3階建て鉄骨造の建物の内装を撤去して、自由に
リノベーション。職人がベースだけをつくり、
自分たちで手をかけて住みながら育てる家。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
BEFORE
スナックとして使われていた2階テナント。窓はひとつで薄暗い印象だった。
ビルリノベ
BT-house
埼玉県草加市
〈設計〉建築計画網・大系舎
・住人データ
貴史さん(39歳) 建築家
り加さん(39歳) フローリスト
BEFORE
1階が不動産会社、2階がスナック、3階が貸し事務所だったという埼玉県草加市に建つテナントビル。建築家の森川貴史さんは、価格に値打ち感があった築28年の鉄骨造の建物に魅力を感じ、住宅にコンバージョンすることにした。
「テナントビルは階段が壁側に寄っていて、店舗部分が広く取られたシンプルな造りが多い。各層をワンルームにして使いたかったので、イメージにぴったりでした」
貴史さんが目指したのは、物件や工事の費用を抑え、住宅として必要最小限のベースをつくること。住みながらDIYでカスタマイズして育てていく家が希望だった。そのため工務店に依頼する部分とDIY部分を明確に分け、工事のスケジュールをしっかり組むことに努めた。
「塗装はほとんど自分たちでやりましたが、入居前に床までは塗り終えるようにしました」(貴史さん)
1階はフローリストとして、植物を扱う奥さまのり加さんのアトリエ。数年前に内装を新調してあったため、床をモルタルの左官仕上げで整えるのみとした。入居後に棚をつくったり、壁紙の上から漆喰を塗ったりして、DIYを続けている。
外階段からつながる2階はLDK。システムキッチンを新設し、ラーチ合板のカウンターで覆うようにして、テイストを合わせた。天井を剥がして鉄骨の構造を現しとし、梁と壁を白く塗装。床は仕上げを剥がしたら出てきたコンクリートがいい状態だったため、防塵塗料を塗るだけに留めた。
3階は天井に木毛セメント板、床にラワン合板を張って、水まわりを新設。現在は寝室として広々と使っているが、将来的に個室が必要になったときは、壁をつくって間仕切ることも考えている。
「2階は以前スナックだったため、南側の小さな窓しかなく、薄暗い印象でした。北側に大きめの窓を新設し、南側の窓も大きくして、3階へとつながる階段を隔てていた壁も撤去。開放的で風通しの良い明るい空間になりました」(貴史さん)
テナントビルは、柱や梁などの構造以外を撤去できる鉄骨造やRC造が多く、希望の空間をつくりやすい。都心ではすでに注目を集めている古いビルの住宅へのコンバージョン。このアイデアを物件のストックが豊富で、ローコストな郊外の物件に活かせば、リノベーションの可能性は格段に広がりそうだ。
BEFORE
〈物件名〉BT-house〈所在地〉埼玉県草加市〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上3階建て〈主要構造〉鉄骨造〈建物竣工年〉1985年〈建築面積〉38.50㎡〈床面積〉1階38.50㎡、2階38.50㎡、3階38.50㎡、計115.50㎡〈設計〉森川貴史/建築計画網・大系舎一級建築士事務所〈施工〉株式会社ニート〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉2ヶ月+DIY〈竣工〉2013年〈総工費〉530万円
Takashi Morikawa
森川貴史
1974年 埼玉県生まれ。
98年 工学院大学工学部応用化学科卒業後、
サッシメーカーに就職。
99年 スペースデザインカレッジ スペースデザイン設計科。
2003年建築計画網・大系舎一級建築士事務所入所。
建築計画網・大系舎
東京都目黒区中目黒2・7・11
宮岸ビル4F
TEL 03・3716・2918
FAX 03・3716・8459
soudan@taikeisha.net
www.taikeisha.net
※この記事はLiVES Vol.73に掲載されたものを転載しています。
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