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住宅・建築メディアインタビュー
記事作成・更新日: 2016年 1月14日

主婦の目線から生まれた“百人百様”の家と暮らしの情報メディア「iemo」

住宅・建築メディア インタビューVol.05 iemo

月間600万人が訪れるという「iemo」は、DeNAが運営する家と暮らしの情報まとめサイトです。身近なインテリアや雑貨ネタから本気の家づくり記事まで、豊富なバリエーションで女性読者が多いのが特徴。そんなメディアの代表を努めるDeNAの執行役員でもある村田マリさんにお話を伺いました。

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彼女がiemoを立ち上げたきっかけは、専業主婦時代の子育てを通じ、住まいについて考え始めたことにありました。

子育てってすごく忙しくて、かわいい子ども部屋や安全な家具の情報を探したいと思っても、PCを立ち上げる時間すら取れないんです。それならすき間時間に…とスマホで探すと情報自体が見つからない。モバイルで見られるような暮らしを快適にする情報サイトがあればいいのにと思っているうちに、ないならつくってしまおうと思ったんです。いち主婦のニーズで始めたようなものです。

日本の暮らしに、百人百様の世界をつくる

若い頃から、海外でのアパルトマン生活を頻繁にしていたという村田さん。自らの経験も活かし、海外では普通の個性的な住まいや、国内で独自の暮らしを実践する人々の事例などを紹介したい。そして、日本の暮らし方をもっと多様性のあるものにしたいと考えたのです。実は現在もシンガポール在住。日本にはない構造の住宅やインテリアに触れているそうです。

iemoのミッションは、『百人百様の世界をつくる』です。日本は家や暮らしのあり方がまだまだ画一的ですよね。だから、もっといろいろな方法やスタイルがあって、自分たちでもそれができることを知ってほしいんです。そして施工業者さんからも施工例などの情報を発信していただくことで、最終的には彼らとユーザーさんをつなぐ場をつくれたらなと。日本の住宅事情を色鮮やかにしたいという思いで運営しています

ちなみに、iemoという名前は2つのことを指しています。ひとつは「家の情報をモバイルで見る」という機能、そしてもうひとつは、ユーザーの「家をもっと●●したい」という気持ちを誘発するメディアだという暗喩。名は体を表すというのはこのことです。「家」という言葉が示すように、実は初期は住宅や建築関連などハード面の情報が中心でした。それが現在ではインテリアや家事、レシピなど生活系の記事も増え「住」全般を取り扱う方向に。

たとえば、SuMiKaさんのユーザーさんは『casa BRUTUS』の建築家特集やリフォーム系専門誌を読まれるような、具体性を持って行動される方が多いと思うんです。ある種ニーズが顕在化している人たちというか。一方で私たちが目指すのは主婦メディア。大衆的というか柔らかいアプローチで幅広い人に見てもらうことを意識しています。住宅重視でと思った時期もあったんですが、やはり目指すところは十人十色よりは百人百様だなと。

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すき間時間をスマホで楽しませる
エンターテインメント精神

賃貸人口の多い日本だからこそ、手軽なところから深いところまで幅広く網羅するメディアがあっていいのでは、と村田さんは語ります。サイトを見ると「セリア」や「ダイソー」など、主婦に人気の100均ショップ関連のカテゴリが充実していることに気づきます。今や女性週刊誌や 生活実用情報誌の記事には欠かせないお店なのに、確かにほかの住宅・インテリア系メディアではあまり強調されない印象。一方でiemoは、ユーザーが何を求め、どんな情報を必要としてアクセスしているかを最大限に重視します。潜在的ニーズを引き出す仕掛けづくりに長けたスタンスは、母体であるDeNAが培ってきた事業の根幹とも繋がるようです。

DeNAは携帯ゲームによるエンターテインメントを提供してきた会社です。ユーザーさんが100円や300円をゲームに払ってくださるのは、すき間時間を楽しく過ごしたいという気持ちから。そのあり方をiemoに置き換えると、たとえば通勤時間に見つけた飾り棚のDIY記事を、帰り道にある100均ショップで3個アイテムを買って自宅でつくる楽しさになる。『ソシャゲが生み出したすき間時間のエンタメと同じ』なんですよね。

それだけに、立ち上げの条件にもあった「スマホで見る」ことは重要なポイントです。見せ方で最も意識しているのは、ビジュアルの多さとクオリティ。コーヒーを飲みながらインテリア雑誌を眺めている雰囲気を想定しています。きれいなビジュアルでまとめた身近さ溢れる記事や、ちょっと頑張れば手の届くセンスのいい提案を集め、自分の家を少しだけ変えられる、そんな小さな楽しみや喜びを毎日創出する。しかも、間口を広げながらも最終的には住宅の建築まできちんと辿り着くことができる。そんな縦にも横にも深みのあるコンテンツがめざすところなのです。

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一方、今後の課題を、偏りつつある記事テーマの平均化と、膨大な情報量の検索性や情報到達性の改善にあると分析。2016年は、サイト内にメディアの方向性を伝える空気感の醸成、ユーザビリティ強化やトレンドを踏まえたレコメンド機能対応など、今まで以上にユーザーが使いやすいサイトづくりとニーズに沿った記事提供をしていく予定です。

運営者が一番の読者だからこそわかること

週一度、企画会議に参加して方向性や企画内容を話し合うという村田さん。「最も人の性格が出る」ユーザー投稿記事の『いえれぽ』やビフォアアフターがわかる施工記事など、作り手や住み手のストーリーや想いが見える記事に力を入れていきたいのだとか。また、住宅関連メディアの送り手として、2015年に気になった住宅関連の動きも伺ってみました。

カスタマイズ賃貸の広がりとマスキングテープの進化ですね。手づくり雑貨的なDIYを超えた、賃貸でも壁紙をガッツリ変えるという事例が増えて驚きました。自分らしく住まう、自分がいいと思ったもので家を飾る行動や認識が一年で急速に定着した印象があります。それからマスキングテープの進化。iemoでは欠かせないツールですが、壁のアクセントにもなる高品質な商品が発売されるなど需要と供給がすごくマッチしている物のひとつだと思います。

村田さんは、運営者となった今も一番の読者です。丁寧な暮らしをしたいと思っても意識的になれなかった状況が大きく変化。手づくりのものが増え、ダイソーで買った雑貨などで子どもと一緒におもちゃづくりを楽しむ機会も加わったそうです。

記事に毎日触れていると身近になるから、やってみようかなという意識が生まれるんですよね。無印の歯ブラシスタンドの記事をクリップしてみたり、タオルの耳を揃える並べ方を試して美しさに満足したり。めちゃくちゃiemo生活してるんですよ(笑)

いち主婦の目線が生んだ暮らしと家のためのメディア。それは時代や女性のニーズとマッチし、今もユーザー数や投稿数を増やし続けています。柔らかで親近感あふれる形でiemoが伝えるのは、小さくとも家を楽しみ、自分なりに暮らしを充実させることの大切さなのです。

Text&Interview 木村早苗

iemo
http://iemo.jp/

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