千葉県松戸市、松戸駅前を中心にアーティストやクリエイターとともに”クリエイティブなまちづくり”を行っているMAD Cityプロジェクト。改装OK・原状回復なしの賃貸物件を貸し出す不動産事業や、入居者同士の交流を促すコミュニティづくり、コワーキングスペースの運営などを行っています。
MAD Cityで扱う不動産の多くは改装OKの物件。入居者にも自分の手で床を貼ったり、壁を塗ったりしている人がたくさんいます。一方、最近じわじわと人気が出てきている「DIY」ですが、実は初心者にはハードルが高かったりするもの。
そこで立ち上がったのが、初心者の方でもDIYを手軽に楽しみながら、建築のプロとともに理想のお部屋を一緒につくることができる新サービス「DIYリノベ」です。
そもそもリノベーションって?
リフォーム、リノベーションなどお部屋の改装を意味する用語はいくつかありますが、そもそも「リフォーム」と「リノベーション」は何が違うかご存知でしょうか?
意味の解釈には諸説ありますが、MAD City代表・寺井さんによると、「リフォーム」は部屋を元の状態に戻し、使用できるようにするもので、部屋をリセットさせるということに近い意味なのだそう。
これに対して「リノベーション」は、現在とは違った目的で使うために部屋を改装すること。例えば、家族が増えるので間取りを変更する、などがこれに当たるそう。
国内の建築物が飽和状態にある中で、既存の建物を自分の暮らしにあわせてつくり変える「リノベーション」のニーズは、今後ますます広がっていくはずです。
そこで、MAD Cityの新サービス「DIYリノベ」は、初心者でもリノベーションに取り組みやすくするため、建築家とのコラボレーションによる様々な仕組みを提供しています。誰でも楽しみながら取り組める工夫がいっぱいの「DIYリノベ」を、さっそくご紹介しましょう。
「学ぶ」「描く」「一緒につくる」で、暮らしに合わせたリノベーションを
MAD Cityの「DIYリノベ」は、「学ぶ」、「描く」、「一緒につくる」という3つのステップで進めていきます。
まず「学ぶ」ステップでは、様々なDIYリノベの事例を見ることから始めます。実際にMAD City不動産の入居者たちがリノベーションした部屋を見ることもできるので、よりイメージも膨らむのではないでしょうか。
例えばこちらは、今回のサービスに参加している大工の木村光行さんがリノベーションした「いろどりマンション」の一室。DIYリノベのショールームとして使われている部屋です。
コンクリートだけの状態から天井を塗ったり、床を貼ったり、カウンターを設置するなどしてつくっていったそう。さすが、プロのお部屋だけあって随所にこだわりが感じられます。
イメージを膨らませたら次は「描く」ステップ。自分の部屋の具体的なリノベーション計画を思い描いていきます。
部屋ができた後「どう暮らしたいか」という理想や、それを実現するために「どのような部屋がいいか」という構想について建築家と一緒にじっくり考えます。
プロの観点から様々な具体的なアドバイスをもらうことができるので、リノベーション初心者でも突き詰めて考えられそうです。
そして、計画が定まったら、いよいよ施工。「一緒につくる」のステップです。現場でプロの職人さんに教わりながら、一緒に作業することができます。協働で思い描いたことを作業することは、通常ではなかなかできない経験ではないでしょうか。自身のDIYスキルもアップしそうです。
また、床を貼ったり、壁を塗ったりといった作業は比較的とっつきやすいですが、例えば水場やガス周りの配管作業が発生するような場合はやはり、プロにお任せしたいところ。このプロジェクトでは、前述の木村さんをはじめ、MAD Cityのプロの建築家さんや職人さんたちと進めていけるので安心です。
さらに工事が終わった後も、引き続き生活の変化に応じたお部屋のリノベーションを相談することもできます。費用はリノベーションの規模によって異なりますが、数十〜数百万円程度とのこと。
一度きりではなく、まるでかかりつけのお医者さんのように建築家と長く付き合うことができることも、このサービスの大きな魅力の一つと言えるでしょう。
お客さん自身が「建築家」になる
今回の「DIYリノベ」サービスに参加しているのは、MAD Cityに拠点を構える3人の建築のプロ。
DIYアドバイザーの西尾健史さんが「学ぶ」「一緒につくる」、建築家の森純平さんが「描く」、大工の木村光行さんが工事施工を担い、MAD Cityが全体の運営管理をする、というようにそれぞれが特色を活かしてチームをつくっています。
