。セルフビルドの住まいづくり

築年数不詳の古い一軒家を、建築家の手を借りながらセルフビルドでリノベーション。暮らしに合わせて家をつくりながら住むという選択。

photograph_ Osamu Kurihara

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天井と梁、柱が長い年月を感じさせるリビング。既存の蹴込みと壁を撤去した階段の下に設けたオープンな洗面台がユニーク。

鎌倉VOWHAUS

神奈川県鎌倉市
〈設計〉ユーグ建築設計事務所


 古家付きの土地として売られていた築年数不詳の古い木造2階建てを購入し、セルフビルドでリノベーションを行った髙橋乃亜さんは37歳。奥さまと3人の子供と暮らす建坪約12坪の小さな住まいは、1階をLDKと水回り、2階を家族の寝室として使っている。
「最初は土地を買って新築することを考えていたんです。友人から紹介された建築家の佐々木祥太さんに土地を見てもらうなどしながら探していたのですが、予算に合うものがなく諦めかけていたところ、湘南エリアの不動産を扱うココハウスさんに出会い、1軒目に紹介されたのがこの家でした」(髙橋さん)

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左/外壁はプロに依頼して塗装し直した。2階バルコニーの格子はセルフビルド。
中/オリジナルの玄関ドアにはガラスのドアノブを取り付けた。
右/玄関先の庭も、髙橋さんが岩集めから植栽まで行ってつくったもの。

 その狭さや、増築でできた謎の段差、2階から直に外へ出入りする階段など、古い住宅ならではの独特の佇まいと空気感に、画一的な近代住宅にはない面白みを感じたという髙橋さん。ローンが通りにくい特殊な物件だが、ココハウスの尽力で購入が実現し、リノベーションに取りかかる。

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左/2階寝室の横にはもうひと部屋あり、段差部分に室内窓を設けた。
右/階段がなかった2階のドアなど、謎の造りが髙橋さんを惹き付けた。

「もともと、できる限りは自分で家をつくりたいと思っていました。でも、素人の自分だけでは何から始めたらいいのかわからない。そういう意味もあり、佐々木さんに当初から相談をしていたんです」(髙橋さん)

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左/医療機器メーカーに勤務する傍ら、写真作家の顔も持つ髙橋さん。壁には作品を飾る。
右/テーブルが跳ね上げ式のキッチンは佐々木さんのデザイン。2×4材でできている。

 解体工事は髙橋さんが担当。解体可能な箇所を佐々木さんに相談しながら作業を進め、リノベーションプランも同時に話し合い、決められていった。傾いていた家の補正や構造の補強、壁と床の造作、トイレと洗面台、佐々木さんデザインのキッチンなどはプロの職人が施工。内装仕上げは髙橋さんご家族が行った。

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コンパクトなダイニングキッチン。後から増築されて、リビング部分よりも天井高さが低くなっていた。奥の右手側には浴室があり、こちらは既存を利用している。

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左/2階の床の一部をポリカーボネード板にして照明を仕込んだ。補強の鉄骨は既存。
中/2階の壁は髙橋さん一家でしっくい塗料を塗り上げた。あと数回、重ね塗りする予定。
右/トイレの壁はオレンジ色。手前左の壁はマグネット塗料の上に黒板塗料仕上げ。

「家づくりの過程で、子供と一緒に考え、体を動かすことを大事にしたかった。我が家には個室がないけど、『扉が必要なら作ろう』というものづくりの発想を持ってほしい。家は、感性を育むための箱だと思うんです」
 と髙橋さん。コーディネーター的な立ち位置で髙橋さんのリノベーションをサポートした佐々木さんは、
「コストダウンという点でも、住まい手によるセルフビルドはおすすめ。道具と使い方の指南さえあれば誰でもできるし、家の造りがわかれば、家に対して寛容にもなれます」
 

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左/杉板をバーナーで焼き付け、やすりがけを施した板を玄関ドアに。
右/小屋裏を露出させた2階。こちらの床も構造用合板で仕上げた。現在はゴザを敷き、ここで家族5人川の字で眠る。

 お子さんの進級の関係から、工事途中に入居した髙橋さん一家。暮らしながらの家づくりは2年経った今も続き、2階ベランダの格子は先日完成させたばかりだとか。この家づくりが、終わることはなさそうだ。

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左/壁と床は構造用合板を貼り上げ、高橋さん一家が天然素材の塗料で仕上げた。構造用合板は、筋交いがなかった壁面の補強も兼ねる。
右/2階の段差部分の窓からリビングを見下ろす。


〈物件名〉鎌倉VOWHAUS 〈所在地〉神奈川県鎌倉市 〈居住者構成〉夫婦+子供3人〈建物規模〉地上2階建て 〈主要構造〉木造 〈建築面積〉40.10㎡ 〈床面積〉1階 40.10㎡、2階 37.24㎡ 計 77.34㎡〈不動産仲介〉株式会社COCO-HOUSE 西本学央〈設計〉ユーグ建築設計事務所 佐々木祥太〈施工〉石岡建築 石岡俊輔+施主家族〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉未定 〈竣工〉未定(引渡し2008年)〈総工費〉未定

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Shota Sasaki


佐々木祥太 1982年 宮城県生まれ。2003年 宮城工業高等専門学校機械工学科卒業。03年 工学院大学建築学科編入 リノベーション研究。04年 建築設計施工チームNKYCに参加。05年 工学院大学建築学科卒。印刷工場をセルフビルドで改装しeight-lounge結成。06年 ユーグとして活動。二級建築士。

ug/ユーグ建築設計事務所
東京都台東区千束2・30・5
入谷キャンプ1F
TEL 03・5603・0336
FAX 03・5603・5546
info@u-gu.jp
www.u-gu.jp/

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