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ぼくらが小屋をつくる理由
2016年 6月 7日

森林を守りながら、魅力的な暮らしをつくる。家具と建築の間の小屋「箱の間」(三菱地所レジデンスがつくる小屋)

ぼくらが小屋をつくる理由

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写真左:三菱地所 環境・CSR推進部の見立坂大輔さん、写真右:三菱地所レジデンス 商品企画部の岡崎新太郎さん、写真中央:澤野由佳さん

三菱地所レジデンスの「箱の間」は、住まいに新たな空間をつくる部屋の中の小屋。CSR活動から誕生したという同製品について、三菱地所 環境・CSR推進部の見立坂大輔さん、三菱地所レジデンス 商品企画部の岡崎新太郎さん、澤野由佳さんにお話を伺いました。

都市と農山村をつなぐCSR活動からうまれた
「箱の間」

企業が利益とは別の形で社会還元を行うCSR活動は、日本でも広く普及しつつあります。同社で2008年に始まった「空と土プロジェクト」もそのひとつ。社員による農地再生や積極的な地域資源の活用によりサスティナブルな環境づくりを目指すというものです。担当の見立坂さんは次のように語ります。

山梨県北杜市の限界集落の棚田整地など農業体験がおもな活動です。現在では純米酒の製造が行えるほどに再生でき、次に着目したのが森林資源の活用でした。県と協定を結び戸建の注文住宅事業に木材を利用してはいますが、当社の中心はマンション分譲事業。そちらでも国産材を活用できないかと考えたのが『箱の間』の大元でした

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実際に、同社の新築分譲マンション「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」では共用部に国産木材をふんだんに活用しています。また、「ザ・パークハウス 大宮」等では、管理された森林の木材であることを証明するFSC認証材を住戸内の二重床下地合板に採用しており、世界の森林問題に対応すべく、木材のトレーサビリティを高める活動も並行して進んでいました。商品企画担当の岡崎さんは、その後の展開をこう説明してくれました。

二重床への活用も広めていきたいのですが、下地材なので人の目に触れないんです。だからもっと目に見える物をつくり、木の良さを伝えてファンを増やしたいねと。ただ今のマンションはプリントしたシートを貼ったフローリングも増えており、そこに無理に無垢材を組み込むのは現実的ではありません。それなら、木の良さを活かして暮らしをより魅力的にするものをつくればいいのではと考えたのです

居心地よい空間づくりのための
「家具と建築の間」

目指したのは、住まいに「新たな居心地のよい場所をつくる」、「住む人の暮らしに沿った間取りにできる」、「家具と建築の間」の存在です。デザインは、プロダクトデザイナーの小泉誠さんに依頼。ご本人を北杜市に招き、森林管理や製材所のメンバーとともにプロジェクトの経緯や考え、「箱の間」の狙いや機能などを説明したそうです。

小泉さんはコップのような商品から建物まで幅広く扱われているので、家具と建築の間という考えも理解していただきやすいのでは、と。コミュニケーションが取りやすい距離感と落ち着ける籠もり感、人と人が居心地の良いデザインにしてほしいとお伝えしました(岡崎)

小泉さんからは10種類の提案があったそう。そのうち趣味空間(B)とコミュニケーション空間(A&C)の原案である2つが選ばれ、ブラッシュアップが行われました。

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プランB 印象が異なるように見えるが箱自体はA~Cとも同サイズ(H1600×W1735×D755mm)。また本体(杉)、テーブル(栗)などの基本素材も共通だ。

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プランA

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プランC

プランAは、例えば子ども1人と大人2人が入れる畳2帖ほどの空間です。シンプルな形にすることで住まい手1人1人の好みに合わせてアレンジしやすく、、万人に受け入れられやすい商品になった気がします(岡崎)

また検討の際、特に時間をかけたのがサイズ設定。高さもモックアップでは畳一帖分の1.8mを想定していましたが、マンションの梁下では圧迫感が出るため1.6mに圧縮。今もミリ単位の短縮をすべく工夫を続けています。

