「暮らしのものさし」では、ただ消費者として暮らしを営むのではなく、自分の暮らしをデザインする、“暮らしのつくり手”たちを紹介しています。※この特集は、SuMiKaとgreenz.jpが共につくっています。
みなさんは、「市場から見放された土地」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
古い空き家がそのまま放置された土地、はたまた、路地裏で草木がぼうぼうに生えた土地でしょうか?
「市場から見放された土地」とは、「土地として利用価値が薄く、また新築の物件を建てるにも規制がかかる土地」のこと。都会にはそんな土地が意外にも数多くあるのです。
これからご紹介する「大関商品研究所」は、「市場から見放さられた土地」を抜群のセンスとアイデアで「人と人が楽しみながらつながる場」へとつくり変えてきました。
例えば、住宅地の真ん中に立つ大きな木の上にツリーハウスを製作し、地域の人が集まるカフェをオープンしたり、竹やぶの中にシェアハウスをつくったり
つくり変えると聞くとリノベーションをイメージしますが、そもそも「大関商品研究所」は何を研究しているのか。代表の大関耕治さんは言います。
「大関の仕事は時代が求めていて、かつ、仕事する側もつくった空間を共有する人もみんな楽しい!を大事にしています。それが大関の仕事です」
市場から見放された土地を、みんなの楽しい場に。世の中がもっとおもしろくなるよう仕掛ける大関商品研究所の仕事をご紹介します!
横浜市の住宅街。竹やぶの中にシェアハウス!?
まずは、大関商品研究所が手掛けた物件のひとつ、シェアハウス「バウハウス横浜」をご紹介しましょう。
「バウハウス横浜」が建つ土地は、もともと傾斜がひどく、さらに手付かずで竹やぶだったそう。その現状を逆手にとりつつ、魅力あるシェアハウスへとつくり変え、「バウハウス横浜」は誕生しました。
バウハウス横浜にはシェアハウスだけではなく、ツリーハウスをカフェにした「なんじゃもんじゃカフェ」が併設され、営業時間外では住民のコミュニティスペースとしても使用されています。
また、現在都内を中心に6件あるバウハウスシリーズですが、入居者たちがSNSなどでコミュニケーションを取り、交流会なども開催している点がバウハウスのユニークな特徴のひとつ。
バウハウスというつながりから生まれる交流もまた、ただ、シェアハウスで暮らすだけではない、大関の空間つくりの魅力です。
バウハウス横浜のようにユニークなシェアハウスをつくるところから社員ひとりひとりが手を動かし、その運営も自分たちで行う。
それが、大関商品研究所が手がける「バウハウス」ですが、バウハウスが誕生したのは、シェアハウスが今のようにポジティブで楽しい暮らし方のひとつとして確立していなかった時代のことでした。いわば、現代のシェアハウスの先駆けともいえるのです。
市場から見放された土地を、人が楽しくなる場に
これまで6軒のシェアハウスを手がけ、運営する大関商品研究所ですが、何がきっかけにシェアハウス事業がスタートしたのでしょうか?
10年以上前、もともとうちが経営する飲食店の内装を自分たちでやっちゃおう、というところから、リノベーションやシェアハウスの仕事がスタートしたのですが、実は、最初からシェアハウスをつくりたいと思っていた訳じゃないんです。
もともと建築関係の仕事を目指し、大学で建築を学んでいたという大関さん。建築の仕事を突き詰めるより、世の中が楽しくなるための場づくりや仕事がしたいという想いが深まったそう。飲食店を立ち上げ、少しずつ展開しながら、7年ほど前にとある物件と出会ったことでシェアハウスつくりがスタートしたと言います。
高円寺で出会った物件は、すでにボロボロの古い下宿が建っていて、しかも、土地の関係で取り壊すことができない、新築も建てることができない、いわば市場から見放された土地だったんです。
もちろん、値段も安い訳です。とりあえず物件を入手して、さてどうしたものかと考えたときに、その昭和40年くらいに建てられた下宿にはかつて寮母さんがいて、住人が同じ台所で料理をしたり、会話があったり、なにか人と人がつながった暮らしがあったんだなと思って。
それは、今の時代にもまた求められている暮らしかたなのかもしれない、それを再現しようと直感的に思ったんです。
当時のシェアハウスといえば、同じ間取りの小さな部屋をたくさん詰め込んだ効率重視のものが主流。そこで大関さんはこの古い下宿を、住みやすく、おしゃれで、暮らしが楽しくなるシェアハウスに生まれ変わらせるため、社員とともにリノベーションを行うことに。
こうして、大関商品研究所が手がける、シェアハウスシリーズ「バウハウス」1号として「バウハウス高円寺」が完成。シェア住居の総合メディア「ひつじ不動産」で入居者の募集を開始したところ、思いのほか反響は大きく、あらためて、人とつながる暮らしかたが求められていると確信したと言います。
若者がひとりで暮らしていくのに、ある意味厳しかったり、人とつながりづらい時代っていう背景がシェアハウスに人が集まる理由としてあると思うんですけどね。
僕はその気持ちもわかるし、時代が求めていて、みんなが「楽しい!」って感じる場づくりをしたいと思っているから、シェアハウス事業を大関の仕事のひとつにしたんです。
自分たちが楽しい仕事は、世の中も楽しくする
バウハウスを展開して今年で7年目。今年はバウハウスシリーズ6件目「バウハウス両国」も誕生します。すでに多くの入居応募もあり、「人とつながりあう暮らし」が増えていますが、大関さんが大切にしていることは何でしょうか?
