昭和5年に建てられた木造平屋の一戸建てを、
古いものを活かしながら現代に合わせて再編集。都会で楽しむ自然に包まれる日々。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
1930の家
(東京都世田谷区)
- 設計
- SPEAC,Inc.
- 住人データ
- 章嘉さん(40歳)デザイナー、泉さん(34歳)会社員、
長女(4歳)、長男(0歳)
「東京R不動産」の新着物件として紹介された直後から、問い合わせが殺到したという、築84年、木造平屋の賃貸住宅。飯島章嘉さんと泉さんご夫妻は、ネットの写真を見て、ひと目で気に入り、すぐに申し込みを決めた。
事務所兼住居として、仕事と生活が自然につながる家を探していました。広い庭とウッドデッキがあり、当時3歳だった娘に良い環境だったことも決め手です(章嘉さん)
ほぼ竣工当時のままの姿を留めていた既存物件はオーナーの依頼により「東京R不動産」を運営するスピークが設計。現代の生活に馴染む形で貸家として再生することになった。
小さな森のような庭の魅力を家の中に取り込むため、真ん中にあった和室の壁を取り払いました。キッチンは庭が見える位置に移動。カウンターを対面式にして、庭を見ながら料理ができるようにしています
と話すのは設計を担当したスピークの宮部浩幸さん。和室と庭側にあった洋室、縁側をL字につなげて大きくLDKを設け、どこにいても庭が目に入る開放的な空間とした。
水まわりは新設し、ほとんどの壁や床を仕上げ直しています。しかし、古い建具や天井を抜いた小屋組みの梁、柱、状態の良い一部の土壁など、味わいのあるディテールはできるだけ残しました(宮部さん)
LDKの欄間は土壁の土のみを落とし、小舞と呼ばれる竹を格子状に組んだ下地を流用。通風と採光、和の意匠のアクセントとして活かしている。また、この家を建てた現オーナーの先代が使っていた書斎には、パーケットフローリングを組み合わせ、レトロな洋館のようなイメージを踏襲。玄関から直接出入りできるこの部屋を、章嘉さんの事務所として使用している。
風通しがいいから夏は涼しく、冬は陽射しが奥まで入る平屋の過ごしやすさを感じています。庭で採れた梅や柚でシロップをつくったり、紅葉を眺めたり、東京の真ん中で、そうして四季を感じて暮らせるのは贅沢だと思います(泉さん)
外国人の友人が多いという飯島さんご夫妻。この家に国内外の友人を招いた交流イベント「LIFE:WORK」を定期的に開催している。
遊びに来る外国人の友だちは必ず喜んでくれるし、人を集める魅力がある家だと思うので、それを活かしていけたらと思っています(泉さん)
専門家プロフィール
1972年 千葉県生まれ。東京大学大学院修了後、北川原温建築都市研究所、東京大学大学院工学系研究科助教、リスボン工科大学客員研究員を経て現在、株式会社SPEAC 取締役。博士(工学)。東京大学大学院非常勤講師、明治大学兼任講師。
1972年 京都府生まれ。東京都立大学工学研究科建築学専攻修了。建築・不動産・デザイン・オペレーション・マーケティング等、包括的な視点でプロデュースを行っている。株式会社SPEAC 代表取締役。「東京R不動産」代表ディレクター。
SPEAC,Inc.
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前1・21・1・3F
- TEL
- 03・3479・0525
- contact@speac.co.jp
- URL
- www.speac.co.jp
〈物件名〉1930の家〈所在地〉東京都世田谷区〈居住者構成〉夫婦+子供2人〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈建物竣工年〉1930年〈建築面積〉76.98㎡〈床面積〉75.35㎡〈設計〉SPEAC,Inc.〈設計期間〉5ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2012年
※この記事はLiVES Vol.76に掲載されたものを転載しています。
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