「築70年くらいの母家に住めますか?」
というクライアントの問い合わせがありました。
話を聞くと、本家で親戚も集まるからできるなら壊したくないという。
以前、築150年を超える古民家を秋田でリノベーションした経験から、
「出来ます。」
と即答しプロジェクトが始まりました。
玄関正面の仏間には一切手を入れず、隣の続き間を大きなワンルームに変えてLDKに、寝室をその上にして吹抜けを介してリビングと繋がるようにしました。
吹抜けには新しい梁を入れて水平ブレースで補強し、鉛直方向の壁は外壁側の壁には手を入れず、内側の壁を構造用合板で固めようにしました。
真壁の古い箱の中に大壁の新しい部屋が納まっているイメージです。
現代の新しい生活とこれまでバトンを繋いできた築120年の母家が共存する新しい時代のリノベーションが出来ました。
設計担当:納谷学、太田愉、塚越祐介
構造設計:長坂設計工舎 長坂健太郎
施工会社:小池工務店 浦口雄一郎
構 造:木造在来工法
延床面積:208.41㎡(63.04坪)
1階床面積:155.46㎡(47.02坪)
2階床面積:52.95㎡(16.02坪)
受賞歴:住まいの環境デザイン・アワード2011 住空間デザイン優秀賞
掲載誌:
『婦人画報2011年12月号』
『住宅リノベーション入門』
『TWELEVE HOUSES RESTORED IN JAPAN AND ITALY』
『日経アーキテクチュア2011年5月10日号』
『Casa BRUTUS 2011年2月号』
『新建築 住宅特集2011年6月号』
①減築
2階の使わない部屋の床を抜いて吹抜けを造りました。
②一つにまとまった大きなLDK
北側にあったキッチンを大きなLDKとして一つの部屋にまとめました。
③入れ子構造
内側に大壁にした新しい生活のための部屋、その外側は昔ながらの真壁の空間が囲う入れ子構造になっています。
築70年の古民家を全部変えてしまっては、その名残りを感じることもできません。
外壁は補修したり以前の仕上げに準じて直したり、玄関とその正面にある仏間は、畳と障子紙を張り替えるだけで、以前のままの受け継いできた空間を守りました。
その代わり、それ以外の空間は大きく間取りを変え、必要のない部屋を減築して、現代の新しい生活のための空間を提供しました。
100歳になるおばあちゃんの為に手すりを付けたいという話が出ました。ただ住宅の中に手摺があると病院のようになってしまいます。
そこで、家具の引き手を太くして手摺としても使えるように提案して、みんなが笑顔になりました。
リノベーションは、新築と比べると安価に新しい生活スタイルを手に入れることができます。ただそこで、何を残して何を捨てるかが大きな判断になります。
せっかく元の家をリノベーションするなら、新しいものと古いものが共存する新しいスタイルの生活を楽しんでほしいと思います。
最近、ヨーロッパでは古い車を改造して、電気自動車に改造する会社が人気を得ているそうです。
「綾瀬の住宅」は断熱施し、構造を補強して今の生活から未来に合わせた新しい生活のスタイルを勝ち得ました。
太田諭(スタッフ)
塚越祐介(元スタッフ)
長坂設計工舎 長坂健太郎
小池工務店 浦口雄一郎