大関の仕事で大事にしていることのひとつが、「僕らも楽しむことで、世の中がもっと楽しくなる」なのですが、手間ヒマをかけて、その土地や建物のストーリーを汲み取って、そこにあるものを生かした、僕らにしかできないものづくりをしたいと思っています。
そもそも、今の建物の多くは人手をかけず、効率のいいやり方でつくっていて、同じような形に同じような色。壁もペタッと塗って終わりじゃないですか。そうしたやり方は、面白くないと思うんです。
それよりも、市場から見放された誰も手をつけなかったような場所を、手間をかけて、味のある空間に仕立てる。それが楽しいんですよね、僕らは(笑)
その空間を楽しんでくれる人がいて、そんな人たちを見るのも、また楽しいんです。
「バウハウス横浜」では、当初、居住者のコミュニティスペースにと大関が手がけたツリーハウスを、一転「なんじゃもんじゃカフェ」として運営まで手がけることに。これもまた、地域がもっと楽しくつながる大関の仕事だと大関さんは続けます。
バウハウス横浜が建っているもとの土地は、手付かずで竹が生え放題。しかも、斜面で大きな木が土地の真ん中にあって、公道から離れているから重機も入る事ができない。本当に市場から見放さられた土地だったんです。
でも、真ん中に生えてる大きな木がとても印象的で、この木にツリーハウスを建てたいという気持ちひとつでこの土地を手に入れました(笑)
さすがにツリーハウスだけじゃもったいないので、この土地の形や、竹をうまく利用した空間づくりが始まって。結局、ツリーハウスは最後につくったんですが、土地柄、まわりが住宅地だったので、入居する人も僕らも周辺まわりの住人の方も、みんなが楽しくつながる空間にしたいと思い、カフェにしちゃったんです。
人気メニューは、自家製ベーグルのフレンチトースト。カフェとして妥協しないこともこだわりがあります。
普通なら、竹と木を切り、斜面を崩し、平らな土地を広く使うことを優先したいところを、あえて生かしながら、住人だけでなく、たくさんの人が楽しくつながる場につくり変えた大関の仕事。なんじゃもんじゃカフェとバウハウス横浜には、暮らしだけでなく、そんな土地への想いの詰まったストーリーがありました。
古いものへのリスペクトを大切に、そこに吹き込む新しい息吹へのセンスを研究する
世の中がもっと楽しくなる場を手がけてきた大関商品研究所。最後に「大関研究所はなぜ研究所なのか?」を伺ってみると…。
気になりますか?(笑)
僕がやりたいと思ったことはなんでもやれるように「研究所」にしちゃったんです。「大関不動産」とか「大関リノベーション屋」だとなんだかくくりができちゃうでしょ。だから、「研究所」なんです。みんなが楽しくなることを研究してる。
僕自身が楽しくて、周りのみんなが楽しいと感じてくれることが、シェアハウスだったし、市場から見放された土地を生かすことだった。次が見つかれば、そこに挑みたいですね。
ひっそりと眠ってしまう市場から見放された土地。
大関商品研究所の前人未到の見放された土地に挑戦することは、利便性や効率性を求め、消費をするだけの暮らしにはない、自分たちでつくる暮らしのヒントも多く隠されている気がします。
大関研究所の世の中が楽しくなるものづくりが気になったら、なんじゃもんじゃカフェでゆっくり過ごしてみませんか?