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いまさら聞けない!家と暮らしのキーワード
記事作成・更新日: 2024年12月13日

旗竿地ってなに!?
購入前に知っておきたいメリット・デメリットを徹底解説

いまさら聞けない!家と暮らしのキーワード「旗竿地」

旗竿地(はたざおち)は、独特な形状を持つ土地であり、購入を検討する際にはその特性をしっかりと把握しておくことが重要です。土地の形状が他と異なるため、建築プランや生活環境にさまざまな影響を及ぼします。一方で、工夫次第では魅力的な住まいを実現できる可能性も秘めています。
本記事では、旗竿地の基本的な特徴から、購入前に知っておきたい具体的なメリットやデメリット、さらには活用事例まで徹底的に解説します。
旗竿地を選ぶべきかどうか悩んでいる方は、この記事を最後まで読んで参考にしてください。


旗竿地とはどのような土地?
旗竿地の特徴と接道義務について


旗竿地は、独特な土地形状を持つことで知られ、特に都市部や住宅が密集するエリアで見られる土地の一種です。以下では、旗竿地の基本的な特徴や、接道義務との関係について詳しく解説していきます。

旗竿地の土地形状と特徴

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旗竿地(はたざおち)とは、「竿についた旗のような形をした土地」のことで、通路部分が細長く伸び、その先に宅地部分が広がる形状が特徴です。この細長い部分を「路地状部分(ろじじょうぶぶん)」と呼び、そこを通って建物の敷地にアクセスします。
また、旗竿地は別名「敷延(しきえん)」とも呼ばれています。狭い通路部分を挟んで宅地が奥に位置しており、その形状から土地価格が抑えられる一方で、設計や生活に工夫が必要な土地でもあります。
このような土地形状は、都市部で土地利用効率を上げるために分譲地として販売されることが多く、特に予算に制約のある方や静かな住環境を求める方に選ばれやすい土地形状です。

旗竿地と接道義務

旗竿地は一般的な整形地とは異なり、道路に接する部分が狭く、奥まった形状をしているため、接道義務の要件を満たすかどうかが重要なポイントとなります。日本の建築基準法では、建物を建築するために「幅員4m以上の道路に2m以上接していること」が義務付けられています。このルールは、建物の安全性を確保し、緊急時の救急車や消防車などが建物へアクセスできるようにするためのものです。
旗竿地では、狭い路地状部分が接道義務を満たす必要があります。建築基準法をクリアしていなければ、新築だけでなく、増改築にも制限がかかる可能性があります。そのため、旗竿地を購入する際には、事前に路地状部分の幅や位置を確認し、法的に問題がないかを調査することが必要です。






旗竿地のメリット


旗竿地は一見デメリットが多く存在するようにみえますが、実際には土地特有のメリットも数多くあります。以下ででは旗竿地の具体的なメリットについて詳しく解説します。

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44:63 あざみ野の住宅(フューチャースケープ建築設計事務所)

近隣の相場よりも地価が安い

旗竿地は、一般的に整形地に比べて地価が安く設定されています。その理由は、土地形状が特殊であることにより購入者が限られることや、接道部分が狭いことで土地を利用するのに制限が生じやすいためです。
この価格の安さは、予算に制約がある方や、土地にコストをかけずに建築に資金を回したい方にとっては非常に魅力的なポイントとなっています。
また、旗竿地は都市部や住宅密集地で見られることが多く、希望するエリアで広い土地を手に入れられる可能性も高いです。同じ予算で整形地を購入するよりも広い敷地を確保できることは、旗竿地を選択する大きなメリットと言えるでしょう。

静かで落ち着いた住環境

旗竿地は、奥まった場所に建物が配置されるため、交通量の多い道路や人通りから距離を取ることができます。そのため、周囲の騒音が少なく、静かな住環境を求める方には非常に適しています。たとえば、大通りに面した一般的な土地では、車の走行音や通行人の話し声が室内にまで届くことがあり、日常生活に影響を与えることがあります。
しかし、旗竿地の場合は建物が道路から離れた場所に位置するため、こうした騒音の多くを遮断できます。この特徴は、小さなお子さんがいる家庭や、在宅勤務で静かな環境を必要とする方にとって特に大きなメリットとなるでしょう。

