実家リノベか、庭先の工場を建て替えて住むかで迷っていたO さんご夫妻。建築家が提案したのは、工場の開放的な構造と古さを活かしたリノベーション。
text_ Hiroko Akamatsu photograph_ Takashi Daibo
京丹後のリノベーション
(京都府京丹後市)
- 設計
- ARCHIXXX 眞野サトル建築デザイン室
- 住人データ
- 夫(37歳)会社員、妻(36歳)会社員、長女(10歳)、次女(7歳)
都北部の丹後地方は、丹後ちりめんの織物が特産で、繊維業が盛えた。O さんのご両親も約50年前に家の横に機織り工場を建て、飛行機や車のシートの生地などを生産していたという。5年前に廃業した後は、工場は物置きとなっていた。
一方、Oさんは高校を卒業後、大阪で就職し、同郷の奥さまと結婚。2人のお子さまをもうけ、自然豊かな環境で子育てしたいと、30歳で実家に戻り、ご両親と暮らし始めた。
同居して5年が過ぎた頃、2世帯住宅への実家リフォームか、工場を撤去して戸建てを構えるかを検討。相談したのは、家づくりのイベントで出会った建築家の眞野サトルさんだ。ところが眞野さんは、
調査のために現場を見たとき、純日本家屋の実家を改装するより、庭先で倉庫になっていた工場をリノベーションしたほうが、絶対に面白い家になると直感しました
機織りの作業や製品の移動がしやすいように、工場内部は壁や柱がほとんどない構造。その分、屋根の特殊な組み方で建物の強度を保っていた。堂々とした小屋裏、大きく取られた窓、年月を経た内装の土壁など、眞野さんにはすべてが魅力的だった。
眞野さんの提案を受け、Oさんご夫妻も工場リノベーションに賛同。荷物を撤去し、汚れを払うと、土壁や木の質感があたたかな、大らかな空間が現れた。内部には重機を吊るすための無骨な鉄骨のフレームがあったが、それも黒くペイントして設計に活かすことにした。
実家と向かい合う大きな窓の外には、市松模様にポリカーボネートの囲いを配し、プライバシーを守りつつ柔らかく光を採り込んだ。鉄骨のフレームはロフトを支える構造として活用し、その下に土間のダイニングを配置。一段高くしたリビングにはフローリングを張って、空間にメリハリをつけている。
人とは違った家に住みたかったので、デザインを見てすぐに気に入りました。室内の黒い鉄骨や、市松模様の外観、小上がりのリビングなど、とにかくインパクトがあって格好良いなって。取り壊すしかないと思っていた古い機織り工場が、個性的で味わいのある住まいに生まれ変わって本当に驚きです(ご主人)
ご両親が働いていた頃の思い出を留めた家で、隣に住む両親に見守られながら生活できることに、言い知れぬ心地よさを感じている。
専門家プロフィール
1971年 大阪府生まれ。89年 大阪市立東高等学校卒業。91年 中央工学校大阪建築室内設計科卒業。同年 共同設計株式会社入社。2002年 ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室設立。
1977年 奈良県生まれ。2001年 神戸大学工学部建設学科卒業。同年 共同設計株式会社入所。10年 眞野サトル建築デザイン室入所。
ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室 大阪事務所
- 住所
- 大阪府大阪市北区南森町2・4・34
- TEL
- 06・6364・5640
- FAX
- 06・6364・5641
- office@archixxx.jp
- URL
- www.archixxx.jp
〈物件名〉京丹後のリノベーション〈所在地〉京都府京丹後市〈居住者構成〉夫婦+ 子供2人〈用途地域〉無し〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉200.00㎡〈建築面積〉97.00㎡〈床面積〉91.73㎡〈建蔽率〉48.50%(許容60%)〈容積率〉45.87%(許容200%)〈設計〉眞野サトル+ 森口美由起/ ARCHIXXX 眞野サトル建築デザイン室〈施工〉坂根工務店〈設計期間〉10ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉1,700万円
※この記事はLiVES Vol.79に掲載されたものを転載しています。
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