家を建てるなら外観や間取りなどこだわりたいポイントは多々ありますが、内装にこだわりたいという方も多いはず。
内装にこだわるのであれば、外せないのが内壁材のチョイス。壁は内装のなかでも大きな面積を占めるため、選ぶ材料で印象がガラリと変わります。
今回は内装材として使われることが多い、クロス(壁紙)、塗壁、木材、タイル、パネルのメリットとデメリットを説明します。さらに、塗壁のなかでも人気が高い漆喰と珪藻土の特徴も解説。内装材選びに悩むあなたの疑問を解決します。
■クロス
内装材の中でもメジャーなクロスは壁紙とも呼ばれ、ビニールや紙、織物など様々な種類が選べることが特徴。価格や素材は多様ですが、ここでは共通するメリットとデメリットをご紹介します。
◎メリット
・価格が安い
⇒クロスは比較的安価に利用できる内装材です。その理由は材料の価格が安く、扱いが簡単で工期が短く抑えられること。このメリットから張り替え費用も抑えることができ、メンテナンス性も良好です。
・掃除がしやすい
⇒一部例外もありますが、クロスは掃除が簡単にできます。汚れた時は薄めた中性洗剤を浸した布を固く絞り、汚れた部分を拭き取ってあげましょう。
・種類が豊富で好みのものが必ず見つかる
⇒クロスはメーカーから様々な柄が販売され、風合いや触感も多様なものが販売されています。機能も、防火、防汚、消臭、抗ウイルスなど様々なクロスが販売されていますので、きっとニーズに合うものが見つかるでしょう。
◎デメリット
・耐久性は少々難あり
⇒高耐久のものを除き、一般的なクロスは引っ掻きや切断に弱く、扱いに注意が必要です。そのため、ガレージや子ども部屋など、傷がつくことが予想される場所には向きません。
・結露しやすく、剥がれることも
⇒一般的にクロスは結露しやすい壁材だと言われています。生じた結露は貼り合わせ箇所の接着を弱め、クロスが剥がれてしまうこともあるのです。
■塗壁(漆喰、珪藻土、プラスター、土壁など)
塗壁は漆喰や珪藻土などの壁材を壁に塗り、内装材にする素材。日本家屋では一般的な技法ですが、独特の風合いを好む人がいるため現代建築でも取り入れられている内装材です。
◎メリット
・調湿性、防火性、防音性に優れる
⇒塗壁の多くは天然素材を利用しているため、壁そのものが湿気を吸収・放出し、防火性や防音性にも優れています。塗壁は長い間、日本の家屋に使われてきましたが、それは日本の風土に適した高機能な素材だからです。
・他の壁材には出せない独特の風合い
⇒塗壁はその表面にコテの跡や気泡を残すことができます。まばらな表面やザラつきは塗壁の魅力。世界にひとつしかない壁面を作ることができます。
◎デメリット
・掃除が難しい
⇒多くの塗壁は水を吸収しやすく、あやまって調味料やワインなどをこぼしてしまうとシミが残ってしまいます。味になる表面の凹凸にはホコリが溜まりやすく、掃除がしにくい内壁材です。
・仕上がりは職人さんの腕次第
⇒塗壁を仕上げる職人さんは左官(さかん)と呼ばれ、確かな技術が必要になる職業です。塗壁の仕上がりは職人さんの腕次第、仕上げの方法も職人さんに左右されます。また、手間のかかる仕上げの場合は長い工期がかかりコストがかさむことも。
■塗壁は漆喰 or 珪藻土どちらがベター?
ここで知っておきたいのが漆喰と珪藻土について。どちらも人気がある塗壁材ですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?
