ハウスメーカーや工務店のサイトを見ていると、2×4(ツーバイフォー)工法という言葉を目にしませんか? 住宅工法つまり住宅の建て方の一つですが、実際には何のことか分からないという人も多いのではないでしょうか。
建築家と住宅設計を考えていくにしても、そこから先の住宅施工は、工務店の手に委ねられます。その際、施主と建築家が選んだ工法が得意だったり、実績が多かったりする工務店が選ばれることも少なくありません。
また、のちのちリノベーションをするにも、工法そのものを見直すのは難しいこと。後で後悔しないためにも、あらかじめ工法の概要だけでもおさえておきたいものです。
今回は、そんな住宅工法のひとつ、「2×4(ツーバイフォー)工法」のメリットやデメリットをご紹介します。
目次
ツーバイフォー(2×4)工法とは?
日本の伝統的な「在来工法」とはどう違うの?
ツーバイフォー(2×4)工法のメリットは?
ツーバイフォー(2×4)工法のデメリットは?
ツーバイフォー(2×4)工法を選ぶときの注意点
ツーバイフォー(2×4)工法のメンテナンスについて
まとめ
ツーバイフォー(2×4)工法とは?
ツーバイフォー(2×4)工法とは、木造枠組壁工法の一つで、約2インチ×約4インチの規格角材を主要な構造材として用いることから名付けられた工法です。
1インチは約2.54センチメートルなので、2×4(ツーバイフォー)は、縦5.08センチメートル、横10.16センチメートルのサイズということになりますね。このあと乾燥した製材のサイズは38mm×89mmです。
ツーバイフォーの他には、ツーバイシックス(2インチ×6インチ)、ツーバイエイト(2インチ×8インチ)、ツーバイテン(2インチ×10インチ)といった工法もあります。
この均一サイズの角材を組んで枠組をつくり、枠組に合板を接合して、柱や梁の代わりに壁、床、天井、屋根部分を構成します。それらを組み合わせて箱状の空間をつくっていく工法なので高度な技術は必要ないという特徴があります。
ツーバイフォー工法の大きな特徴として、床や壁などの「面」で支える「面構造」があります。
ダンボール箱をイメージすると分かりやすいのですが、厚紙1枚ではすぐに折れ曲がってしまうけれど、箱のかたちにすると、物を入れたり、上に積み重ねたりすることができ、上や横から押しても簡単にはへこまないですよね。
そしてツーバイフォー工法に代表される「木造枠組壁工法」とは、この6面体の“箱”を横に並べたり、上に積んだり、箱の中を仕切ったり、箱の一部をくりぬいて窓などの開口部をつくるという考えかたなのです。
歴史的背景としては、西部開拓時代のアメリカで、熟練の技をもつ職人が少ないという事情から2X4工法(ツーバイフォー工法)が広まり、標準的な木造住宅の工法となっていったようです。現在ではアメリカ、カナダの木造住宅の約9割が2X4工法(ツーバイフォー工法)と言われるほどで、世界各国に普及しています。
日本の伝統的な「在来工法」とはどう違うの?
「木造枠組壁工法」のひとつであるツーバイフォー工法ですが、対照的な工法として、日本の伝統的な工法として知られる「木造軸組工法(在来工法)」があります。
木造軸組工法とは、コンクリートの土台に柱を立て、梁との軸組によって組み立てる工法です。つまり木造軸組工法は“線”で家を組み立てるイメージで、“面”で組み立てるツーバイフォー工法とは作り方が大きく異なります。
また規格化された木材を使うツーバイフォー工法に対し、木造軸組工法は様々な種類の木材を使用でき、木本来の素材感が味わうことができます。一方で、設計上の制限が少ない反面、工法が複雑で職人の技術によって仕上がりや耐久性が違ってくるという側面もあるので注意が必要です。
ツーバイフォー工法と在来工法の違い
ツーバイフォー工法 (木造枠組壁工法) |
在来工法 (木造軸組工法) |
|
---|---|---|
構造 | 面で組み立てる | 線で組み立てる |
材料 | 規格化された木材 | さまざまな種類の木材 |
特徴 | 高い耐震性・耐風性、工期が短い、高気密・高断熱。 | 自由な設計が可能、木本来の素材感が味わえる、大工の技量による品質の差がある。 |
ツーバイフォー(2×4)工法のメリットは?
それでは、ツーバイフォー工法の長所はどんな点にあるのかを見ていきましょう。
1.耐震性
ツーバイフォー工法は“面”で構成されているので、地震や風といった外部要因に対して、在来工法よりも耐性があると言われています。
2011年に起きた東日本大震災では、社団法人日本ツーバイフォー建築協会の調査によると、ツーバイフォー住宅のうち全体の97%が「多少の被害及び被害無し」に該当し、ツーバイフォー住宅の高い耐震性を発揮したといえます。
津波を除く被害
被害程度 | 合計 | 強震変形 | 地震崩壊 | 液状化 | 類焼他 |
全壊 | 7 | 0 | 6 | 0 | 1 |
半壊 | 69 | 2 | 33 | 34 | 0 |
一部損壊 | 413 | 319 | 61 | 16 | 17 |
小計 | 489 | 321 | 100 | 50 | 18 |
多少の被害 及び 被害無し |
19,633 | ||||
合計 | 20,122 |
(出典:社団法人ツーバイフォー建築協会「東日本大震災調査報告会」会員アンケート調査概要)
2.耐火性
ツーバイフォー工法の住宅では、火の通り道となる壁や床の枠組材がファイヤーストップ材となり、空気の流れを遮断することで火が上の階へと燃え広がるのを食い止める効果があります。
また気密性も高いことから、窓やドアを閉めておけば新しい酸素が入ることなく自然沈下することもあります。
現在では、ツーバイフォー工法で建てられた住宅のほとんどは「耐火性能を持つ建物である」と認識されており、火災保険の費用を抑えることもできるのが嬉しいポイントです。
3.比較的、工期が短い
在来工法は大工、職人による手作業の割合が多いため工期が長くなりがちですが、ツーバイフォー工法においてはシステム化が進んでいて分業がしやすいという特徴があり、工期が短い傾向にあります。
ツーバイフォー(2×4)工法のデメリットは?
