緑豊富な周辺環境を取り込む日本建築の設え。
多彩な趣味の要素、カラフルな壁やタイルで彩りを添え、個性的な空間にコーディネート。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takeshi Kimura
長谷川さんの家
(東京都稲城市)
- 設計
- ニコ設計室
- 住人データ
-
豊さん(37歳)システムエンジニア、
頼子さん(35歳)システムエンジニア
緑地や竹林、ぶどう畑などに囲まれた高台にある土地に建つ、杉板張りの外壁の一戸建て。南側の屋根をはね上げ、竹林の風景に向かい大きく開き、2階をぐるりと縁側が取り囲む。設計を担当したニコ設計室の西久保毅人さんは話す。
緑豊かな周辺環境を、家の中からいかに感じられるかを考えて設計を進めました。2階の縁側やインナーテラスなど、屋外を取り込むような空間を随所に設けています
ほかにも、玄関と勝手口が向かい合う通り庭風の空間、2階の小上がりや全開口の窓など、内と外を曖昧につなぐ日本建築の設えを上手く取り入れたプランとなっている。
この家に住むのは長谷川豊さんと頼子さん。バイク、洋服、料理、ギター、ビリヤードなど、多彩な趣味をもつご夫婦だ。周辺の自然を取り込む日本家屋的な空間に、趣味の要素で華やかな彩りを添えている。
別荘やリゾートのような非日常的な風情をもち、開放感のある家に住みたいと思っていました。ガレージはバイク屋さん、クローゼットは洋服屋さんのようにしてほしいとお願いしたんです(頼子さん)
玄関を入ると左にガレージ、右に衣装室。頼子さんのイメージ通り、それぞれが独立したショップのような雰囲気だ。衣装室は入口にガラスの扉があり、壁・天井はムラ感のあるブルーで塗装され、S字を描くルーバーで寝室と仕切られている。2階は土間がキッチンまで続き、小上がりの杉フローリングの空間が広がる。床座りでくつろぐスタイルも、日本的な居心地の良さを感じさせる。
一方、水まわりのランタン型のタイルやカラフルな壁の色は、南米や中東などのエスニックな印象だ。
タイルはひと目で気に入って、同じシリーズを、キッチンと浴室に使っています。生活の中心となる2階の壁の色は、窓から見える竹林の景色に似合うものをセレクト。キッチン周辺の壁には、調理器具や食器などをオープンに収納したかったので、雑多なものとの相性の良さも重視しました(豊さん)
和風建築的な居心地と、多彩な色を使った多国籍風の仕上げは、一見異質なものに感じられる。しかし、共通して少しくすみのある色調でまとめられた空間はよく馴染み、個性的な世界観をつくりあげている。ともにプリミティブな魅力を引き出し合う、新鮮な組み合わせだ。
専門家プロフィール
1973年佐賀県生まれ。95年明治大学理工学部建築学科卒業(小林正美教授に師事)。97年 象設計集団、アトリエハルを経て、2001年 ニコ設計室設立。
ニコ設計室
- 住所
- 東京都杉並区上荻1・16・3森谷ビル5F
- TEL/FAX
- 03・3220・9337
- niko@niko-arch.com
- URL
- www.niko-arch.com
〈物件名〉長谷川さんの家〈所在地〉東京都稲城市〈居住者構成〉夫婦〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈建物規模〉地上2 階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉99.74㎡〈建築面積〉39.83㎡〈床面積〉1 階 38.22㎡、2 階 37.85㎡、ロフト 8.73㎡、合計 76.07㎡(ロフトは含まず)〈建蔽率〉39.93%(許容40%)〈容積率〉76.26%(許容80%)〈設計〉ニコ設計室〈施工〉仲野工務店〈構造設計〉筬島規行〈設計期間〉12 ヶ月〈工事期間〉7 ヶ月〈竣工〉2013 年〈総工費〉2,600 万円
※この記事はLiVES Vol.76に掲載されたものを転載しています。
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