建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
暮らしのものさし
2015年 4月17日

みんなで面白がって、小屋をつくる。YADOKARI小屋部部長・唐品知浩さんに聞く、大人の部活動の楽しみかた


「暮らしのものさし」では、ただ消費者として暮らしを営むのではなく、自分の暮らしをデザインする、“暮らしのつくり手”たちを紹介しています。※この特集は、SuMiKaとgreenz.jpが共につくっています。


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昨年10月には東京・虎ノ門で「小屋展示場」が開催されるなど、今とてもキテるとも言える、小屋ムーブメント。その背景には、欧米で広がっている「Tiny House(=小屋)」ムーブメントの存在があります。

ミニマルライフ、多拠点居住、スモールハウス、モバイルハウスなど「これからの豊かさ」を考え実践するためのメディア「未来住まい方会議」。その運営をサポートする「YADOKARIサポーターズ」内で発足した部活動「YADOKARI小屋部」では、週末になると自分たちの手で小屋をつくりたい人、設計をしたい人、材料を持っている人、場所を提供してくれる人など20人~30人ほどが集まり、トントン、カンカンとみんなで小屋をつくっています。

参加者は女性が多く、なかには建築学科の学生たちも。昨年には、年間8棟もの小屋をつくり上げるという、ともすれば会社にできそうなくらい実績のある「YADOKARI小屋部」の部長・唐品知浩さんに、人が集まる理由について話を聞きました。

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唐品知浩(からしな・ともひろ)
1973年生まれ。株式会社リゾートノート取締役。「別荘リゾート.net」の運営をしながら、YADOKARIサポーターズで小屋部を発足。プロに任せず、施主を中心とした素人集団で小屋を製作することを目指している

みんなで面白がって、小屋をつくる

YADOKARI小屋部の結成は、2014年4月。発足以来、月1棟ペースで各地に小屋をつくっています。第一弾の小屋となったのは、神奈川県・大磯町で開催される「大磯ビーチフェスタ」で使われるハンモックカフェでした。

大磯は海水浴場発祥の地なんですが、ご縁あってビーチリゾートの新しいかたちを考えていて、ハンモックが並ぶハンモックビーチをつくってみようという話になったんです。その海辺に、小さなカフェも置きたいと。ハンモックビーチに置くカフェということで、ハンモックカフェです。

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ハンモックカフェとなる小屋づくりは、小屋の外壁用の板をペンキで塗るところから始まりました!

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小屋の土台をつくって、キャスターをつけたりしているうちに、作業を見ていられなかったと思われる港の大工さんが何度も足を運んでくれて、技術や知恵を教えてくれたのだとか

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海辺のハンモックカフェがだいたい完成したところ!

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大磯ビーチフェスタの様子。海辺にたくさんのハンモックが設置され、ここに海辺のハンモックカフェが置かれました

大磯のハンモックカフェをfacebookで投稿すると、それを見ていたサポーターズの建築家さんから小屋づくりを手伝ってほしいと声を掛けられるなど、自分たちで小屋をつくっちゃう人たちがいるらしいという噂はどんどん広まって、毎月1棟ペースで小屋をつくることに。

YADOKARI小屋部は、YADOKARIサポーターズの中から生まれたチームなのですが、今では小屋部に入部したいからサポーターズに入ります、といった逆転現象も起きるほどです(笑)
小屋づくりは、DIYの頂点みたいなものですよね。ひとりでは難しいけど、みんなでつくるハードルの高さや達成感がちょうどいい。だから楽しいんです。

設計者と施工責任者以外は、みんな素人。YADOKARI小屋部に参加する人だけでなく、通りがかった人から声を掛けられていくうちに、どんどん人とつながっていくのです。

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東京・虎ノ門で開催された、日本初の小屋展示場では、greenz.jp代表・鈴木菜央さんの小さな暮らしの実験小屋づくりを手伝いました

ほしい小屋がなかったから、自分でつくるしかなかった

もともと、大手企業で別荘やリゾートマンションマーケットに携わり、退社後は国内のリゾート別荘物件を紹介するポータルサイト「別荘リゾート.net」の運営をしている唐品さん。

各地の別荘エリアを飛び回りながら、「もっと気軽に、低予算で、誰にでも別荘が持てるものになったらいいのに」と考えていたそう。

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今のところ、まだまだ別荘って富裕層が買うような世界ですよね。例えば多拠点居住に憧れても、新築で別荘を建てるとしたら何千万も費用が掛かったりもする。
このハードルをなんとかしたいなと思って。小さければいいんじゃないのとは考えていたけど、自分がほしいと思えるような小屋が見つからなかった。だったら、自分たちで動くしかないと思って。

つくるなら、ホームセンターで売られている物置きのような小屋ではなく、PascoのCMに出てくるようなかわいい小屋を自分たちの手でつくりたい。唐品さんがそうした思いをYADOKARIサポーターズに投げかけてみると、最初の打ち合わせに30人近くが参加したのだとか。

PascoのCMに出てくる小屋、分かりますか?雰囲気も世界観もいいじゃないですか。みんなもイメージしやすかったのかもしれません。
昨年の4月上旬に決起集会をして、5月半ばには大磯のハンモックカフェをつくっていました。動きが早かったですね。

※PascoのTVCMをご覧になりたい方は、「敷島製パン(Pasco)/イングリッシュマフィン さすらいのサンドイッチ屋
「湖」春夏篇 出演:小林聡美」で検索してみてください!