上記のようなメリットから、大手の建設会社や住宅メーカーにおいてもツーバイフォー工法を多く取り入れていますが、もちろんデメリットもあります。
1.間取りの制限がある
ツーバイフォー工法では“面”で構成し「箱」のようなかたちになるため、間取りに制限があり、後から変更する変更するのも難しいとされています。
例えば、壁を抜いてリビングを広くするなんてことも、構造上難しくなります。
しかし、建てる前から間取り変更の可能性を考えて動かせる壁と、それ以外の壁(構造躯体)とに分けてプランニングすることで解消できます。
例えば、大空間の「箱」をつくっておき、中の仕切りを可動式にする方法なら、開放的な空間も作れるし間取り変更も可能となります。
2.リノベーションがしにくい
後からリノベーションをしたいと思っても、間取りの変更を伴うような大きな工事が思うようにできない、ということもあります。
初めからリノベーションを計画しておけば、間取り変更は可能ですし、部分的なリフォームはもちろん可能です。
大手ハウスメーカーに2X4(ツーバイフォー)工法のノウハウが集中したこともあり、2✕4(ツーバイフォー)を苦手とする工務店が多く、そのようなイメージを持たれていることもあるでしょう。
近年はツーバイフォー住宅もリフォーム需要が増え、日本ツーバイフォー協会の広報活動などにより、取り扱える工務店も増えているようです。
3.構造体のコストは削れない
ツーバイフォー工法の場合、構造体に使用することができる部材がJASまたはJIS基準をクリアしたものに限定されています。そのため、構造体のコストは変更できません。 コスト削減をしたいときは構造体以外で考えなければならないでしょう。
しかしツーバイフォー工法で建てた家は、建物の価格に関わらず、耐震性や耐火性、耐久性などの性能が確保されていて、安全・安心は得ることができます。
ツーバイフォー(2×4)工法を選ぶときの注意点
実際にツーバイフォー工法を選ぶにあたって注意すべき点に注目してみましょう。
ハウスメーカーの選定
ツーバイフォー工法の住宅を建てる際には、ツーバイフォー工法に慣れているハウスメーカーを選ぶことが重要です。
アフターサービス
ツーバイフォー工法を選ぶ際に大切になってくるのが、充実したアフターサービスを受けることができるかどうかです。
長く安心して住めるよう、点検や修理など、新築後や年月が経過したときにきちんとしたアフターサービスを受けることができるか確認しましょう。
ツーバイフォー(2×4)工法のメンテナンスについて
ツーバイフォー住宅のメンテナンスは、快適な住まいを長く保つためにとても重要です。
どんなメンテナンスが必要?
住宅のメンテナンスは工法にかかわらず、構造体と、住宅設備や内外装に分けて考える必要があります。
構造体のメンテナンスは、木造住宅か、鉄骨住宅やコンクリート住宅かによって大きく異なります。ツーバイフォー工法の場合、木造になるので、湿気による木材の腐食やシロアリ被害に注意が必要となります。5~10年に一度、専門業者に依頼しましょう。
住宅設備や内外装に関しては、築15年~20年を目安に必要に応じたメンテナンスを行いましょう。
保証期間に注意
住宅には保証期間が設定されています。現在では、大手ハウスメーカーの保証期間は最長で60年とされていて、保証期間内であれば無料で修理できる場合もあるので、必要なメンテナンスを継続的に行いましょう。
基準内であればリフォーム可能
ツーバイフォー工法の技術基準は、使用する構造材はもちろん、建物を支える耐力壁や開口部などの寸法も定められています。そのためリノベーションが難しいというデメリットもあありますが、基準内であれば、間取りの変更や増築などのリフォームは自由に行うことが可能です。
まとめ
ツーバイフォー工法は、耐震性や気密性、断熱性に優れた工法です。
一方で初期費用が高い、設計の自由度が低いなどのデメリットはありますが、すべて耐震性や耐火性に優れた構造を守るためという側面があります。
後々のリフォームプランをしっかりイメージできていて、耐熱・耐火・耐震などを求めるなら「2×4工法(ツーバイフォー工法=木造枠組壁工法)」を、自由度の高い住宅やリノベーションを楽しむなら「木造軸組工法(在来工法)」を、と言えるかもしれません。
住宅工法は後から変更できないだけに、間取りやデザインといった分かりやすい住宅の特徴だけでなく、メリットやデメリットを比較検討し、ご自身のライフスタイルに合った工法を選ぶ必要がありそうです。
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