電気・ガス・水道は生活に必須の生命線。中でも電力がないと、私たちの生活はとても不便になってしまいます。とはいえ、毎月の電気代は馬鹿になりません。月々の電気代がかからない暮らしができれば、家計も少し楽になりそうです。
また、3.11後の原発事故以来、電気に頼らずに暮らしをつくろうとする人も増えています。そこで注目されているのが「オフグリットハウス」なのです。
うまく使えば電気代は月1000円以下にも
オフグリッドハウスの「グリッド」とは電力会社の送電網のこと、オフグリッドとは、この送電網から離れた状態のことを指します。
つまり、オフグリッドハウスとは、自家発電を行い、電力会社からの送電を受けずに、電気を自給自足できる家のこと。電力自由化が早かったアメリカにルーツを持つオフグリッドハウスは、東日本大震災により起こった防災意識の高まりによって、日本での需要が高まりました。
オフグリッドハウスは発電設備を備えるだけでなく、光熱費を減らすために日当たりを良くする工夫がされていたり、熱効率を高める設計がされている場合もあります。
太陽光発電やガス発電などの「発電技術」と、電気を蓄える「蓄電技術」が発達したおかげで、電気の自給自足は容易になりました。部分的に発電をしながらも、いざという時のために電力会社からの送電を断っていない、「半オフグリッドハウス」で暮らす人のなかには、家庭で使う電気を減らし、自家発電をすることで、月の電気代が1000円以下になっている人もいます。
ちなみに東南アジアの国々では、送電網の整備が進んでいない地域があったり、送電網があってもたびたび停電することがあるそうです。そのため、屋根にソーラーパネルを設置したり、貯水タンクを設置して温水をつくるなど「半オフグリッド」の暮らしをしている人が多いと聞きます。
オフグリッドには太陽光発電がおすすめ。その理由とは?
もしご自宅をオフグリッドハウスにするのなら、太陽光発電が選択肢として一番現実的です。それは、家庭への導入が簡単で、安定した電力を生み出せる発電方法だから。パネル1枚から取り付けることができ、目的と予算に合った利用ができるのも人気の理由です。
太陽光パネルを家に取り付けるなら、施工を業者さんに依頼して太陽光パネルや充電池、送電線も購入しなければいけません。発電量や施工業者によって費用は左右されますが、最低でも150万円は用意しておいたほうが良いでしょう。
太陽光パネルはシャープや三菱電機、パナソニックなど、大手企業を中心に様々なメーカーから販売されています。耐久度や発電効率、耐用年数など様々な選択肢がありますので、施工する際にどのメーカー製品を選べば良いか、業者さんに相談してみましょう。
ちなみに、国税局が定める太陽光パネルの法定耐用年数は17年。実際には20〜30年の使用が可能だと言われています。古くなったパネルは発電効率も下がるので、耐用年数を過ぎたパネルは交換が必要です。
費用を押さえたいなら自作(DIY)も可能です
大きな費用をかけずにオフグリッド生活をはじめたい、という方にはDIYがおすすめ。太陽光パネルの価格は、発電量100wのパネルが約5万円(購入する場所や性能により前後します)。これに蓄電用のバッテリーや、送電ケーブルをつければ自家発電が可能です。将来的に自家発電を本格的に始める前にテスト感覚で使ってみても良いでしょう。
設置する場所はベランダや庭などの日当たりの良い場所を選べば、晴れている日には携帯電話やパソコンの電源として1日中使っても余るほどの電気を発電できるそうです。
業者さんに頼むよりも安価にはじめられるオフグリッドのDIYですが、送電線の工事の際には第2種電気工事士以上の免許が必要で、面倒な手続きも必要になります。屋根全体に太陽光パネルに設置する場合などは、業者さんに頼んだほうが安全で、時間も手間もかからない場合が多いそうです。
現実的に考えると「半オフグリッド」がベスト?
オフグリッドハウスに住む人は、電力会社からの送電を完全に絶っている「完全オフグリッド生活」を選ぶ人もいれば、部分的に発電を行い「半オフグリッド生活」を選ぶ人もいます。
両者の違いは、電力会社からの送電を止めているか、そうでないか。オフグリッドハウスの電力源として選ばれることが多い太陽光発電は、天候で発電量が左右されてしまいます。梅雨の間や曇りが続くと全く発電ができないので、完全オフグリッドの場合、その間は冷蔵庫もパソコンも使うことができません。
半オフグリッドでは、自家発電をして日々使う電気をつくりながら、足りない分は電力会社から購入することができます。
半オフグリッドの場合、電力会社の基本料金がかかってしまいますが、電力市場が自由化されたことで料金やプランが選びやすくなっているため、自身に適した電力会社との付き合いがしやすくなっています。
都市部で、日々の生活に十分な電力を発電するために必要な費用は、太陽光パネルや充電池、施工費などを合わせて200〜400万円ほど。最初に費用はかかってしまいますが、20年は電気代が減らせたり、災害時の電力寸断を防げると考えれば、安い買い物かもしれません。
私たちの生活に電気は欠かせないもの。今までは電気は「買うもの」でした、しかし今では「自分でつくれるもの」に変化しています。毎日使うものだからこそ、自分でつくる選択肢を選んでみませんか?
Text 鈴木雅矩
ライタープロフィール
ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。