日本の住宅は木造が多いのですが、じつは木造以外にも、さまざまな構造で建てられています。建築家や施工業者と家づくりを進める際、間取りやプランのイメージはつくものの、構造体の話をされても、それでいいのかどうかさっぱり分からない、という人も多そうです。
木造、RC構造といった構造は、外装や内装をしてしまうと、見分けがつきにくくなってしまうのですが、それぞれに特徴があります。今回は、この構造体についてご紹介します。
木造、鉄骨、RC構造の違いって?
さて、いきなりですが、この部屋の構造体はいったい何でしょう?(答えは記事の最後に出てきます)
壁はコンクリート打ちっぱなしですが、吹き抜けの土間が広がっていますね。さて、話を先に進めましょう。
構造の種類ですが、おおまかには
・木造
・鉄骨(重量鉄骨、軽量鉄骨)
・RC(鉄筋コンクリート造)
・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
の4種類があります。まずは、それぞれの違いについて見ていきましょう。
木造建築
古くからある木造建築は、柱、梁(はり)、筋交い(すじかい)を使って組み立てていく工法です。柱が縦、梁が横、そして筋交いが斜めに入れて補強する部材です。
木は加工がしやすいため、その分設計の自由度が高いといえますが、広い窓をつけたいなど開口部を大きくとろうとすると、その開口部のどこかに柱や壁が入ってしまうなど、間取りの制約があるのも事実。建築や解体における費用は、他の構造体(鉄骨やRC)でつくるよりも安く抑えることができます。
鉄骨構造(重量鉄骨)
上の写真は、建設中の重量鉄骨のマンションです。太い柱と梁を組み合わせることで、ビル建築のような頑丈さを持ちます。その頑丈さから筋交いもいらないので、大きな窓や広い空間といった大きなスパンをとることも可能に。これは重量鉄骨とRC、SRCともにいえることですが、柱が太い分、部屋の中からみると、柱の形が出てしまうという難点も。柱を出さないためには、柱の厚み分だけ、壁を大きくとる必要があります。
鉄骨構造(軽量鉄骨)
重量鉄骨と比較すると柱も梁も細いのですが、本数を多くすること、また筋交いを入れることで強度をつくるのが軽量鉄骨の特徴です。筋交いのある部分は“抜けない”ので、大きな開口部をつくるには不自由さがあったり、一般的にリノベーションなど大きな増改築が難しいといわれる一面もありますが、建築費は、重量鉄骨よりも比較的抑えることができます。
RC構造(鉄筋コンクリート造)
上の写真のような鉄筋の骨組みに、コンクリートを流し込むのがRC構造です。RCとは、「Reinforced Concrete」の頭文字。直訳すると、補強されたコンクリートという意味です。
柱、梁、床、壁がすべてコンクリートなので強度が高く、100年以上も住み続けられるといわれるほどの耐久性や耐震性をもち、断熱・気密性能が高いうえ、耐火性や遮音性にも優れているという特徴を持ちます。また、木造では難しいようなアーチの形状や、大空間をつくるのもお手の物。広いリビングやビルトインガレージなど、自由度の高い設計ができることが最大のメリットです。
ただし、建築や解体における費用は比較的高めで、建物の重さもあるため、土地によっては地盤改良や杭打ちが必要になることも。また、気密性能が高いことに起因するのですが、結露が発生しやすく、換気システムが重要に。さらには、コンクリートという素材は汚れがつきやすいほか、外気熱を室内に伝える“熱伝導率”が高いため、夏は暑く、冬は寒い家となりがちなのも難点。外断熱を施せば、冷暖房の効率がよくなるようです。
一般的にRC構造は、マンションやビルといった中高層の建物に多いのですが、その性能やデザイン性の高さから、近年は一般住宅でも多く取り入られるように。隣家と近い場合でも、遮音性が高いのでプライバシーが守られますね。
SRC構造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
SRCとは「Steel framed (encased) Reinforced Concrete」の頭文字です。鉄筋コンクリートの中に、芯材として鉄骨(Steel)が入っていて、強度の面でRC構造よりも優れているため、その分柱や梁を細くすることができます。大規模マンションや超高層マンションなどでよく見られますが、建築費が高くなるため、低中層の建物にはあまり用いられることがありません。
さて、記事の冒頭に出した写真ですが、正解はRC構造です。
すぱっと切り落としたような壁面や、なだらかな曲線など、RC構造のコンクリートの家だからこそ表現できるデザインは幅広いもの。世界にひとつしかない「わが家」を実現しようとすると、自然とRC構造を選択することになった、という人も少なくなさそうです。
ちなみに、1階部分はRC構造で、2階部分は木造にするなど、場合によっては構造を組み合わせることもできます。
いかがでしたでしょうか。
細かいことはさておき、大まかな建物の構造をおさえておくと、納得のいく家づくりができそうですね。
Text SuMiKa編集部