旅先でホテルに泊まる人は多いと思いますが、最近では若い世代を中心にゲストハウスに泊まる人が増えています。
ゲストハウスとは素泊まりの簡易な宿泊施設。外国人旅行者に人気があり、インバウンド需要をうけて、東京や京都などの観光地を中心に新しいゲストハウスが次々と登場しています。
この記事ではゲストハウスの特徴や、メリット・デメリットをふまえ、利用するときや、ゲストハウスを開業したいときの注意点などをご紹介します。ゲストハウスは自分以外の旅行者と交流できるので、旅をしている感覚をより強く味わえる宿です。その魅力を少しだけ知ってみませんか?
ゲストハウスって何?
キーワードは「セルフでリーズナブル」
ゲストハウスとは、素泊まりの宿泊施設のこと。寝室・トイレ・シャワーなど最低限の設備が提供され、ホテルや旅館と比べて低料金で利用できることが魅力です。ホテルとの違いは、手厚いサービスがない代わりに、比較的リーズナブルな料金で利用できることだと言えます。
ゲストハウスの設備の中でも特徴的なのが、ドミトリーと呼ばれる相部屋の存在です。宿によって異なりますが、ドミトリーには一部屋に4〜8人分の寝床が確保されていて、宿泊者はそこで寝泊まりします。ドミトリーの形式は広い部屋に布団が敷かれていたり、二段ベッドやカプセルホテルのように半個室のようにされていたりと様々です。
※ドミトリーがなく、個室のみのゲストハウスもあります。
ゲストハウスの中には、宿泊者が過ごせるコミュニティスペースやキッチンが付いている宿もあり、宿泊者はここで思い思いの時間を過ごすことができます。電源や水道は自由に使えて、Wi-Fiなどのネット環境も完備されていますが、ホテルとは異なり、モーニングコールや食事の提供は基本的にありません。
「自分の旅は自分でつくる」人にはうってつけ?
ゲストハウスのメリット・デメリット
ゲストハウスにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?ここで、代表的な長所と短所をご紹介しましょう。
<メリット>
・宿泊費を安く抑えられる
比較的料金が安いビジネスホテルでも宿泊が6000〜8000円かかるのに比べ、ゲストハウスならば2000〜3000円台が一般的です(相部屋のドミトリーの場合。泊まるゲストハウスによって料金が異なります)。料金は安くても、館内は清潔で、部屋の掃除が行き届いています。宿泊費用を抑えて、買い物や食事に回したい旅行者には最適な宿ではないでしょうか。
・他の宿泊者と交流できる
ゲストハウスの一番の魅力は、宿に泊まっている他の宿泊者と交流ができること。日本各地から集まった人たちのほかに、諸外国から集まった旅行者と交流ができます。宿にはたいてい共有スペースが設けられていますので、宿泊の際には足を運んでみましょう。共有スペースでくつろぐ旅行者に話しかければ、近場でおすすめの観光地やおいしいレストランの話が聞けるかもしれません。
<デメリット>
・基本的にはセルフサービス
ホテルに泊まれば荷物は部屋まで持って行ってくれますし、タオルやアメニティなどが部屋に備え付けられています。またモーニングコールやルームサービスなど、様々なサービスを受けることも可能です。
ゲストハウスに泊まる時には、ホテルと同水準のサービスを期待してはいけません。基本的にゲストハウスはセルフサービス。食事は宿の外でとるのが一般的ですし、タオルはレンタルになります。アメニティはボディソープとシャンプーなどが用意されていますが、その他は用意されていない宿がほとんどです。宿を予約する際に何を用意してあるかを確認し、必要なものは持参しましょう。
・セキュリティにはご注意を
稀な例にはなりますが、様々な人が出入りするゲストハウスでは、荷物の盗難が起きてしまうことがあります。特に注意したいのは複数の人が寝泊まりする「ドミトリー」に泊まる時。自分の貴重品は常に持ち歩き、部屋にロッカーが付いていれば荷物を入れて鍵をかけましょう(鍵はフロントで貸し出してくれます)。夜寝る時には、貴重品を近くに置いて盗難対策を怠らないようにしてください。
宿泊時にはレビューをチェック!
よりよいゲストハウスを探すコツ
ゲストハウスに泊まりたい場合、どのように探せばいいのでしょうか?ゲストハウスは宿のオフィシャルページや、いくつかの予約サイトから予約することができます。
代表的なものは、HostelWorld(ホステルワールド)とBooking.com(ブッキングドットコム)。両サイトともに日本語に対応しており、宿泊する都市の場所とチェックイン・チェックアウトの日付、宿泊する人数を入力することで予約可能な宿を検索することができます。
ゲストハウスを選ぶ時に参考にしたいのがレビューです。登録されているゲストハウスは、宿泊者から、「スタッフの接客」「清潔度」「セキュリティ」などの項目に10段階の評価がつけられているので、レビューをもとに居心地のよい宿を探してみましょう。
私も旅行先の宿泊先としてゲストハウスをよく使いますが、レビューの低いゲストハウスは設備や清潔度などの面で不満を感じることがありました。あくまで私の感覚ですが、総合評価が「8」以上のゲストハウスを選べば、満足できる宿泊経験が得られるのではないでしょうか。
レビューのほかには、立地やサイトに登録されている写真もゲストハウスを選択する基準になります。こちらも忘れずチェックしてみましょう。
どんな設備とスペースが必要?
ゲストハウスを建てるときの注意点
ここまでは、ゲストハウスを利用する際の話になりましたが、ここでもう一歩進んだ話をしてみましょう。もしゲストハウスを開業したい場合は、どのようなスペースを設け、設備は何を設置すればよいのでしょうか?
まず揃えたいのは、シャワーとトイレ、洗面所など。これは数カ所設置しましょう。ゲストハウスはたくさんの人が泊まる場所。入浴や用を足すタイミングは人それぞれなので、お客さんが好きなタイミングで利用できるよう配慮が必要です。シャワーは一度にたくさんお湯を使えるよう、給湯器を大型のものにするか、いくつか設置するとよいでしょう。
ゲストハウスには宿泊者が泊まる寝室も必要です。ドミトリー用の部屋は多くの人が泊まるため、コンセントは多めに設置しておくと便利です。二段ベッドを置く場合は、天井は高めにしておくと圧迫感を減らすことができます。
あると喜ばれるスペースは、「キッチン」「共有スペース」「荷物置き場」です。キッチンがあれば宿泊者は自炊ができますし、お湯を沸かしてコーヒーやお茶を飲むことができます。共有スペースは宿泊者同士が交流できる場所になるほか、宿によってはお酒や軽食を出すバーになっているところもあり、収益性をあげることもできるでしょう。荷物置き場はチェックイン前・チェックアウト後に宿泊者から預かった荷物を保管することができます。
これら3つのスペースは必須ではありませんが、設置すれば宿泊者の満足度も高まると思います。
最後に、消防法をクリアするために自動火災報知器や誘導灯、消火器の設置が義務付けられていますので、地域の消防署にアドバイスを受けて必ず設置しましょう。リノベーションをしてゲストハウスを開業する場合は、着工前に役所で建物の用途変更の手続きをする必要があるのでこちらもお忘れなく。
私は国内外100以上のゲストハウスに泊まりましたが、それぞれ個性豊かで、宿泊者との交流も楽しく、今ではあまりホテルを利用する気にはなれません。ゲストハウスの存在を知らなかった方も、ホテルにしか泊まったことがない方も、ぜひ一度ゲストハウスを利用してみてください。きっと旅先の楽しい思い出を増やすことができるはずです。
Text 鈴木雅矩
ライタープロフィール
ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。