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記事作成・更新日: 2015年 5月15日

昭和40年代の格安物件で、インテリアにこだわる家づくり

駅遠、築年が経過したリーズナブルな団地を選び、物件費を圧縮。仕上げや家具は妥協せずに、1000万円以内で好みの空間を実現。

text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue

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広々としたLDK。撤去できない梁や構造壁を手がかりに、キッチンや収納を配置している。壁はしっくいを塗装。キッチンの周辺など、一部の壁はモルタルを塗装している。

築古団地リノベ

F邸

神奈川県横浜市
〈設計〉宮田一彦アトリエ

・住人データ
夫(32歳)製造業
妻(32歳)コーヒーショップ勤務


築43年、63㎡の団地を320万円という価格で購入。総工費670万円でリノベーションしたFさんご夫妻。合計1000万円弱の予算で、インテリアにこだわった理想の家を手に入れた。駅からの距離は遠いが、普段車やバイクで移動するため、問題にならないという。

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左・寝室の壁は杉板を張って白のオイルステインで塗装。/右・空間を広く取るため配管は露出させた。

「リノベーションに興味はありましたが予算がネックでした。もっと資金を貯めてからでもいいと考えていましたが、この物件なら無理なく実現できるので、早めに動くことにしました」(ご主人)

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空間を広く取るため配管は露出させた。

設計はたまたまブログを発見して、興味を持ったという宮田一彦さんに依頼。オープンキッチンの広いLDKに、ミニマムな寝室という希望を伝えてプラン提案を受けた。

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既存の構造壁を活かした洗面室。洗面台はモルタル左官仕上げ。ボウルと水栓は「KOHLER」。

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寝室の一角。赤で塗装した部分はウォークインクローゼット。引戸は既存のガラス戸を流用。

「壁式構造だったので、間取りはほとんど変えていません。しかし、取れる壁や建具は取り払い、キッチンの向きを変えるだけで、希望通りの空間となりました。冷蔵庫を置く場所に悩みましたが、ドアをつけて隠すことで解決しました」(宮田さん)

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浴室の壁は一面をサブウェイタイルに。床には造作したすのこ。

浴室、トイレ、洗面室も構造壁で仕切られているため、既存の配置をそのまま活かし、設備や仕上げを一新した。最新の設備と比較するとコンパクトなものを選ぶ必要があるが、機能面に支障はないという。

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左・作業台の上のショーケースに、日常的に身につけるものをディスプレイ。 / 右・以前の住まいでテレビ台として使っていたソファテーブル。

また、アンティークの家具や雑貨が好きなFさんご夫妻は、仕上げの素材やパーツにもこだわりが強く、豊富なアイデアを持っていた。たとえば「レンガの壁が欲しい」「フローリングを斜めに張りたい」など具体的な希望も多かったという。

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リビングの一角にアンティークの作業台を置いて、パソコン用のワークスペースとして使っている。広さのあるLDKには、重厚感のある大きな家具も自然に溶け込む。

「あれもこれもと統一感のない希望が、宮田さんのサポートでまとまっていきました。レンガも赤茶色を想像していましたが、白のほうが本物っぽく見えるとアドバイスをもらい、現状のような仕上がりになりました」(ご主人)

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収納の扉として流用したガラスの建具。既存の食堂と居間を仕切っていた。

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左・冷蔵庫は通路をはさんだニッチに。アンティークのドアを閉めると隠れる。 / 右・シンク背面の低めの位置につくった食器棚。「ファイヤーキング」が並ぶ。

また、宮田さんの提案により、もともと使われていたガラスの建具を、収納の扉として流用している。「木枠や格子に、型板ガラス、すりガラスなどがはめられた古い建具は雰囲気が良く、再利用することで予算も抑えられます」(宮田さん)

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洗面室の裏側にあたる玄関の壁もサブウェイタイル。玄関ドアの内側は赤で塗装。右奥に見えるトイレのドアは既存を流用。塗装してノブを好みのものに交換。

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造作したキッチン。既存の配置から90度回転させて対面オープンキッチンに。リビング側はカウンターとして使用。

住宅ローンは10年くらいで返済する計画だというFさんご夫妻は、「負担が少ない分、気軽に好きな家具を購入したり、ファッション、旅行なども楽しむことができます」

これも30代が求める豊かさのひとつのスタイルである。

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念願だった白のレンガ風タイルの壁。リビングのソファの前の一面に施した。白にしたことにより、広さも感じさせる。


〈物件名〉F邸〈所在地〉神奈川県横浜市〈居住者家族構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(5階部分)〈主要構造〉RC壁式構造〈建物竣工年〉1970年〈専有面積〉63.42㎡〈バルコニー面積〉6.00㎡〈設計〉宮田一彦アトリエ〈施工〉五十嵐工務店〈設計期間〉1.5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉670万円


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Kazuhiko Miyata


宮田一彦

1966年 東京都生まれ。
97年宮田一彦アトリエ設立。
2010年 拠点を新宿から鎌倉に移転。
住宅の新築・リノベーションを中心に活動中。

宮田一彦アトリエ
神奈川県鎌倉市山ノ内1235・3
TEL 0467・84・7666
FAX 0467・84・7667
info@m-atelier.jp
m-atelier.jp


※この記事はLiVES Vol.72に掲載されたものを転載しています。
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