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建築家の棲み家
記事作成・更新日: 2015年 2月 6日

ちょっと変わった木々に囲まれる暮らし

[建築家の棲み家Vol.06 松澤静男]


「好きに暮らすってどういうこと?」。建築家は家の設計を通して、この問いかけの解を住み手と一緒に探します。
そんな建築家自身の住まいにおける「好きな暮らし」を覗いてみましょう。
建築家自らが「好きに暮らそう」を体現した「自邸のお気に入り」を紹介する本企画「建築家の棲み家」。第6回は松澤静男さんです。


はじめまして。マツザワ設計の松澤静男です。さいたま市で住宅の設計監理を始めて30年経ちました。最近は、以前設計監理した住宅のリフォームの依頼も少しずつ出てまいりました。懐かしい建て主さんとの再会も嬉しいものです。私の楽しみと言えば、毎週日曜日は時間が許す限り、サッカーやフットサルをしています。その後、疲れた顔で打合せ・・・なんて事も増えました。

さて、私の自邸の紹介をしたいと思います。

自分の住まいをつくる時には、時間もエネルギーも思いっきりかけたいのですが、そんなにはかけられず結構大変な家づくりになりました。建築家が自邸をつくる際に『何を重視するか?』は人それぞれですが、間違いなく全員がおこなう事があります。それは、自分であたためてきたアイデアや、仕事では実現できなった事、そしてちょっと実験的なものを含めること。それをしながら、一般の皆さんと同様に予算との闘いの中で快適で楽しい住まいを目指します。

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マツザワ設計では、地域木材や広葉樹といった自然素材にこだわる自然素材の「木の家」を得意としています。我が家の場合も、もちろん「木の家」でいつものマツザワ設計仕様の応用編をおこなっています。

ローコストでの外断熱、簡単ソーラーシステム(太陽熱利用)、杉板30ミリの外壁と野地板、2世帯住宅の小さな試み、広葉樹など特殊な木材の利用、職人の技術を活かした家づくり・・・など。

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さて、今回紹介するのは『階段の納まり』(※)と『ちょっと変わった木々』です。

※建築用語で、よく納まりという言葉を使います。木の納まりとは主に、木材と木材をどのように繋ぐか?ということです。それはデザイン的な見せ方だったり、強度(力の分散化)だったり、木材の特性を活かす方法だったりしますが、木と木を単につけるだけではなく、建築家のこだわりが表れたりもします。階段に限らず、巾木(はばき)のサイズ、ドアの枠の出寸法や幅など、また壁と天井の接点の設計などもよく見ると、建築家ごとに違うものです。

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太陽熱利用の空気集熱システムと相性の良い吹抜けと、2階のファミリールーム(多目的スペース)に隣接する階段は、家の中でも重要な部分です。光や風を通しながら、温熱環境にも関わり、上部のトップライトにより明るさだけではなく、光や影を楽しめるようにしています。

続いて、この階段各所の木を紹介します。

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階段の段板には、栗を利用しています。温かく、それでいて適度に堅い木です。木目も美しく、色は優しく経年変化を楽しめます。広葉樹の階段は私の設計の標準仕様にもなっています。最近は地域材の利用やコストの関係で、地元の杉の厚板や工務店の在庫の桧板などもよく登場するようになりました。

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中壁は杉板。50ミリでなかなか味のある板です。この板に段板を彫り込んで納めていますので、階段の幅が片側で50ミリ程度広くなり、上部では手摺を兼ねています。大工の技術は必要ですが、ちょっとした工夫で安全で使いやすい階段になります。

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階段のコーナーにある栗丸太はその表情を活かすためにスリットを設けてあります。この家には他にも栗の丸太が3本(通し)あり、ケヤキやカラマツの太い柱も見え隠れしています。

このようにちょっと変わった木々が家の中にアクセントを加えています。ちょっと多すぎるかもしれません。でも私にとっては快適で楽しい空間です。

Text&photo松澤静男/マツザワ設計


プロフィール

松澤静男
マツザワ設計


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Vol.07は田邉 恵一さんです。

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