9月に行われたMAD City4周年イベントのトークで、森さんは今回のサービスについて次のように話しました。
森さん 「DIYリノベ」では、お客さんの将来のビジョンまで見据えた上で提案をしていきます。お客さんと一緒につくることによって、将来、生活の状況が変化したときにも家の改装ができるような仕組みづくりのきっかけになればと思います。
そして、建築家が全てやるというよりも、お客さん自身が自分でできるようになるよう、サポートしていきます。お客さんが建築家になるかのようなイメージですね。
また、木村光行さんは、
木村さん 「一度部屋をつくったら終わり」ではなく、住んでいる人の生活に合わせて部屋も一緒に変化していく。「つづく家づくり」というのがDIYリノベーションの醍醐味だと思います。
と、家づくりの新しい考え方を提唱しています。
暮らしの変化に合わせて、家や部屋も変化させていくと考えると、なんだかワクワクしますよね。さらに、その時の自分の理想の部屋について一緒に考えてくれる専門家がいるのは心強いですし、一緒につくることで自分のDIYスキルもアップしていけば、暮らしはますます楽しくなりそうです。
DIYリノベを見て、学んで体験できる「DIYリノベツアー」
9月には、DIYリノベーションを実際に学びながら体験できる「MAD City DIYリノベ体験ツアー」も始まりました。
このツアーでは、参加者のみなさんに、よりリアルにリノベについて考えてもらうため、MAD City不動産が扱うリノベーションした部屋を見たり、街歩きをしたり、実際にDIYで物をつくるワークショップを行っています。
先日行われた第1回のツアーでは、築40年の分譲マンション「いろどりマンション」のリノベーション事例を見た後、スツールをつくるワークショップが行われました。
まずは、「いろどりマンション」の一室、建築家の木村さんが入居し、ショールームとして公開している部屋の見学です。
そしてこちらは、同じマンション内の共有部屋。入居予定の方の家財道具置き場や、ガラス作家さんの作業スペース、DIY作業用の木材・工具置き場として使われています。
入居者同士でやりとりしながら、様々な使い方がされているとのこと。マンション内のコミュニティが成り立っているからこそできることですね。
こちらは現在まさにDIYリノベ中のお部屋。
この部屋の入居者の方によると、
やはり自分でつくった部屋は愛着が出ます。近所にはプロの人もいるので何かあっても安心だし、相談しながら進められるのがDIYリノベのいいところだと思います。
とのこと。なんと、電気と水道周り以外をほとんど自分で施工しており、分からないところがあってもYouTubeなどを見て調べながら作業を進めているそうです。どのような部屋が完成するか楽しみですね。
ツアーの最後はスツールづくり
ツアーの最後は、「古民家スタジオ 旧・原田米店」内の「MAD Lab」で、木材を使ったスツールづくりワークショップ。MAD Cityの“DIY先生”こと西尾健史さんの指導の下、参加者が自分で使いたいスツール(椅子)をつくりました。
スツールの高さやサイズを決めるところから始め、木材をカットし、組み立てていきます。まずは木材のサイズを採寸。今回は3種類の幅の木材を使いました。
そして、米店にある椅子や、参考資料などを元につくりたいスツールのサイズを決めます。
サイズが決まったら、木材に印をつけてカット。機械や工具も一式揃っており、教えてもらいながら使えます。
最後に、カットした木材を組み立て、インパクトでビスを打ちます。参加者のみなさんは、最初はインパクトの振動に戸惑いながらも、徐々に慣れていった様子でした。
この日の参加者の方のほとんどがDIYをするのは初めてでしたが、西尾さんや木村さん、森さんのアドバイスを受けながら進められたので、じっくり制作できた様子。それぞれ思い思いのスツールができ、最後にはみなさん笑顔で完成品を見せてくれました。
最後は打ち上げ!参加者はほぼ初対面同士でしたが、ワークショップを通じてすっかり打ち解け、一体感が生まれていました。
クリエイティブな自治区、MAD Cityがが提供する「DIYリノベ」は、9月末から受付を開始しました。プロと一緒に自分の理想の部屋や家について考えると、思わぬ発想が浮かぶかもしれませんね。
DIYリノベ体験ツアーは今後も定期的に開催されます。ぜひDIYに関心のある方は気軽に参加し、実際の現場やワークショップを体験してみてはいかがでしょうか。
※この記事はgreenzに2014年10月17日に掲載されたものを転載しています。