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出典:植田板金店『小屋のワ』
2018年リリースの隈研吾氏デザインの小屋『小屋のワ』。手掛けるのは岡山で板金職人を擁する株式会社植田板金店です。発売から3年を経た2021年、小屋ブームが再燃し、受注が追い付かない勢いで売れています。いったいなぜ? 植田板金店の植田博幸社長にお話を伺いました。
隈研吾氏へ熱烈アプローチで成就した『小屋のワ』
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出典:SuMiKa 2019年掲出/植田博幸社長と隈研吾氏
2015年ごろから広がった「小屋ブーム」をキャッチした植田社長が「うちも小屋をつくろう」と思い立ち、隈研吾氏に熱烈アプローチを開始。プロジェクトは結実し、『小屋のワ』が2018年7月にリリースされました。
隈研吾氏の「無理難題」にコスパを度外視して板金職人の誇りで応えた逸品です。同年のグッドデザイン賞も受賞しています。
もともと板金職人集団である植田板金店の主な事業は、金属屋根や雨どいなどの工事です。ハウスメーカーになるのはリスクだが、小屋メーカーとしてブランドをつくることはできるのでは、と植田社長を考えたそう。
そこで立ち上げた新規事業「小屋やさん」。数あるラインナップの中でも『小屋のワ』はそのフラグシップモデルです。『小屋のワ』は話題になり、植田板金店にとってほぼ初チャレンジとなるBtoC事業は順調に滑り出しました。
コロナ禍のリモートワークで小屋ニーズが高まる
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出典:植田板金店『小屋のワ』内部
そして2020年の新型コロナウイルスの流行。リモートワークへの切り替えによって、ワークスペース確保の手段として小屋の需要は増していきます。
「2018年発売当初は、問い合わせも多かったのですが、立地条件や家族の反対で失注することも多かったんです。それが、コロナになって、夫婦で在宅ワークだと煮詰まることもありますし、友達も呼びにくくなる。ちょっと離れている時間もほしいですよね。
それまで趣味のための小屋なんて無駄遣いだ、と言っていたパートナーのお許しが出やすくなったようです。とうとう念願の小屋をつくる正当な理由ができたわけです(笑)」と植田社長は語ります。
2021年、「小屋」が再び大ブレイク
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提供:植田板金店 テレビ取材の様子
大ブレイクが起こったのは2021年1月。讀賣新聞が小屋ブームを報じ『小屋のワ』を紹介したことをきっかけに、テレビ取材が次々と舞い込みます。アクセスが殺到し、一時サイトがダウンするほどに。その後「第二次小屋ブーム」ともいえる現象が続いています。
2015年ごろの最初の小屋ブームに乗ったものの、現地検分などの手間が意外にかかる小屋事業から撤退するメーカーは多かったようです。植田板金店は、『小屋のワ』を中心に小屋ブランドを大切に育ててきたことで、第二次小屋ブームの立役者となりました。オリンピックイヤーが延長し、隈研吾氏が脚光を浴び続けていることも影響したと思われます。
その仕掛け人ともいえる植田社長によると「1月以降、問い合わせは10万アクセスを超えている」そう。岡山拠点のため近畿が商圏ですが、70万円の別途運賃を支払っても納品してほしいという関東圏の顧客もいたとか。植田社長は「全国への足がかりにもなった」といいます。
小屋やさん事業で知名度が劇的に上がる
また、本商品は297万円(税込)(※ウッドデッキ及び庇は含まず)ですが、60万円程度から選べる小屋など、さまざまなタイプをラインナップしています。例えばコロナ禍の特殊需要として、老人ホームなどの「発熱外来」としての小屋設置要請にも安価で応えています。
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提供:植田板金店(発熱病棟搬入と初別病棟内装)
「小屋やさん」事業は2020年度は売上1億円を突破、それでも全体の6%にすぎませんが、知名度がアップしたことで本業も好調になり、優秀な人材確保も可能になったとのこと。いま植田板金店は大きな成長期を迎えています。
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出典:植田板金店『小屋のワ』
『小屋やさん事業』が絶好調の植田板金店ですが、現在は、新素材を利用した新企画を練っているそうです。「本業を生かしてイノベーションを起こしていきたい」と語る植田板金店に、今後も注目していきます。
SuMiKa編集部