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豊田大作の小屋二スト日記
2017年11月30日

豊田大作の小屋二スト日記|第1回「ぼくが小屋を作る理由」

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2017年11月現在の小屋の外観。アウトドアキッチンはピザ窯の焼き床までできている。奥に、子どもの頃に寝泊まりした家がかろうじて立っている

将来の住まいとするため、とある山のふもとにコツコツと小屋を作る40代男の手記。
まず初回はこれまでの経緯をできるだけアップテンポで振り返ります。





小屋作りライフが始まるまで

ぼくは現在『ドゥーパ!』というDIY雑誌を作っている。編集部に加わったのは2010年。さらにその前年、ぼくはスランプに陥っていた。それまでの仕事に自ら区切りをつけて新たなスタートを切ろうとしたにもかかわらず、あろうことか、どっちを向いてスタートすればいいのかわかっていなかった。自分が何をやりたいか、どう生きたいかがわからず、考えるほどに、面白そうなことは何もないような気がしていた。

そんな沈みきった日々が数ヶ月続いたある日、ふと、本当に唐突に「山のふもとに自分で小屋を建てて暮らす」という計画が頭に浮かんだ。ようやく降りてきたナイスアイデアだ。ここで言う山のふもととは、三重県某所の母が生まれ育った土地。幼い頃、夏休みや正月に行った大好きな場所だ。誰も住まなくなって30年近く経ち、荒れ果てているに違いない。そこに再び手を入れ、コツコツと住まいを作る。真面目に想像してみると、久々に興奮した。うわぁ大変だろうなぁ!と思うと、身体に力がわいてきた。

そして思い出したのがドゥーパ!というDIY雑誌だ。ぼくは以前、この雑誌の出版担当をしていた。ひとまず、再び編集に関わり、取材を通じてDIYスキルを身につけられたらと思った。いやそもそも小屋を建てるといっても資金はないわ、子どもは3人いるわだ。いきなり山のふもとに向かうのではなく、まずは給料をもらえる仕事をするのが賢明だろう。編集長に電話をして意志を伝えると、タイミングがよかったらしく編集部に加わることができた。なんというラッキー。

編集部に加わってすぐに小屋作りに参加する機会が訪れた。誌面で小屋の作り方をリポートするために、1棟作るのだ。メインの製作者は、チェンソーカーバーとして著名な栗田宏武さん。ぼくら編集部員は、ビギナーでもできる単純作業の担当。もちろんぼくは、そんな単純作業をこなせばOKだなんて思っていない。小屋の作り方を身につけようと真剣だ。かつて同じ雑誌に関わっていたときと意識がまるで違う。自分で作るつもりで施工の流れを追い、積極的に手を出した。そして、そんなモチベーションで臨んだ小屋作りが終わったときに、「これ、そんなに難しいことじゃないかも」と感じることができたのだ。

それ以降も同様の製作実践取材は頻繁にあった。ドゥーパ!は隔月刊で、ほぼ毎号、何かしらの作り方をリポートしている。小屋のほかにはウッドデッキ、カーポート、ピザ窯などなど。たいてい大工さん、木工家、庭師といったプロが中心になって製作し、編集部員が助手となる。これは言ってみれば、ほぼ2カ月に1度のペースでワークショップに参加しているようなもの。次第にぼくにもDIYスキルが身についていくように感じ、自分でいろんなものを作りたいと思うようになった。

最初に自分で作った小屋らしきものは床面積1.2×0.9mの物置。その後、庭に床面積2.7×1.8mの小屋を作った。週末ごとに作業をして4カ月。2×4工法、片流れ屋根の小屋ができあがった。設計、資材の調達からすべてひとり。「今週末は何の作業をしようか?」「窓枠の色はどうしようか?」…すべて決めるのは自分。とても愉快なことだ。ずっと心が躍りっぱなしだ。そしてやっぱり、ぼくにも小屋が作れた。これですっかり自信をつけ、いよいよあの計画を実現させようと考え始めたのだ。





4年間の小屋作りの軌跡

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2013年11月、初回の作業の様子。刈り払い機で草木を切り倒しながら、思い出の家へと近づいていく

「山のふもとに自分で小屋を建てて暮らす」という計画が頭に浮かんでから、ちょうど4年後の2013年11月。3連休を利用して、三重県南部の現地を訪れた。住まいがある横浜から車で休み休み走って7時間ほど。遠い。なので3連休以上でないと、現地で作業をする時間がほとんど取れないのだ。

さていよいよ動き始めた小屋作り計画。初回のテーマは現地調査だ。なにせ、ぼくがその場所をまともに訪れるのは約30年ぶり。小学生の頃の記憶しかない。まずは、本当に住まいを作れるような場所なのか確かめなければ。

母が生まれ育った家、ぼくが夏休みや正月に寝泊まりした家は、完全に草木に覆われていた。知っている人でないと、そこに建物があるとはわからない有様。持参した刈り払い機で草木を一掃し、思い出の家を拝むことからスタートだ。姿を現した家は全体が傾き、屋根の一部が崩れ落ちていたが、懐かしい匂いをまとっていて感慨深い。縁側に腰かけ、おにぎりをかじりながら、さして興味もなさそうな子どもたちに一片の思い出を語りつつ、周囲を見渡して新たに小屋を建てる場所を定める。その家の前、一段高くなっている、かつて田んぼだった場所に決めた。あたりに生い茂るカヤを刈り、施工場所を整えて初回の作業は終了だ。

