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記事作成・更新日: 2014年 6月 2日

“幼なじみができる家”ってどんな場所?子どもがいてもシェア住居で暮らしたい人のための「ひつじ不動産 for Family」

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みなさんは、兄弟や近所の友達と一緒に遊んだり、勉強をした思い出はありますか?誰かと何かをしたあたたかい経験は、時に大人になった私たちを励ましてくれたりするものですよね。

一方で、日本の家族は年々縮小傾向にあります。平成22年には、世帯における子どもの数は、平均1.7人という数字になっていて(平成22年厚生労働省の調査より)、「誰かと何かをする」という普段の風景が、今後は当たり前ではなくなってしまうかもしれません。
 

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ひつじ不動産で紹介されている物件より

「小さい家族なりに豊かに暮らす工夫」の一つとして、結婚しても、子どもができても、シェア住居に住みたいと考える人が増えてきているようです。そんな時代にあわせて、2014年2月からファミリー向けのシェア住居を紹介しているのが、「ひつじ不動産 for Family」です。

今回は、「ひつじ不動産 for Family」を運営する株式会社ひつじインキュベーション・スクエア代表の北川大祐さんに、シェア住居の魅力についてお話を聞きました。

大人の都合だけではなく、「子ども目線」でも住まいを考えたい。

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株式会社ひつじインキュベーション・スクエア代表北川さん(左)スタッフの宋さん(右)

まず北川さんは、「ファミリー向けのシェア住居は、”子どもの視点”で考えても暮らしやすさがある」と言います。


シェア住居って、単純に楽しいと思うんです。うちも子どもは一人なのですが、家族3人だけで暮らすことに「どうなんだろう?」と疑問を持つこともたまにあって。

核家族化や少子化の話になると、「何が大変で、何が負担・原因なのか」という、ついつい親の都合の話ばかりになってしまいますが、子どもたちにとってはそれしか知らないので、文句や意見はないんですよね。「3人で育つとさ、やっぱめっちゃ楽しいんだよね!」とか、子どもたちは知らないから言えない。


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ライオンとか動物を見ていると、よく子どもたち同士でじゃれ合ったりしてますよね。これは発達上、大切なことだと思うんです。大人がずっと子どもの相手をすることはできないし、「他の子どもと混ぜて育てる」ことは、大人にとっても子どもにとっても、必要なことなんじゃないかなと。


ファミリー向けシェア物件は機能面で便利なのはもちろん、それ以上に、子どもにとってもよいものになる。北川さんもこう言います。「だって、“幼なじみができる家”って、いいでしょ。」

“シェアハウス”じゃなくて、“シェア住居”

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オーナーの実家が農家さんだというウィル洋光台では「台所便り」が。

北川さんは、団地に囲まれたニュータウン育ち。子どもの頃、団地から学校に来ていた友人たちは、いつも仲良く一緒に行動していたので、とてもうらやましかったんだそう。そんな当時を振り返りながら、10年後のシーンを思い描いています。


ファミリー向けのシェア物件で、いい感じに子どもたちが育って、楽しそうにやってるんです。シェア物件に住んでいない小学生くらいの女の子が家に帰って「ねぇパパ、何でウチはシェア物件に住んでないの?」って不満そうに聞くの。それでパパは「う〜ん…。」ってシェア物件に住むことを検討しはじめる。そんなイメージがあるんですよね。


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「CULUM 浜田山」で行われたクリスマスイベントの様子

「ひつじ不動産 for Family」のもととなる「ひつじ不動産」は、おもしろいシェア住居を紹介するポータルサイトとして、2005年にスタート。“シェアハウス”とは言わず、“シェア住居”と発信してきたあたりに、こだわりを感じます。


頑固オヤジみたいでしょ(笑)。本当は、“シェア”という言葉も使いたくなくて。僕は、自分でよくわかっていない、実態の掴めないことを言いたくないんです。


現在、「ひつじ不動産」に掲載されているシェア住居は、累計1663戸。部屋の数は、約20,000室にもなるそうです。掲載されている住居の全てに、スタッフの皆さんが実際に足を運んで取材をしている様子からは、「“得体の知れないもの”は発信しない」という真摯さを感じます。

実際に、シェア住居へ出向いて取材をすることで、中の人の様子が肌感覚でわかるというのも、大切なポイントなのだとか。

“シェアハウス”というより、“接触”や“コンタクト”がある家


「ひつじ不動産」を始めた2005年当時、“シェアハウス”という言葉はメジャーではありませんでした。外国人の方向けの仮住居として、“ゲストハウス”というものが東京にもあると知られはじめた頃で。僕は、2000年ぐらいにゲストハウスの存在を知って、住みはじめたんです。すごい好きで、なじみました。

でも、きっと“シェアハウス”っていわれていたら、住まなかったと思うんです。最近よく使われている“シェアハウス”や、“シェア”というキーワードは、ちょっと“何か”を強いられているような雰囲気があって…。個人的には、「ハードルが高い」とも感じてしまいます。


昔のゲストハウスは、「家の中に、ただ共有部があるだけ」という感じ。「共有部があれば使うし、使ってて他の人と会えば、話すよね」という“程よい加減”があったのだそう。「暮らしには、それくらいがちょうどよい」と北川さんは考えているのです。

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「STYLIO WITH DAIKANYAMA(スタイリオ ウィズ 代官山)」の様子


単身者向けシェア住居の市場が育つのに、8年ほどの時間がかかりました。大変だったけれど、これからも僕らは「新しい市場をつくっていく」ということをやっていきたいと思っています。これまでの経験を活かして次に取り組んでいるのが「ファミリー向けシェア住居」なんです。

