多くの人が憧れる夢のマイホーム。しかし、諸々の事情で狭い土地しか手に入らなかったとしたら、あなたはどうしますか?
以前ご紹介した狭小住宅という手もありますが、実は他にもよく使われる手があります。それが今回ご紹介するスキップフロアの家です。
スキップフロアとは、「家全体がワンルームのようになった家」
スキップフロアとは建築方法のひとつで、家全体の空間がつながり、大きなワンルームのようになった家です。通常の家は1階⇒2階⇒3階と階層をつくり、階段でその間をつなげていきます。一方スキップフロアは1階⇒中2階⇒2階⇒中3階⇒3階と段を設けて、家全体の空間がゆるやかにつながっています。
スキップフロアの家は口で説明するより実際に目で見ていただいた方が早いでしょう。ということで、スキップフロアの家を見ていただきましょう。
この家ではリビングからつながる中2階をつくり、畳2畳ほどのスペースを設けています。家の手前から奥にかけて抜け感があり、吹き抜けの天井も高くて気持ちの良い空間ですね。
この家のように、スキップフロアの家は開放感のある空間が特徴。上下に空間をつくることができるため、デッドスペースを減らして限られた敷地を有効に活用することができる建築方法なのです。
上下に広がる空間が書斎やガレージにも!?スキップフロアの家のメリット
先ほどご紹介した家のように、スキップフロアの家は床の高低差である程度視線を区切ることができるので、仕切りや壁を少なくすることができます。そのため、視線を遮る物も少なく、実際の敷地面積よりも広い住空間を演出できます。
上下に広げた空間は使い道もさまざま。ウォークインクローゼットや書斎、子どもの部屋として使用している家もあるそうです。もちろんトイレやお風呂場、寝室などのプライバシーを保ちたい空間は壁で区切ることもできます。
スキップフロアの家は壁が少ないため空気の通りもよく、日当たりが良くなることもメリットのひとつ。窓から入ってくる風や光を遮るものがないので、想像以上に心地よい住空間が確保できるはずです。
空間がほぼひとつにまとまっているので、家族と顔を合わせる機会も多くなり、会話やコミュニケーションが増えることもスキップフロアの家ならではのメリット。ご家族の生活音や声が聞こえてくるため気配を感じることができ、小さいお子さんがいても安心です。
ちょっと変わったメリットとしては、傾斜地などに向いていることも挙げられます。傾いた土地に合わせて半地下をつくれば、その分居住空間を広げることができるのです。お父さん憧れの書斎やガレージも実現可能かもしれません。
建築・ランニングコストは少々割高に。スキップフロアの家のデメリット
スキップフロアは一般的な家とは違う設計なので、一般的に施工が難しいと言われています。材料も設計に合わせ特殊な寸法のものを使うことがあり、その分一般的な住宅よりも建築コストがかかるのが特徴。複雑な空間をつくるため設計士も優秀な人物を見つけなければいけません。
広々とした空間ゆえに光熱費がかかるのも特徴で、冬場は部屋単位で暖房することができないので、家全体を温めないといけません。部屋が暖かくなるまでに時間がかかり、ランニングコストもかかってしまいます。このデメリットを避けるには、床暖房が有効ですがその分建設コストがかかってしまいます。
壁が少ないため、遮音性やプライバシー性が低いこともデメリットのひとつ。お子さんが年頃に育った時や来客のことを考え、スキップフロアの家を建てる時には壁で区切ったプライベートを確保できる空間をつくっても良いかもしれません。
ほかには、一般的な家よりも床面積が増えてしまうため固定資産税も高くなりがちなこと。構造上エレベーターが設置しづらいため、昇り降りは自らの足で行わなくてはならず、バリアフリーは実現しづらいというデメリットもあります。年をとって足腰が弱くなったときや、怪我をしてしまったときには多少の不便を感じるかもしれません。
もし二世帯住宅などでスキップフロアの家を建てる時は、ご両親が年をとった時のために、バリアフリーのフロアを用意しておくなどの工夫が必要になるでしょう。
これらのデメリットを避けるために、リビングなど部分的にスキップフロアを導入して、寝室や子ども部屋、客室などを壁で仕切ってしまう方法も考えられます。いずれにしても、ご家族が心地よい空間をつくるために、設計士と綿密な打ち合わせが必要になるでしょう。
少々割高、けれど魅力的なスキップフロアの家
スキップフロアの家は、広々とした空間を実現でき、風通しや日当たりがよいメリットがある一方で、建築コストやランニングコストが多くなってしまいます。しかし、リノベーションであれば1000〜2000万円で手にすることができるそうです。
少々費用はかかるけれど、書斎や吹き抜けなど憧れの空間を手に入れることができるスキップフロアの家に、ご興味があれば設計士の方に相談してみましょう。設計士は、きっとあなたの理想と現実をすり合わせて、お気に入りの家をつくってくれるはずです。
Text 鈴木雅矩
ライタープロフィール
ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。