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ようやく姿を現した思い出の家。およそ30年ぶりに縁側に腰かけて、おにぎりをかじる。旨い…

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生い茂るカヤを刈り、小屋を建てる場所をひらく

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初回はカヤを刈るだけで家族みんなが興奮していた。それまでの生活にはない類の時間が流れた

そして、その後の作業記録は以下のとおり。

2013年末「基礎石を設置」。
床面積3.6×3.6mに対して4×4=16個の基礎石を設置したが、あとから石の間隔が広過ぎるのではと不安になり、結局、次回やり直すことに。

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2013年末、基礎石を設置する。が、あとから石の間隔が広過ぎるのではないかと不安になり、結局、次回やり直すことに…

2014年ゴールデンウィーク「床の下地を作る」。
前述のとおり、基礎石の設置からやり直し、束柱を立て根太を組んで、床の下地となる合板を張った。

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2014年ゴールデンウィーク、床を作る

2014年夏休み「屋根の防水紙を張るまで」。
最も過酷だったと記憶しているのがこのとき。床の上に壁を立て始めたが、そうすると絶対に屋根の下地を張って防水処理まで終わらせなければならない。だって、この次に来るのは数カ月後。それまで小屋の中を雨ざらしにするわけにはいかないもの。子どもたちを親戚にあずけ、酷暑の3日間、夫婦そろって脱水症状寸前でやり遂げた。ロフト付きの高い小屋にしたから余計に大変だった。そんなわけで写真を撮る余裕もなし…。

2014年末「屋根材を張り、デッキを作り、ドアをつける」。
ドアは横浜の家で作って持ち込んだ。あらかじめ段取りを考えて、材料の木取りや建具作り、現地の小さなホームセンターでは売っていない資材の調達など、準備できることをやっておくと現地での作業はスピードアップする。なお、ドアがついたことで、この小屋で寝泊まりできることになった(それまでは近隣の親戚所有の空き家に寝泊まりしていた)。

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2014年末、屋根にガルバリウム波板を張り、玄関前にウッドデッキを製作。ドアもつけた

2015年ゴールデンウィーク「窓をつけ、床板を張る」。
横浜の家で作っておいた窓をつけ、室内のフローリングとして1×4材(ワンバイフォー材。1インチ×4インチの部材のこと)を張った。

2015年夏休み「物置の屋根に防水紙を張るまで」。
資材や道具を入れておく物置があると便利だろうと、小屋の壁を利用して併設することに。

2015年末「物置を仕上げ、太陽光発電システムを装備。屋根スペースを増設し、外壁を張り始める」。
横浜の家の庭の小屋につけていた太陽光発電システムを移設。照明がつき、バッテリー充電ができるようになって利便性が向上した。アウトドアキッチンスペースを作るつもりで物置の反対側の壁に屋根をつけたが、窓との関係で低い屋根になり、その下で火を使うのが不安になったので、結局キッチンスペースは別に作ることにした。また、長らく外壁材を張らず防水紙を雨風にさらしていると、だんだんボロボロになってきたので、ちょっと焦って外壁材を張り始めた。

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2015年末、物置を併設。太陽光発電システムも取りつけた

2016年3月「外壁を張る」。
近隣への出張ついでに、気になっていた外壁張りを終わらせた。

2016年ゴールデンウィーク「ロフトの根太を張り、内壁と天井を張る」。
断熱材を入れて天井、内壁を張った。少しずつ居住性がよくなってきた。

2016年夏休み「ロフトの床を張り、内壁に漆喰を塗り始める」。
漆喰はこのときに天井と壁上部を塗ったまま現在まで作業が進んでおらず、中途半端な状態で放置している…。

2017年3月「ロフトの階段兼棚を作る」。
角材を支柱にして作ったが、実はイマイチ気に入っていないので、できればいずれ作り直したい…。

2017年ゴールデンウィーク「アウトドアキッチンの屋根を作る」。
今度は十分な高さをとって屋根を作った。

2017年夏休み「アウトドアキッチンの土台を作る」。
屋根下のスペースにコンクリートブロックを積んでキッチンの土台を製作。

2017年10月「ピザ窯の焼き床を作る」。
ブロックの土台の上にコンクリート平板と耐火レンガを敷いて、ピザ窯の焼き床を作った。

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2017年11月現在の室内。広角レンズなので広く見えるが床面積は8畳。しばらく漆喰塗りかけの状態が続いている

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ロフトから玄関のほうを見たところ

と、駆け足で4年間の小屋作り、そしてそれ以前の経緯を振り返ったが、ぼくの沈んだ人生が、ふと思い浮かんだ小屋作り計画に端を発するDIYスピリッツの勃興により、なかなかエキサイティングになったこともまた感じ取っていただけるのでは。もはや、小屋作りはぼくにとってライフワーク。精神的支柱とさえ言えるかもしれない。

さて次回からは進行形で小屋作りにまつわる妄想、自慢、失敗談、懺悔、挫折、耳寄り情報などをお届けできたら。引き続き、ご愛読よろしくお願いします。

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