通行人の視線や敷地への侵入を抑制する

旗竿地の建物は、道路から奥まった場所に位置するため、通行人からの視線を遮りやすいという特徴があります。一般的な整形地では、リビングや玄関が道路に面していることが多く、プライバシーを確保するためにカーテンを閉めたり目隠しを設置する必要がある場合がありますが、旗竿地であればその心配が軽減されるでしょう。窓を開けて過ごすことが多い家庭や、庭でのアクティビティを楽しみたい方にとっては非常に大きなメリットといえます。
さらに旗竿地は、周りの建物によって敷地内への侵入を抑制し、境界には高さのある塀を必要としない。路地状部分が他人の通行を防ぐ「プライベート通路」の役割を果たすなど、一般的な整形地より外部からの侵入を抑制しやすい点も魅力です。

路地部分の面積により大きな住宅を建てられる可能性

旗竿地は、敷地全体の形状が特殊であることから、工夫次第で大きな住宅を建てられる可能性を秘めています。建築基準法では、敷地面積に応じて建築できる建物の大きさが決まりますが、旗竿地の路地状部分が敷地面積に含まれる場合、その分建築可能な延べ床面積が増えることがあります。
さらに、旗竿地の形状を活かしたユニークな設計が可能です。たとえば、路地状部分を駐車場や庭として利用することで、敷地全体を効率よく活用できます。






旗竿地のデメリット


旗竿地の魅力を説明しましたが、その特異な形状や周辺環境によって慎重に検討しなければならないデメリットも存在します。これらを理解しておくことで、購入後のトラブルや後悔を防ぐことができます。以下に旗竿地の代表的なデメリットを詳しく解説します。

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上鷺宮の家(株式会社小倉建築計画工房)

駐車スペースが狭くなりがち

旗竿地の特徴である細長い路地状部分は、狭いと車の駐車や出入りに支障をきたす場合があります。特に幅が2m程度しかない場合、購入できる車の選択肢が狭まり、駐車する際はドアを小さく開けて、すり抜けるように降りなければいけません。
一方で、路地部分の幅が3m以上確保されていれば、駐車や出入庫が比較的スムーズになります。このため、購入前に路地部分の幅を測定し、実際に車の出入りをシミュレーションしてみることをおすすめします。

建築コストが高くなる場合がある

土地の形状が特殊である旗竿地では、建築においてさまざまな制約が発生します。地盤改良工事が必要となれば工法を選択することができず、基礎工事や配管工事では、路地状部分を迂回するための追加作業が必要になることもあり、その分コストが高くなるケースもあります。
路地部分が狭い場合、建築資材の搬入や使用する施工機に成約が生じ、作業効率が低下したり、場合によっては建物の設計から見直す必要が出てきます。そのため、通常よりも工事費用が上昇することがあります。

生活インフラの整備にプラスの料金がかかることも

旗竿地では、水道管、ガス管、電気配線といった生活インフラを敷地奥の建物まで引き込む必要があります。この際、路地状部分が長い場合は工事が複雑になり、引き込む距離の分だけ追加料金が発生することがあります。既存のインフラ設備が再利用できることもありますが、老朽化していて新設や交換が必要な場合は、さらに費用がかさむ可能性があります。
また、旗竿地の路地状部分が私道である場合、他の所有者と各費用の分担が必要なケースもあります。このような場合、事前に分担割合や工事の進め方を調整する必要があります。旗竿地を購入する前には、事前に不動産業者や施工業者に相談し、具体的な工事費用や手続きについて確認することが大切です。

日当たりや風通しの面で工夫が必要

旗竿地は周囲を建物に囲まれることが多く、敷地内に十分な日当たりや風通しを確保することが難しい場合があります。特に都市部の密集地では、隣家の影響で日照時間が限られることがあります。このような環境では、建物の配置や窓の設計に工夫を凝らすことが重要です。
たとえば、天窓や高窓を活用することで、上部からの自然光を取り入れることができます。また、吹き抜けや中庭を設けることで、内部の採光や通風を確保することも可能です。風通しを改善するためには、風の流れを考慮した窓の配置や、換気性能を高める設備の導入が有効です。

プライバシーやセキュリティ面に注意

旗竿地の路地状部分は、そのままでは外部から侵入しやすい経路となる可能性があります。このため、不審者の侵入を防ぐための防犯対策が重要です。具体的には、門扉やフェンスを設けて、防犯カメラやセンサーライトを設置するなどの対策があります。
また、旗竿地では建物が奥まっているため、道路から建物が見えづらくなることが、防犯面ではリスクとなり得ます。夜間には路地部分には道にある街灯の光が届き難く暗くなりやすいため、センサーライトなどの十分な照明を確保することが重要です。






旗竿地の注意点とチェックポイント


旗竿地を購入する際には、その形状や環境によって特有の注意点があります。購入後に後悔しないためにも、事前にしっかりと情報を確認し、土地の特性を理解することが重要です。以下では、旗竿地を選ぶ際の具体的なチェックポイントについて詳しく解説します。

