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記事作成・更新日: 2015年11月26日

昭和のモダンデザインと、 家族の痕跡を 伝える戸建てリノベ

高円寺 リノベーション

造り付け収納、建具、吟味された家具など、年月をかけて築いたこだわりのディテールを継承。床とバルコニーを撤去し、新生活に合わせた家に。

text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue

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3 階の吹き抜けからリビングを見下ろす。使っていなかったバルコニーや居室が贅沢な吹き抜けへと一新。既存の鉄骨の階段も撤去し、木製の階段をつくった。

高円寺リノベーション(東京都杉並区)

設計
アトリエハコ建築設計事務所
住人データ

Hさん(60歳)

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玄関は1階。階段を上がった2 ~ 3 階が住居。

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1階はテナントとして賃貸中。

ミッドセンチュリーを思わせるモダンな造り付け収納は、年代もののルイスポールセンの照明にも劣らない存在感がある。昭和の日本のインテリアデザインの遍歴を伝えるこの家は、築42年の鉄骨造の3階建て。かつては1階が写真館で、2〜3階が家族5人で暮らす住居だった。現在の住人のHさんのご両親が建てたものだ。

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壁に造り付けた収納、ルイスポールセンの照明など、もとからあったインテリアを活かしたダイニング。テーブルは空間に合わせて、ウォルナットの無垢材で造作。

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20 年ほど前にリフォームしたキッチンは「TOTO」のフルオーダー。設備のみ新調。

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ダイニングの収納に飾った調光式のモダンな照明も、お母さまのコレクション。

母はインテリアが好きで、海外の家具をよく購入していました。家が出来てからも、空間をより良くしようと、何度もリフォームしていましたね。母が長い年月をかけて工夫してつくり上げた家なので、自然と残したいという思いが生まれたのだと思います。(Hさん)

一時は手放すことも考えたが、リノベーションにより、空間を一新できることが分かり、知人の紹介で出会ったアトリエハコ建築設計事務所の七島幸之さんと、佐野友美さんに設計を依頼した。

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壁に埋め込まれたような木の箱はトイレスペース。壁面収納は既存のまま。

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3 階の寝室の壁にも既存の造り付け収納。木の扉をガラス戸に入れ替えた。

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ダイニング奥の収納スペース。壁面は既存階段にあった収納。

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3 階の照明器具も、Hさんのお母さまが購入したもの。

既存空間は、造作家具、建具、キッチンなど、随所にこだわりを感じさせるもので、撤去するのはもったいないと感じました。今では真似できない贅沢な造りのものばかりなので、できるだけ既存を残し、建具なども流用。既存の良さと新設部分をパッチワークのように混在させ、プラン変更でデメリットを軽減していきました。(佐野さん)

建物は商店街に位置し、既存の2階の和室は通りの喧騒が伝わり、落ち着けなかった。通りに面した3階のバルコニーもほとんど使われていなかったという。そこで、3階のバルコニーと床の一部を撤去し、2階のリビングに吹き抜けを設け、バルコニーだった部分にトップライトを新設。生活の中心となる2階のLDKを開放感のある空間とし、3階の奥をこもり感のある寝室へとつくり変えた。

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3 階の床の一部を撤去し、リビングの上を吹き抜けに。バルコニーを撤去して設けた天窓から光が入る。

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2 階の窓辺には、元々あった箪笥の一部を置いてベンチに。植物はこの空間に合わせてHさんが選んだ。

床面積を少なくすることで、実際に使用する空間を増やし、Hさんの新しい暮らしに合ったプランを提案しました。活動と休息の場を明確に切り分け、吹き抜けで連続性をもたせながら、メリハリをつけることを意識しました。(七島さん)

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3 階の奥は落ち着いたこもり感のある寝室。床はラワン合板。

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明るく開放的なリビング。畳を置いて、床座りのスタイルに。

新設した壁に使った珪藻土やシナ合板、ラワン合板などのラフな素材も、デザイン性の高い既存の建具や家具の良さを引き出している。時代と家族の痕跡を大切に継承し、新たな工夫を積み重ねた家は、一日では成しえない美しさに満ちている。

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3 階の壁側のクローゼットと押入れは、既存の建具を用いて造作。

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1 階の玄関から居室に向かう階段。壁面収納の上も飾り棚に。

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3 階のトイレのドアは既存を流用。ドアノブは「Ohshima」。

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BEFORE

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AFTER


〈物件名〉高円寺リノベーション〈所在地〉東京都杉並区〈居住者構成〉大人1 人〈建物規模〉地上3 階建て〈主要構造〉鉄骨造〈建物竣工年〉1972 年〈建築面積〉37.275㎡〈床面積〉2 階 37.275㎡、3 階 22.05㎡、合計 59.325㎡〈設計〉七島幸之+ 佐野友美/ アトリエハコ建築設計事務所〈施工〉サンヨー住宅〈設計期間〉6 ヶ月〈工事期間〉6 ヶ月〈竣工〉2014 年〈総工費〉1,150 万円


※この記事はLiVES Vol.76に掲載されたものを転載しています。
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