築年数不詳の古い一軒家を、建築家の手を借りながらセルフビルドでリノベーション。暮らしに合わせて家をつくりながら住むという選択。
photograph_ Osamu Kurihara
鎌倉VOWHAUS
神奈川県鎌倉市
〈設計〉ユーグ建築設計事務所
古家付きの土地として売られていた築年数不詳の古い木造2階建てを購入し、セルフビルドでリノベーションを行った髙橋乃亜さんは37歳。奥さまと3人の子供と暮らす建坪約12坪の小さな住まいは、1階をLDKと水回り、2階を家族の寝室として使っている。
「最初は土地を買って新築することを考えていたんです。友人から紹介された建築家の佐々木祥太さんに土地を見てもらうなどしながら探していたのですが、予算に合うものがなく諦めかけていたところ、湘南エリアの不動産を扱うココハウスさんに出会い、1軒目に紹介されたのがこの家でした」(髙橋さん)
その狭さや、増築でできた謎の段差、2階から直に外へ出入りする階段など、古い住宅ならではの独特の佇まいと空気感に、画一的な近代住宅にはない面白みを感じたという髙橋さん。ローンが通りにくい特殊な物件だが、ココハウスの尽力で購入が実現し、リノベーションに取りかかる。
「もともと、できる限りは自分で家をつくりたいと思っていました。でも、素人の自分だけでは何から始めたらいいのかわからない。そういう意味もあり、佐々木さんに当初から相談をしていたんです」(髙橋さん)
解体工事は髙橋さんが担当。解体可能な箇所を佐々木さんに相談しながら作業を進め、リノベーションプランも同時に話し合い、決められていった。傾いていた家の補正や構造の補強、壁と床の造作、トイレと洗面台、佐々木さんデザインのキッチンなどはプロの職人が施工。内装仕上げは髙橋さんご家族が行った。
「家づくりの過程で、子供と一緒に考え、体を動かすことを大事にしたかった。我が家には個室がないけど、『扉が必要なら作ろう』というものづくりの発想を持ってほしい。家は、感性を育むための箱だと思うんです」
と髙橋さん。コーディネーター的な立ち位置で髙橋さんのリノベーションをサポートした佐々木さんは、
「コストダウンという点でも、住まい手によるセルフビルドはおすすめ。道具と使い方の指南さえあれば誰でもできるし、家の造りがわかれば、家に対して寛容にもなれます」
お子さんの進級の関係から、工事途中に入居した髙橋さん一家。暮らしながらの家づくりは2年経った今も続き、2階ベランダの格子は先日完成させたばかりだとか。この家づくりが、終わることはなさそうだ。
〈物件名〉鎌倉VOWHAUS 〈所在地〉神奈川県鎌倉市 〈居住者構成〉夫婦+子供3人〈建物規模〉地上2階建て 〈主要構造〉木造 〈建築面積〉40.10㎡ 〈床面積〉1階 40.10㎡、2階 37.24㎡ 計 77.34㎡〈不動産仲介〉株式会社COCO-HOUSE 西本学央〈設計〉ユーグ建築設計事務所 佐々木祥太〈施工〉石岡建築 石岡俊輔+施主家族〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉未定 〈竣工〉未定(引渡し2008年)〈総工費〉未定
Shota Sasaki
佐々木祥太 1982年 宮城県生まれ。2003年 宮城工業高等専門学校機械工学科卒業。03年 工学院大学建築学科編入 リノベーション研究。04年 建築設計施工チームNKYCに参加。05年 工学院大学建築学科卒。印刷工場をセルフビルドで改装しeight-lounge結成。06年 ユーグとして活動。二級建築士。
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