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記事作成・更新日: 2016年 5月19日

“分散型収納”で叶えた
フィギュアを満喫できる家

YT

小さなフィギュアのコレクターであるYさんは、機能的な収納スペースをつくることが必須条件だった。はたして、建築家が出した答えとは?

text_ Makiko Hoshino photograph_ Kai Nakamura

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惚れ込んだモノの“収集”に夢中なご主人。子どもの頃は憧れの文房具を買いに、遠くの街まで自転車を走らせていたそう。オークの床とブラウンに塗装したシナ合板の壁が落ち着いたムードを漂わせるリビングダイニング。上部は少しだけ開放して、各部屋とのつながりをもたせている。

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(千葉県柏市)

設計
スープ・デザイン
住人データ
夫(39歳)会社員、妻(38歳)主婦、長男(9歳)

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奥行きのある玄関土間が伸びやかな印象を与える。たっぷり収納できるよう天井近くまでつくった棚は、側面にダボ穴をあけて後で高さを変えられるようにしている。

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廊下に全面引き出しの収納を設置。奥行きを30cm と浅めにして、取り出しやすさに配慮。

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アクリルの引き出しには小さなフィギュアを愛敬たっぷりにディスプレイしている。

幼稚園では昆虫、小学校では消しゴムやノートなどの文房具、中学校から音楽CDの収集にはまり出したというYさん。好きなモノをとことん集める性格は止まることなく、いつしか『スーパーマリオブラザーズ』などの「任天堂」のゲームキャラクターや水木しげるの妖怪のフィギュア、イタリア・フェレロ社の食玩『キンダーサプライズ』を買い求めることにのめり込んでいった。

小さくて精巧なものに魅力を感じるんです。子ども向けとは思えない高いデザイン性とクオリティはもちろんですが、開発の背景にあるストーリーにもひかれますね(Yさん)

説明書やケースなど、付随するアイテムも保管しているため、気づけばその量は膨大に。そのため、Yさんがマンションのリノベーションを考えたとき、これらをどうやって収納するかが重要課題となった。

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テレビボードの棚には1980 年代に流行った「ゲームウォッチ」や「ニンテンドー3DS」などのゲーム機が並ぶ。

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玄関には「任天堂」で敬愛するゲームクリエイター、横井軍平が発案した「バーチャルボーイ」をディスプレイ。

既存の壁をすべて取り払い、大改造したY邸は、フラットな面で各部屋を箱状に囲ったシンプルな間取りが特徴的。すっきりと見える”面”には、あちこちに扉が備えられていて、開けると食器棚やクローゼット、洗濯機などが現れる仕掛けだ。また、部屋が散らかっても逆にそれが味になるようにしたいと願ったYさんの要望を受け、間仕切りに使ったシナ合板にブラウン、壁にグレーの塗料をペイント。ベースにくすんだ色を使うことで、こなれた雰囲気が出るようにした。

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2 つの玄関を土間で結び、LDK まで回遊できる間取りに。使う場所に収納をつくるのが土井さんのポリシーで玄関にはコート類をしまうクローゼットがある。

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玄関土間の棚に飾った『ゲゲゲの鬼太郎』のフィギュア。気まぐれで入れ替えるのも楽しいひととき。説明書を収めたファイルや資料本なども一緒に並べている。

暮らしのなかでストレスが生まれないよう、主要スペースである玄関、リビング、キッチンはぐるりと一周できるように設計した。さらに、

持ち物を1ケ所にため込むのではなく、生活動線上に複数の収納スペースをつくることで、コレクションを自然と手に取れるようにしました(土井さん)

と、〝分散型収納〞を計画。かくして宝物を収めるスペースは、行き来の多い動線上に2つ確保された。

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間仕切りに強化ガラスを使い、光が入るようにした書斎。木製ブラインドを取り付け、目隠しも可能。奥の引き出しは廊下からも書斎からも開けられて機能的。

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幅3.6 メートルもある料理好きな奥さまのためのキッチン。壁は構造材をむき出しにしてラフな雰囲気に。森の木々を思わせる照明は「H.P.DECO」で購入。

居室側の廊下はオープンな棚、水まわり側の廊下は引き出し収納と異なるタイプにして、ジャンル別に分類できるようにした。アクリル製の引き出しは合計8個用意。木製の引き出しとサイズを合わせているので、気分に合わせて好きな位置に移動することができ、飾りながらしまえるメリットも加えた。

出し入れがとても楽で、ディスプレイを楽しめるようになり、ますます趣味が充実しています(Yさん)

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晴れた日に筑波山が見える眺望を取り込むため、LDK を横長に配置。

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9 歳になる長男の部屋。壁にイエローの黒板塗料を塗り、明るいムードに。

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Before

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After


〈物件名〉YT〈所在地〉千葉県柏市〈居住者構成〉夫婦+ 子供1 人〈建物規模〉地上15 階建て(6 階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1998 年〈専有面積〉86.10㎡〈バルコニー面積〉22.35㎡〈設計〉スープ・デザイン〈施工〉トヨダ建設、はやの意匠〈設計期間〉4 ヶ月(解体工事・調査期間を含む)〈工事期間〉3 ヶ月〈竣工〉2013 年〈総工費〉約1,200 万円


※この記事はLiVES Vol.78に掲載されたものを転載しています。

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