駅遠、築年が経過したリーズナブルな団地を選び、物件費を圧縮。仕上げや家具は妥協せずに、1000万円以内で好みの空間を実現。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
築古団地リノベ
F邸
神奈川県横浜市
〈設計〉宮田一彦アトリエ
・住人データ
夫(32歳)製造業
妻(32歳)コーヒーショップ勤務
築43年、63㎡の団地を320万円という価格で購入。総工費670万円でリノベーションしたFさんご夫妻。合計1000万円弱の予算で、インテリアにこだわった理想の家を手に入れた。駅からの距離は遠いが、普段車やバイクで移動するため、問題にならないという。
「リノベーションに興味はありましたが予算がネックでした。もっと資金を貯めてからでもいいと考えていましたが、この物件なら無理なく実現できるので、早めに動くことにしました」(ご主人)
設計はたまたまブログを発見して、興味を持ったという宮田一彦さんに依頼。オープンキッチンの広いLDKに、ミニマムな寝室という希望を伝えてプラン提案を受けた。
「壁式構造だったので、間取りはほとんど変えていません。しかし、取れる壁や建具は取り払い、キッチンの向きを変えるだけで、希望通りの空間となりました。冷蔵庫を置く場所に悩みましたが、ドアをつけて隠すことで解決しました」(宮田さん)
浴室、トイレ、洗面室も構造壁で仕切られているため、既存の配置をそのまま活かし、設備や仕上げを一新した。最新の設備と比較するとコンパクトなものを選ぶ必要があるが、機能面に支障はないという。
また、アンティークの家具や雑貨が好きなFさんご夫妻は、仕上げの素材やパーツにもこだわりが強く、豊富なアイデアを持っていた。たとえば「レンガの壁が欲しい」「フローリングを斜めに張りたい」など具体的な希望も多かったという。
「あれもこれもと統一感のない希望が、宮田さんのサポートでまとまっていきました。レンガも赤茶色を想像していましたが、白のほうが本物っぽく見えるとアドバイスをもらい、現状のような仕上がりになりました」(ご主人)
また、宮田さんの提案により、もともと使われていたガラスの建具を、収納の扉として流用している。「木枠や格子に、型板ガラス、すりガラスなどがはめられた古い建具は雰囲気が良く、再利用することで予算も抑えられます」(宮田さん)
住宅ローンは10年くらいで返済する計画だというFさんご夫妻は、「負担が少ない分、気軽に好きな家具を購入したり、ファッション、旅行なども楽しむことができます」
これも30代が求める豊かさのひとつのスタイルである。
〈物件名〉F邸〈所在地〉神奈川県横浜市〈居住者家族構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(5階部分)〈主要構造〉RC壁式構造〈建物竣工年〉1970年〈専有面積〉63.42㎡〈バルコニー面積〉6.00㎡〈設計〉宮田一彦アトリエ〈施工〉五十嵐工務店〈設計期間〉1.5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉670万円
Kazuhiko Miyata
宮田一彦
1966年 東京都生まれ。
97年宮田一彦アトリエ設立。
2010年 拠点を新宿から鎌倉に移転。
住宅の新築・リノベーションを中心に活動中。
宮田一彦アトリエ
神奈川県鎌倉市山ノ内1235・3
TEL 0467・84・7666
FAX 0467・84・7667
info@m-atelier.jp
m-atelier.jp
※この記事はLiVES Vol.72に掲載されたものを転載しています。
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