住まいは「どこに身を置くのか」ということで、本質は“泥くさいもの”。それぞれが、それぞれの都合で住まう中での、リアルなバランスがあります。

最近のシェアハウスブームには、そのリアルな泥くささを、意識の高さや理念で、なかったことにしてしまう風潮があるように感じていて。だけど、それって何だか息苦しいし、マニアみたいな人だけが住んでいるような印象を持たれる要因をつくってるんじゃないかなと。


暮らしの中で起こる出来事は、綺麗ごとだけではありません。でも、そのことを悲観的に捉えるのではなく、”身体感覚”を優先して住まいを選ぶことが大事だと北川さんは話します。


家はもっと「あ、住みやすそう」みたいな身体感覚のようなもので決めたり、建てたりしていいと思います。頭の中で、理念とか、意義のことも考えておく必要はあると思いますが、体を先にするほうが、頭で考えている以上のことが、きっと起こります。だから、最初に「シェア住居って素晴らしい!」というのは、順番が違う。まず家は「快適に使えるか・使えないか」だと思うから。


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溝の口ガーデンレジデンスの2階専有部内のキッチン

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minna house 真駒内の様子。吹く風が気持ち良さそう。

言葉のブームになると、一瞬は盛り上がるし、社会が変わったようにも感じる。「けれど、もうちょっと先のことをちゃんと考えたい」と北川さん。「ひつじ不動産」を始めた当時も、目先の流行りではなく、もうちょっと先の、“今後のシェア住居”を取り巻く環境と人のことを意識していたようです。


もしかしたら”シェア”という言葉が違うのかもしれません。”接点のある住宅”という感じ。「同じ家に住んでるから、顔合わせたら挨拶するし、仲良くなったら楽しい。けれど、別に仲良くならなきゃいけないわけでもない」みたいな。

接点があれば、仲良くなる人は自然と仲良くなっていく。一緒に会社つくったり、結婚したりする人も出てくるかもしれない。でも、そこを約束したり全面に出していく必要は全くないと思っています。


ファミリー向けのシェア住居は、トライ&エラーの時期

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STYLIO WITH DAIKANYAMA(スタイリオ ウィズ 代官山)のリビング

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ウィル洋光台のラウンジ。子どもが走り回れる広さがある。

これまでのシェア住居の多くは「単身者向け」が大前提で、「子どもがいる」となると住める物件はほとんどありませんでした。では、「ひつじ不動産 for Family」にはどんな住居が掲載されているのでしょうか。


実はファミリー向けシェア住居内での、ファミリーと単身者の割合は、物件ごとに様々なんです。「ファミリー向けシェア住居の全体像を知ってもらって、自分にあった物件を選んでほしい」と思っているので、ファミリーで入居可能な物件は全部掲載しています。

傾向として一番多いのは、マンション型の物件に共用部がついているタイプですが、これからどんどんトライ&エラーしていく時期なんだと思います。「え?子どもの寝室が共用なんですか?」っていうオモシロい物件が出てくるかもしれません(笑)

住居をつくる側も、住む側も試す期間。実はここが一番大変で、でも一番おもしろい。


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誰かといっしょなら、外に出るのも億劫じゃなくなる。(CULUM 浜田山)

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minna house 真駒内のキッズルーム


単身者向けのシェア住居が広がる過程でも同じだったんですが、「どこからどこまでを共用部にするか」が大事なテーマで。それを考えていくプロセスの中で、見えてくるものがあるんです。「一緒にお風呂に入る兄弟とかがいたら、もっとおもしろいのかもな」とかね。

とはいえエラーが多かったら市場は成り立ちません。なので、慎重になる必要はあります。今取り組んでいきたいのは、寛容な需要を集めていくことだと思っています。


「いろいろ便利な設備がついてきます!」というシェア住居は、贅沢な物件というだけになる可能性もあります。住まう人と、物件をつくる人の間でトレードオフを認めながら、新しいレイアウトや間取りを発見できたりすると、グッとおもしろくなりそうですね。

10年後を想像したときに、「あったらいいな。」の住まい方。

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僕たちがやろうとしてるのは、『1世帯あたりの子どもの数が3人に増えるようなシェア住居を広めましょう!』というようなことではないんです」と北川さんは強調します。


今の現状に即した“いい塩梅の家”をつくることが何より大事だと思うんです。現状は、小さい世帯が別々に、小さいユニットで暮らしていることが大変なんじゃないかなと。

例えば比率を100倍にして、“100世帯対170人の子ども”という状況の方が息苦しさが減る感じがしませんか?まぁ、他の大変さがありそうなんだけれど(笑)でも、工夫できる余地はずっと大きくなります。

とはいえ、まだまだファミリー向けのシェア住居の市場は始まったばかり。「ぜひ一つの住まい方として検討してみてね!」と思うけど、トライ&エラーの時期だということもちゃんと伝えておきたいですね。


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溝の口ガーデンレジデンスのラウンジは、キッチンと一体になっている。

結婚したり、子どもができるのは、とってもおめでたいこと。それなのに、ライフイベントを重ねる度、どんどん別々に分かれて生きていくのは、なんだか寂しいですよね。そんなとき「結婚しても、子どもができても、誰でも接点のある住居」に住みつづけることができたら、あなたの人生はどう変わっていくでしょうか。

目を閉じて10年後を想像したとき、“同じ家で育った幼なじみ”が、いっしょに学校の宿題をやっていたり、お皿洗いを手伝っていくれている…そんな光景を見てみたいと思ったら、ぜひ「ひつじ不動産 for family」を覗いてみてください。


※この記事はgreenzに2014年5月15日に掲載されたものを転載しています。

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