路地部分の幅・広さは事前にチェック

旗竿地の路地部分は、建物への出入りや駐車スペースとして活用されるため、その幅や広さが非常に重要です。幅が3m程度確保されていることが理想です。
幅が2m程度の場合、横幅の広いSUVやミニバンなどは駐車することが難しく、幅や前面道路が狭いと車を出し入れする際に何度も切り返しが必要となり、不便に感じることが多いでしょう。
さらに、路地状部分は建築資材の搬入経路にもなります。幅が狭すぎる場合、大型機械や資材を運び込むのに制約が生じ、建築作業が難航したり設計からの見直しが必要となる場合があります。

近隣の建物や周辺環境を下調べしよう

旗竿地は周囲を建物に囲まれていることが多いため、近隣の建物や周辺環境が土地の利用に大きく影響を与えます。たとえば、隣接する建物が高層の場合、旗竿地内に十分な日当たりや風通しを確保することが難しい場合があります。
建物の壁面が境界に近くなり、近隣の住民との距離が近くなるため、プライバシーの確保や生活音が問題になることもあります。購入前に土地の周囲を歩き、どのような建物が建っているのか、どのような住環境なのかを確認することが大切です。

日当たりと風通しに注意

旗竿地は周囲を建物によって、日当たりや風通しの確保が難しい場合があります。これは生活の快適さに直結するため、慎重にチェックする必要があります。購入を検討している土地に実際に足を運び、日当たりの状況や風の通り具合を確認しましょう。
場所によってはどうしても、日当たりや風通しが悪い土地がありますが、建物に天窓や高窓を設けたり、中庭を活用するなどして採光や通風を工夫することもできます。設計次第で課題を解決できる場合がありますが、費用が大きく膨らむ可能性もあるため、設計士や施工業者に相談することが重要です。

インフラの整備状況を確認

旗竿地では、生活インフラの整備が特に重要です。水道、電気、ガスなどは購入前に、不動産業者や地元の役所に問い合わせて、敷地内外のインフラ状況を確認しましょう。

隣地との境界を把握

旗竿地は敷地形状が特殊なため、隣地との境界が曖昧になりやすいです。このため、購入前に土地家屋調査士に依頼して境界線を明確にすることをおすすめします。境界が不明確なまま購入すると、後々隣地の所有者とのトラブルに発展する可能性があります。
また、隣地との境界部分にフェンスや植栽を設ける際、所有権や費用負担について明確にしておくことが重要です。これにより、隣地所有者との円満な関係を築きながら安心して暮らすことができます。

再建築が可能か確認

旗竿地は接道部分が狭いため、再建築の可否が土地選びの重要なポイントとなります。建築基準法では「幅員4m以上の道路に2m以上接していること」が接道義務として定められています。この条件を満たしていない場合、建物を新築・改築できない可能性があります。
また、現在の法律では建築可能であっても、将来的な法改正によって再建築が制限される可能性も考慮する必要があります。不動産業者や行政機関に相談し、再建築が可能であることを確認してから購入を決断しましょう。






旗竿地の建築事例をご紹介!


旗竿地の活用事例を参考にすることで、具体的なイメージがつかみやすくなります。以下にいくつかの事例を紹介します。

KJ-house(群馬県)

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KJ-house(Design Pot’s)

こちらの住宅は、住宅が密集する地域に位置し、四方を住宅に囲まれた典型的な旗竿地に建てられています。外部からの視線が気になることが大きな課題でした。その解決策として採用したのが中庭です。庭を外壁で囲み、あえて外から見えない設計にすることで、周囲の視線を遮断し、内部に開放的で安心できるプライベート空間を生み出しました。
さらにこの中庭は、光や風を効率よく取り込み、室内に自然の心地よさをもたらします。周囲からの騒音を和らげる効果も期待でき、密集した環境でも落ち着いた住まいを実現しています。

KJ-house(Design Pot’s)について詳しくはこちら



44:63 あざみ野の住宅(神奈川県)

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44:63 あざみ野の住宅(フューチャースケープ建築設計事務所)

四方を家に囲まれた旗竿地の住宅は、窓が開けにくく暗さが課題でした。この住宅では、敷地の最大建築面積44㎡に対し、法規上可能な63㎡を活かし、余剰19㎡を3つの中庭として設計。外壁に窓を設けず、中庭に大きな開口部を配置し、中庭から採光や風通しが確保できたことで、目隠し用のカーテンも必要ありません。
中庭は光と風を通し、夏には利用可能な「もう一つの部屋」として機能します。外からの視線を遮りつつ、1階からも空が見える開放感を実現しました。

