「好きに暮らすってどういうこと?」
建築家は家の設計を通して、住み手と一緒にこの問いかけの解を探します。
そんな建築家自身は、どんな「好きな暮らし」をつくっているのでしょう。本企画「建築家の棲み家」では、建築家自身に自邸の暮らしにおける「お気に入り」を紹介してもらいます。
Vol.01は、大塚あやさんです。
初めまして。大塚あやです。
主婦であり、子育て母であり、働く女性でもある、アラフォー女子です。
「好きに暮らそう」というテーマで、普段あまりお見せすることのない私の住まいの暮らし方をご紹介させていただきます。
皆さんの住まいの中に「ゆるり」空間がまたひとつ、生まれることを願いながら。
椅子好きの建築家は、多い。
かく言う私もきっとそうなのだと思います。
おばあちゃんになったら、Yチェアで食卓を囲もうと決めているし、今の生活だって、自宅には大好きなデザイナーの椅子や無名なデザイナーの椅子がちらほら点在しています。
不思議なことに、椅子は座った瞬間「この子はうちの子」と認識できます。
昔、表参道にある妹島和代さんが設計された家具屋さんhhstyle.comで出会ったバーナーパントンの椅子。
特徴的なインテリア、中央のスロープにとてもマッチしていて、とても印象的でした。
30分くらいでしょうか。
この椅子は我が家に似合うかしら・・事務所にはどうだろう・・
と迷いに迷って最後に座ってみたら・・
ちょっと違ったんですよね^^;
そんなこともありました。
さて。我が家の椅子をひとつ。
こちらのスツールです。
特別なものではないシンプルなスツール。
古道具屋さんで、10年以上前に購入したアンティークものです。
北欧生まれ。
何の飾りっ気もないスツールですが、多くの歴史を家族と歩んできた大切な一脚。
娘がつかまり立ちを初めてしたのは、この椅子につかまってだったことを今でも鮮明に覚えています。
ここでは、このスツールを材料に、我が家にある「スツールがつくりだす居場所」についてご紹介したいと思います。
自宅の中でこのスツールが一番多く使用される場所はキッチンです。
朝に夕ご飯の支度を済ませる習慣のある我が家では、朝日の入るこの場所にスツールが置かれていて。
ル・クルーゼのお鍋で煮込み料理を作る時、私はここで少し自分の時間を過ごします。
小説を読んだり、メールを返信したり。
グツグツ煮込んでいる時間とスツールが、“居場所”をつくります。
次なる居場所は、ライトコート。
ここにスツールを置き、眺める空の様子はとても、心地いい。
おすすめは昼間よりも夜。
満天の星空の一部を切り取った風景をこの場所から眺めていると、時々面白い現象を見ることがあります。
たぶん、飛行機だと思うのですが。
流れ星ほど速くはないスピードで光が流れていくんですね。
ここでは、スツールにさらにワインとチーズと音楽が寄り添い、心地よい“居場所”をつくります。
さて。
スツールがつくり出す居場所は他にもまだありますが、たったひとつの小さな椅子が、人を心地良くしてくれる場所を作ってくれるんですから面白いものです。
スペースも、お金もかからない、それこそフリースペース。
そんなちょっとした場所があることで、暮らしはとても豊かになるもの。
いま住んでいる家にひとつのアイテムを取り入れるだけで。
とりわけ、働く主婦やお母さんは、一日の中でまとまった時間を持ち、自分の身体を癒してあげることが難しいものです。
スツールを使えば、そんな方にピッタリの「ゆるり」空間が作れるはず。
皆さんにも、ぜひ、今から取り入れていただきたいアイテムです♪
text & photo 大塚あや
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