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記事作成・更新日: 2016年10月 4日

築50年の機織り工場が、開放的で味わいのある住空間に大変身

京丹後のリノベーション

実家リノベか、庭先の工場を建て替えて住むかで迷っていたO さんご夫妻。建築家が提案したのは、工場の開放的な構造と古さを活かしたリノベーション。

text_ Hiroko Akamatsu photograph_ Takashi Daibo

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迫力のある小屋裏の木組みを現して、吹き抜けにしたLDK。既存の鉄骨を活かして、ダイニングの上にロフトをつくった。ロフトは子どもたちの格好の遊び場だ。

京丹後のリノベーション

(京都府京丹後市)

設計
ARCHIXXX 眞野サトル建築デザイン室
住人データ
夫(37歳)会社員、妻(36歳)会社員、長女(10歳)、次女(7歳)

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開口率が50%になるように、外壁の前に市松状の壁を立てた。外部からの視線をポリカーボネートで程よく遮りながら、拡散された柔らかな光を室内に取り入れる。

都北部の丹後地方は、丹後ちりめんの織物が特産で、繊維業が盛えた。O さんのご両親も約50年前に家の横に機織り工場を建て、飛行機や車のシートの生地などを生産していたという。5年前に廃業した後は、工場は物置きとなっていた。
一方、Oさんは高校を卒業後、大阪で就職し、同郷の奥さまと結婚。2人のお子さまをもうけ、自然豊かな環境で子育てしたいと、30歳で実家に戻り、ご両親と暮らし始めた。

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建物から突き出した、小屋のような玄関ポーチ。

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窓の向こうに市松模様の壁が広がり、インテリアとしても楽しめる。向かいにチラリと見える建物が実家。

同居して5年が過ぎた頃、2世帯住宅への実家リフォームか、工場を撤去して戸建てを構えるかを検討。相談したのは、家づくりのイベントで出会った建築家の眞野サトルさんだ。ところが眞野さんは、

調査のために現場を見たとき、純日本家屋の実家を改装するより、庭先で倉庫になっていた工場をリノベーションしたほうが、絶対に面白い家になると直感しました

機織りの作業や製品の移動がしやすいように、工場内部は壁や柱がほとんどない構造。その分、屋根の特殊な組み方で建物の強度を保っていた。堂々とした小屋裏、大きく取られた窓、年月を経た内装の土壁など、眞野さんにはすべてが魅力的だった。

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ダイニングと細長いカウンタースペースは、ポリカーボネートの引き戸で光を通しながら仕切ることが可能。奥はユーティリティと寝室。

眞野さんの提案を受け、Oさんご夫妻も工場リノベーションに賛同。荷物を撤去し、汚れを払うと、土壁や木の質感があたたかな、大らかな空間が現れた。内部には重機を吊るすための無骨な鉄骨のフレームがあったが、それも黒くペイントして設計に活かすことにした。

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鉄骨の枠の下にダイニングとキッチンが収まる。鉄骨と土間の硬質な質感に対比させ、リビングは温もりのあるフローリングに。

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LDK の周囲を囲むように、カウンターや水まわり、寝室を配置。寝室には2方向に引き戸があり、リビングにも直接出られる。

実家と向かい合う大きな窓の外には、市松模様にポリカーボネートの囲いを配し、プライバシーを守りつつ柔らかく光を採り込んだ。鉄骨のフレームはロフトを支える構造として活用し、その下に土間のダイニングを配置。一段高くしたリビングにはフローリングを張って、空間にメリハリをつけている。

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年月を経て崩れやすい土壁は上部だけ現して、体が触れやすい下部の壁にはシナ合板を張った。

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玄関の飾り棚は、ご主人がDIY で製作。家具に合わせてシンプルなデザインに仕上げた。

人とは違った家に住みたかったので、デザインを見てすぐに気に入りました。室内の黒い鉄骨や、市松模様の外観、小上がりのリビングなど、とにかくインパクトがあって格好良いなって。取り壊すしかないと思っていた古い機織り工場が、個性的で味わいのある住まいに生まれ変わって本当に驚きです(ご主人)

ご両親が働いていた頃の思い出を留めた家で、隣に住む両親に見守られながら生活できることに、言い知れぬ心地よさを感じている。

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シナ合板と白い設備でまとめたサニタリー。日当たりが良く、実際より広く感じられる。長めに設けた洗面カウンターは、アイロン掛けなど家事の作業台として活躍。

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ロフトは収納や物干し、子どもの遊び場など、フレキシブルに使える空間。

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「寝室がリビングにもユーティリティにもつながっていて便利」と奥さま。

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Before

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After


〈物件名〉京丹後のリノベーション〈所在地〉京都府京丹後市〈居住者構成〉夫婦+ 子供2人〈用途地域〉無し〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉200.00㎡〈建築面積〉97.00㎡〈床面積〉91.73㎡〈建蔽率〉48.50%(許容60%)〈容積率〉45.87%(許容200%)〈設計〉眞野サトル+ 森口美由起/ ARCHIXXX 眞野サトル建築デザイン室〈施工〉坂根工務店〈設計期間〉10ヶ月〈工事期間〉4ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉1,700万円


※この記事はLiVES Vol.79に掲載されたものを転載しています。

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