この寸法は利用シーンを元に考えました。まず、机で宿題をする子どもと横で見守る大人、別の作業をする大人の3人用を想定。それぞれが居心地よく寛げる空間です。次は箱の中で会話する夫婦やカップル用。2人の距離やお酒を呑む時によい距離を探しました。3つめは趣味などで籠もる1人用。ちょうど良い籠もり感や楽しみ方を考えました(岡崎)

幅広い好みやアイデア、使い方にフィットするようユニットは共通に。塗装やインテリア雑貨でどんな印象にも変えることができます。

さらに置き方もバリエーション多彩。子どもが小さい時は親と同じ空間にいることを前提とした置き方、小学生になればダイニングでの勉強する場所を疑似的に実現。家族の成長に合わせて、ワークスペースにするなどライフスタイルの変化に合わせることで、子どもから孫世代までの利用が可能です。

さまざまな人の思いや行動を受け止め、長く使われる存在になってほしいと思います。『箱の間』に利用した木材は成長に約50年かかっているそうです。そう考えると、すぐ捨てるようなものはつくれません。むしろ成長の時間と同じだけ使える物でなくては。だからこそ変化に対応でき、多世代に渡って使えるデザインを追い求めたのです(岡崎)

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「いろんな暮らし方にあわせていろんな場所で使ってもらえれば」と岡崎さん。

素材と居心地へのこだわり

そして「木のファンを増やしたい」という想いで素材が選ばれています。

人に触れる部分は柔らかさとさらさら感のある杉にしました。空気が多く含まれていて軽いので断熱効果が高く、温度も一定なので感触が穏やかなんです。逆に傷がつきやすいテーブルは少し固い栗にしました(岡崎)

またプランCの小窓のように遊び心があるのもポイントです。こちらは小泉さんのアイデアで、向こう側にキッチンがあった場合を想定し、ワインボトルも通る高さにしているのだそう。意識せずとも見える距離感、いい意味での曖昧な空間性が「箱の間」の良さとも言えそうです。

…とはいえ、まだ完成ではありません。

販売開始までにもう少し工夫が必要だと思っています。背面の遊びや板の厚みの調整などはもう少し詰めたいですね。悩みどころは多いですが、そういう時はなぜかその分野のエキスパートにつないでくれるメンバーが現れるんです。ありがたいですね。興味を持って協力してくれる人が集まってきて楽しいですよ(岡崎)

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またマンション向けだけにユーザー調査も欠かせません。現在はマンションギャラリーに置いてマンション購入検討者へのアンケートを実施中。先日のお披露目会では「オフィスに入れたい」、「クリニックにも使えるのでは?」という新たな意見も集まっており、より幅広い活用も見込めそうだとのこと。加えて、今後はマンション居住者向けのモニター調査も行う予定です。

独りよがりな商品にしないための調査です。リノベーション物件にも実際に置いてみたいですね。72㎡・3LDKといった間取りでの配置を想定してきましたが、スケルトン状態でどう活躍できるか見てみたいんです(岡崎)

国内の森林の未来を担う
美しく楽しい存在として

国内の森林は伐採できる時期にありますが、輸入木材が優先され、活用しきれていない状況はいまだ変わりません。この事実を伝え、国産材の利用を促すためにもプロジェクトは継続したいですね。都市から農山村に資金が回れば経済的にもサスティナブルな形が生まれますし、ひいては日本から世界へと問題意識が広がるきっかけにもなるでしょうから(見立坂)

お話からは、土地・不動産のプロとして見逃せない問題に対峙する真摯さが伝わります。でもその解決策となったのが、楽しさに溢れたプロダクトなのだから面白いものです。

当社も以前はそうでしたが、CSR活動を事業にどうつなげるかは各社とも悩みどころなんです。楽しくないと長く続けられませんしね。そう考えると、住宅事業の中で、住宅の価値向上と環境とCSR活動を結ぶことができたので、いい仕事になったと思います(見立坂)

人と人の距離を変え、ゆるやかな繋がりを残しながらも、好きな時に好きなことを思い切り打ち込める空間。「箱の間」は、社会問題への取り組みと企業が有する技術や経験値がバランスよく合致した幸せな商品と言えそうです。

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Text 木村早苗
Photo 生熊友博(ikumaction)

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