◎漆喰
主な原料は石灰岩で、珪藻土と比べて強度が高く外壁に使われることが多い素材です。また、防火性も高いことも特徴。古い蔵や城の外壁には漆喰が塗られていますが、高い強度と防火性を持ち、内部のものをしっかりと守ってくれるからなのです。
その他に消臭効果や調湿効果も備えていますので、心地よく暮らすことができそうです。
一方で、施工に時間がかかることや高価なこと、施工に高い技術が必要なことなどのデメリットがあります。その費用は一般的にクロスを選んだ場合に比べて5倍以上。手が出しづらい素材ではありますが、耐久性が高くメンテナンスコストがかかりづらいので、長い目で見れば安い買い物になるでしょう。
◎珪藻土
主な原料は藻類の殻が化石化した土を使用していて、漆喰と異なり内壁材として使用されてきた素材です。漆喰と比べて強度は落ちますがコストは安く、耐火性や消臭効果を備え、調湿効果は漆喰よりも上。漆喰よりも扱いやすいのでDIYやセルフビルドにも向いています。
デメリットは耐久性の低さで、単体では乾燥しても衝撃を加えるとボロボロ崩れてしまうこと。このデメリットを補うため、プロの左官職人さんは石灰やセメントなどを混ぜることで強度を補強しているそうです。
これらのことからまとめると、「予算に余裕がある」「強度が欲しい」場合は漆喰、「低予算に抑えたい」「さほど強度の必要ない内装に使いたい」場合は珪藻土と棲みわけが可能です。とはいえ、近年ではデメリットを補う工法も確立されているようです。どちらも魅力のある素材なので、要望があれば施工業者に相談してみましょう。
■木材
木材の内壁は大きく無垢材と合板に分けられ、どちらも美しい木目が楽しめます。他の内装材に比べてナチュラルなテイストに仕上げやすいことも特徴です。
◎メリット
・調湿性、保温性がある
⇒木材は空気中の湿気を吸収・放出してくれる素材です、なかでも無垢材の場合はその特徴が顕著。木そのものに空気を含むため、保温性にも優れています。
・年数が経つにつれて風合いが変化する
⇒マメに手入れされ、年月を経た木材は魅力的な見た目に変化していきます。古民家で見かける深い色合いの柱や、アンティークの家具のように見事な風合いに変わっていくのです。また、手入れをすることで家そのものに愛着もわいてくるでしょう。
◎デメリット
・定期的なメンテナンスが必要
⇒木材は使われる環境によって、反りや割れが発生する素材です。そのため、定期的なメンテナンスが必要になります。木材は吸水性が高いため汚れを防ぎたい場合はコーティングも必須。ワックスがけや保護材の塗装など、手間がかかる素材です。
■タイル
建築でタイルといえば陶磁器製のものが一般的、ツヤツヤとした光沢のある質感は見ていて飽きることがありません。他の内装材にはない高い防水性と高耐久性もタイルの特徴。それでは長所と短所を詳しくお伝えしましょう。
◎メリット
・防水性抜群
⇒古い家屋を見ると、キッチンやお風呂がタイル貼りになっていることも多いはず。一部例外もありますがタイルには防水性があり、水を弾いてくれます。そのため、防汚性に優れ、ふき取るだけで汚れが落ちて便利です。
・耐久性も高い
⇒タイルは外壁に使われることもあり、少しの衝撃では壊れません。高い耐久性から時には床材として使われることがあるぐらいです。
◎デメリット
・コストが高め
⇒タイルは他の素材に比べて価格が高く、多用するとコストがかさんでしまいがち。柄が美しいタイルを使用するとコストはさらに上がってしまいます。
以上で内壁材の説明は終わりですが、それぞれに長所と短所があることがご理解いただけたはず。適材適所というように、素材には向いている場所とそうでない場所があります。
家を建てる時に重要なのが見た目以上に使い心地、たとえばキッチンに無垢の木材を使ってしまうと掃除とメンテナンスが大変です。
これらの素材に詳しいのが設計士や施工業者です。彼らはどこに何が適しているのか知っているので、お得な情報を伝えてくれるはず。家を建てる時にはこちらの要望を伝えつつ、彼らのアドバイスにも耳を傾けてみましょう。
ライタープロフィール
スズキガク(@haresoratabiya1) ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。