建築物でありながら最小単位。世の中にたくさんある小屋の魅力

ところで、ひとくちに小屋と言っても世の中には様々な小屋が存在します。例えば犬小屋、宝くじ売り場、KIOSK…。小屋は、そういえば!と世の中に結構あるものなのです。

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イギリス・ケンブリッジの電話ボックス。これも小屋…!?

小屋って、小さな家ではなくて、小さな屋根と書くんですよね。ある意味、屋根さえあれば小屋なんです。テントだって小屋と言っていいかもしれない。その幅の広さが面白いのかもしれませんね。

「宝くじ売り場って、簡単に畳めるんですよ。持ち運びできるのかな?」と楽しそうに小屋の話をする唐品さんは、現在の住宅は、いわゆる「住宅商品」であるといいます。

国が使う建材を決めているくらいですから、どうしても画一的になってしまいますよね。
住宅は、もっと自由になっていい気がしていて。その自由さは、小屋であれば出しやすい。一部の人だけが小屋をつくるのではなくて、みんなが小屋をつくり始めたら、すごく面白いことになるんじゃないかと思っているんです。

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greenz.jp代表・鈴木菜央さんの小さな暮らしの実験小屋を製作中の写真。建築家&焼芋家のチョウハシトオルさんに小屋づくりの技術を教えてもらいました

また、小屋そのものだけでなく、みんなで小屋をつくる「コミュニティビルド」の面白さにも気がついたのだとか。

大磯で海辺のハンモックカフェをつくっているときに、西湘バイパスの高架下でつくっていたので、港の大工さんたちの気にとまったんです。最初のうちは見ていたんですけど、なってないとか、そこはこうつくるんだとか、どんどん口を出してくれるようになって(笑)
そうすると仲良くなって、一緒にお茶を飲んだりして、そのまちが好きになるじゃないですか。友だちというか、接点が増えていくんです。

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大磯町漁業組合の定食屋「めしや 大磯港」にて、鯖定食ランチ!

例えばどこかに旅行に行くとして、観光で考えると何度も行きたいとは思わないけれど、美味しいお店があったり、また会いたい人がいれば、何度も訪れる理由になりうるはずです。

小屋づくりを通して、見知らぬ土地でもどんどん接点ができて、つながっていく。コミュニティビルドというのは、単にみんなでつくるということだけでなく、つくったらつくった分だけ、つながっていくということなんですね。
小屋づくりを手伝うことがきっかけで、その土地に移住したりする人がいてもいいなって。そういう関わりが広がっていくのって、豊かですよね。

面白がって旗を立てれば、人が集まる

YADOKARI小屋部の部長である唐品さんは現在、facebookで「別荘・多拠点居住コミュニティ」を運営したり、不動産業界の慣例や常識にとらわれず、これからの不動産の仕組みを飲みながら一緒に考えブレストする「不動産を面白がる会」を立ち上げるなど、活動の幅をさらに広げています。

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不動産を面白がる会。素人と不動産会社、建築家、ITなどいろいろな職種の参加者が集まって、飲みながらブレストしています。4月のお題は「不動産エンタテインメントを開催する」

僕の活動はすべて同じことに起因していて、実験的かもしれないけど、心から楽しいと思えることをやる、それだけなんです。
例えば、キャンプとかみんな好きじゃないですか。でも移動が大変で、車を所有していないと面倒に感じてしまう。でも、行きたくないわけではない(笑)
面白がって旗を立てれば、人が集まる。みんなが腰を上げる要因をつくりたいんです。

そして、小屋づくりを通して唐品さんがつくりたい未来は、所有する文化から離れて、自分たちでつくるという価値観をつくること。

僕らは、よっぽどつくらない時代にいて、それを不思議だとも思っていないんですよね。DIYブームではあるものの、誰も教えてくれない、無責任なDIYブームだと思うんです。
何かつくりたいと思ってホームセンターに足を運んだところで、道具も材料もつくり方もさっぱり分からない(笑)
つくれる人もつくれない人も、面白そうだからと集まって、つくれる人が教えてあげる。そうした輪を広げていきたいと思っています。

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「あれ、また釘が入ってる」とポケットから釘を取り出して見せてくれた唐品さん。「子どもたちは、父ちゃんは家をつくる人だと思っていますね」と笑います

何かを面白がって旗を立てれば、そこに人が面白がって集まっていく。唐品さんの“旗の立てかた”は、旗を立てた人が活動を楽しんでいれば、自然と人が集まる、というものです。

それぞれの人が持つ得意なことを活かして、みんなでつくる。消費者と生産者の境目がなくなっていている今、プロではない人たちが行う大人の遊びのような「部活動」も起業になりうるのです。

そして、自分で小屋をつくれるだけでなく、みんなで小屋をつくるコミュニティビルドという方法がどんどん広がったその先には、誰かに頼らず、自分たちで考え、つくる、ほしい未来がありそうです。

YADOKARI小屋部」の活動が気になったら、ぜひ「YADOKARIサポーターズ」をのぞいてみてくださいね。

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