ゆったりとした大屋根がかかる、
山荘のようなN邸。谷戸の風が抜ける住まいで、
自然を身近に感じる暮らしを親子で満喫する。
text_ Satoko Hatano photograph_ Akira Nakamura
N邸
-子どもと暮らす家-
神奈川県
〈設計〉一級建築士事務所まんぼう
・住人データ
夫(40歳) 会社員
妻(40歳) 主婦
長男(5歳)
長女(3歳)
犬 1頭
中古住宅に愛犬と暮らしていたNさんご家族は、2人目のお子さんを出産後、ご夫妻の実家近くに引っ越すことに。中古一戸建てを含めて物件を探し、西方に谷戸を眺める高台の土地に出合った。
「谷戸の眺望と風を取り込みたいと思いました。もともとアウトドアが好きなので、家でも自然を身近に感じたかったんです」
と話すご主人。家族や友人と薪ストーブを囲んだり、庭先でバーベキューを楽しむ山荘のような家をイメージし、同じ趣味をもつ一級建築士事務所まんぼうの一條美賀さん、太郎さんに設計を依頼することにした。
「立地を生かし、建物西側に大きな窓を連続させました。西日を避ける庇はたっぷり1.8m出しています」
と一條さん。デッキを敷いた庇下のテラスが、縁側のように庭と室内をつないでいる。1階はこのデッキテラスにつながる土間リビングを中心に、個室と畳コーナー、水まわりで構成。キッチンは家事をしながら家族の様子がわかるオープンスタイルに。そして、2階まで吹き抜けた天井をもつ、ゆったりとした空間には、念願の薪ストーブが鎮座する。
「土間や壁の合板仕上げは扱いが楽です。汚れを気にして子どもの行動を制限することがないので、親も子ものびのび過ごしていますよ」
と和やかに話す奥さま。デッキテラスでは、2人のお子さんが粘土遊びに興じたり、庭や土間を裸足で行き来しながら楽しげに過ごしている。
1階のみで生活全般がまかなえる間取りのため、2階は機能を限定しない空間で構成。ご主人は、
「間仕切りの少ない開放的な家が理想なので、個室化した子供部屋は不要でした。部屋が欲しければ、子どもが好きな場所を見つければいい」
リビング吹き抜けを見下ろすフリースペースやファミリーリビング、少し奥まった「秘密基地」など、ワクワク感のある空間がつながる。
間取りはおおらかな一方、太陽光発電や夜間電力利用の床暖房など、省エネ設備の導入は万端だ。環境や生活を豊かにする行いはアウトドア仕込みで、薪割りや煙突掃除も自らこなすNさん。目下、子どもたちと家庭菜園を造成中だ。
お子さんと共に新居を満喫するご夫妻に、子育ての方針を尋ねると、「普段の暮らしのなかで自然や家族とのつながりを感じてくれればいい」との答えが返ってきた。
〈物件名〉N邸〈所在地〉神奈川県〈居住者構成〉夫婦+子ども2人+犬1頭〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉276.45㎡〈建築面積〉107.90㎡〈床面積〉1階81.46㎡2階41.64㎡計123.10㎡〈建蔽率〉39.03%(許容40%)〈容積率〉50.14%(許容80%)〈設計〉一級建築士事務所まんぼう〈構造設計〉木村佳央建築構造設計室〈施工〉野邉工務店〈設計期間〉10ヶ月〈工事期間〉5ヶ月〈竣工〉2011年
Mika Ichijo
一條美賀
1969年 愛媛生まれ。
91年 東京理科大学理工学部建築学科卒業。
92 ~ 95年 株式会社シーラカンス一級建築士事務所勤務。
96 ~ 99年 一級建築士事務所エアーアーキテクツ共同設立。
99年~ 一級建築士事務所まんぼう設立。
2007 ~ 11年 職業能力開発総合大学校非常勤講師。
Taro Ichijo
一條太郎
1967年 神奈川生まれ。
95年 芝浦工業大学大学院建設工学専攻卒業。
95年~ 2001年 株式会社シーラカンス・アンド・アソシエイツ一級建築士事務所勤務。
2001年~ 一級建築士事務所まんぼうパートナー。
07 ~ 11年職業能力開発総合大学校非常勤講師。
一級建築士事務所まんぼう
東京都渋谷区富ヶ谷2・19・8
松濤マンション602
TEL 03・3466・7850
mambo@mambo-aa.jp
www.mambo-aa.jp
一級建築士事務所 まんぼう SuMiKaのプロフィールページへ
※この記事はLiVES Vol.70に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