44:63 あざみ野の住宅(フューチャースケープ建築設計事務所)について詳しくはこちら



明るく閉じた旗竿地の家(東京都)

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明るく閉じた旗竿地の家((株)Fit建築設計事務所)

周辺を住宅やマンションに囲まれた都心の旗竿地に、家族3人が快適に暮らせる住宅を計画しました。この限られた土地で、明るさと開放感を確保するため、空に向かって開いた高窓を採用しました。そこから降り注ぐ自然光が、室内全体にやさしい明るさをもたらし、心地よい住環境を実現しています。
さらに、隣家から借景した緑を巧みに取り込む設計により、都心にいながらも自然の息吹を感じられる豊かな空間が広がります。高窓から見える空と緑が調和し、狭小地の制約を逆手に取った、開放的で静かなプライベート空間が完成しました。

明るく閉じた旗竿地の家((株)Fit建築設計事務所)について詳しくはこちら



OOT邸(東京都)

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OOT邸(room-n アーキテクツ)

こちらの住宅は、建物の広さや高さに厳しい条件がある旗竿地ですが、外観は黒くシャープなデザイン、周囲の建物に隠れていても存在感を放っています。
1階は大きな洋室と水回りで構成され、カーテンで仕切られた開放的な空間。将来の間仕切りにも対応可能な設計で、現在は採光と通風を最大限に活かしています。2階は居間・食堂・台所がDJスペースを中心に配置され、周囲を気にせず明るさを確保するために大きなハイサイドライトを設置。勾配天井から心地よい光が降り注ぐ設計です。
限られた敷地条件を活かし、小さくても広がりを感じられる快適な住まいを実現しました。

OOT邸(room-n アーキテクツ)について詳しくはこちら



つながりの家(東京都)

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つながりの家((株)Fit建築設計事務所)

住宅が立ち並ぶ旗竿地に、仲の良い4人家族のための温かい住まいを計画しました。家族のご希望である「一日を通じて明るく、家族がつながる家」を実現するため、設計に工夫を凝らしました。
リビングダイニング沿いには、横に広がる大きな窓を配置し、自然光をふんだんに取り込む設計としました。ダイニングには吹抜けを設け、空間にさらなる開放感をプラス。吹抜けを介して、和室や子供部屋ともつながる構造とし、視覚的にも家族の存在を感じられる配置にしました。
この設計により、家族がいつでもお互いの気配を感じながら、心地よくコミュニケーションをとれる空間が生まれました。明るく開放的で、家族の絆を深める住まいとなっています。

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草津の家(滋賀県)

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草津の家(株式会社 誠工務店)

こちらの住宅は、住宅と駐車場に囲まれた旗竿地で、敷地の南側はマンション駐車場に隣接しており、建主の「プライバシーを守りたい」という要望から、南側に大きく開放する設計は避けました。
代わりに、通路を建物内に挿入したような「路地空間」をデザインを採用。内部と外部の間に新しい領域をつくり、豊かな空間を生み出しました。内部空間には路地空間に向かって大きな開口を設け、プライバシーを確保しつつ柔らかな光を一日中取り込みます。
この路地空間は内部と外部の境界を曖昧にし、奥行きと広がりを与える設計。日本の伝統的な空間の奥深さを現代風に再現し、内部と外部を一体的に考えた新しい住まいを実現しています。

草津の家(株式会社 誠工務店)について詳しくはこちら




まとめ:購入前に知っておきたい旗竿ちのメリット・デメリット


住まいを建てる土地を購入するにあたって、まず考えるのは住みたいエリアであること、交通や生活の利便性が良かったり、希望する敷地面積が確保できたり、大きな理由があると思います。旗竿地は、そのエリアの土地の中では比較的安価で、静かな住環境、セキュリティ面など特有のメリットを持つ一方で、駐車スペースの狭さや建築に制約が生じる、日当たりや風通し、接する道、生活インフラ整備の課題など、デメリットも存在します。そのため、旗竿地の購入を検討する際には、路地部分の幅や近隣環境はもちろん、建てる家や生活などのイメージをもって、その土地のメリット・デメリットを注意深くしっかり確認しておくことが重要です。
一般的な整形地より課題は多いですが、建物の設計や防犯対策を工夫することで、多くの課題を克服することができます。旗竿地の特性を理解し、自分のライフスタイルに合った選択をすることで、理想の住環境を手に入れましょう。

Text SuMiKa運営事務局

記事作成: 2017年11月25日 更新日:2024年12月13日

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