小さなフィギュアのコレクターであるYさんは、機能的な収納スペースをつくることが必須条件だった。はたして、建築家が出した答えとは?
text_ Makiko Hoshino photograph_ Kai Nakamura
YT
(千葉県柏市)
- 設計
- スープ・デザイン
- 住人データ
- 夫(39歳)会社員、妻(38歳)主婦、長男(9歳)
幼稚園では昆虫、小学校では消しゴムやノートなどの文房具、中学校から音楽CDの収集にはまり出したというYさん。好きなモノをとことん集める性格は止まることなく、いつしか『スーパーマリオブラザーズ』などの「任天堂」のゲームキャラクターや水木しげるの妖怪のフィギュア、イタリア・フェレロ社の食玩『キンダーサプライズ』を買い求めることにのめり込んでいった。
小さくて精巧なものに魅力を感じるんです。子ども向けとは思えない高いデザイン性とクオリティはもちろんですが、開発の背景にあるストーリーにもひかれますね(Yさん)
説明書やケースなど、付随するアイテムも保管しているため、気づけばその量は膨大に。そのため、Yさんがマンションのリノベーションを考えたとき、これらをどうやって収納するかが重要課題となった。
既存の壁をすべて取り払い、大改造したY邸は、フラットな面で各部屋を箱状に囲ったシンプルな間取りが特徴的。すっきりと見える”面”には、あちこちに扉が備えられていて、開けると食器棚やクローゼット、洗濯機などが現れる仕掛けだ。また、部屋が散らかっても逆にそれが味になるようにしたいと願ったYさんの要望を受け、間仕切りに使ったシナ合板にブラウン、壁にグレーの塗料をペイント。ベースにくすんだ色を使うことで、こなれた雰囲気が出るようにした。
暮らしのなかでストレスが生まれないよう、主要スペースである玄関、リビング、キッチンはぐるりと一周できるように設計した。さらに、
持ち物を1ケ所にため込むのではなく、生活動線上に複数の収納スペースをつくることで、コレクションを自然と手に取れるようにしました(土井さん)
と、〝分散型収納〞を計画。かくして宝物を収めるスペースは、行き来の多い動線上に2つ確保された。
居室側の廊下はオープンな棚、水まわり側の廊下は引き出し収納と異なるタイプにして、ジャンル別に分類できるようにした。アクリル製の引き出しは合計8個用意。木製の引き出しとサイズを合わせているので、気分に合わせて好きな位置に移動することができ、飾りながらしまえるメリットも加えた。
出し入れがとても楽で、ディスプレイを楽しめるようになり、ますます趣味が充実しています(Yさん)
専門家プロフィール
1973年大阪府生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、東京工業大学理工学研究科建築学修了。99年スープ・デザイン共同設立。2011年東北アーカイブ共同設立。建築・インテリア・家具の設計を手掛けている。
スープ・デザイン
- 住所
- 東京都渋谷区代々木5・37・11・102
- TEL
- 03・6407・9758
- contact@soupdesign.jp
- URL
- soupdesign.jp
〈物件名〉YT〈所在地〉千葉県柏市〈居住者構成〉夫婦+ 子供1 人〈建物規模〉地上15 階建て(6 階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1998 年〈専有面積〉86.10㎡〈バルコニー面積〉22.35㎡〈設計〉スープ・デザイン〈施工〉トヨダ建設、はやの意匠〈設計期間〉4 ヶ月(解体工事・調査期間を含む)〈工事期間〉3 ヶ月〈竣工〉2013 年〈総工費〉約1,200 万円
※この記事はLiVES Vol.78に掲載されたものを転載しています。
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