新築を検討して調べていると「スケルトン(SI)住宅」という単語を見つけることがあります。これは家の建築方法を指す言葉で、間取りや耐久性にメリットがある工法です。
この記事では、スケルトン住宅のメリットやデメリット、そしてどのような特徴があるのかを説明します。
「箱」と「内部」からなる家、スケルトンとは?
スケルトンとは「スケルトン・インフィル(SI)住宅(集合住宅)」と呼ばれる住宅や部屋のこと。スケルトンと言っても透けているわけではありません。
建物は柱・梁・外装などの骨格部分「スケルトン」と、内装・電気施設・給水施設・キッチン・浴室などの「インフィル」で構成されています。スケルトン住宅はインフィル部分を自由に変更できることが特徴で、ライフスタイルやライフステージの変化に対応しやすい家なのです。
スケルトン建築のわかりやすいたとえが、ショッピングセンターやデパートなど。商業施設ではまず箱となるスケルトンを建て、その内部に壁や床などのインフィルをつくることで、内装を変えているのです。
一般的にはスケルトンはインフィルに比べ、耐用年数が長めです(スケルトンは100年ほど、インフィルは20〜30年ほど)。そのため、長年住んだ家でもインフィルを変えれば、新築のような内装にすることも可能なのです。
さて、このスケルトン住宅はなぜ登場し、どうして注目されているのでしょうか?
近代工法が可能にしたスケルトン(SI)住宅
もともと日本では、スケルトンとインフィルという分け方はなく、柱や床をつくり、ふすまや土壁で間取りを仕切っていました。
古い民家に行くと、広い客間の真ん中に柱があったりしますよね。あれは建物の重量を支えるものなので自由に動かせません。柱や梁は内装の一部であり、建物を構成する構造物でもあったのです。しかし、この工法だと柱・梁・内装が外気や人の手に触れてしまうので傷みやすく、内装が痛めば建物を丸ごと建て替えることもよくありました。
ここに新しく登場したのがRCラーメン構造などの近代工法です。より強度の高い工法なので構造物の耐用年数が高く、間取りも自由につくることができます。
上の間取り図を見てみましょう。家の中央部に柱がないのがわかるでしょうか? なぜこんなことが可能になったかというと、太い線で描かれている外壁が建物をしっかり支えてくれるから。これなら内装も自由に変えられます。
近代ではスケルトン建築とインフィルという考え方が登場したことで、痛んだ内装を変えれば長期間建物に住み続けることができるようになったのです。
子どもが生まれたり、両親の介護が必要になったりするなど、ライフスタイルは常に変化していくものです。ライフスタイルが変われば、以前は心地よかった間取りが不便になることもあるでしょう。平均寿命が延びた現代、その時々に合わせて間取りを変えやすいスケルトン住宅は、ロングライフに応えられる住宅なのです。
次は、SuMiKaに掲載されている建築事例から、スケルトン住宅の実例を見てみましょう。
SuMiKaの建築事例から見る「スケルトン(SI)住宅」
壁面にベニヤを使えばDIYも自由自在な「ガレージのある家」
この住宅ではガレージ部分の内壁と天井にベニヤ板を使用しています。ガレージは、DIYが趣味のご主人のために作られたもの。ベニヤ板を使用することで自由に棚や金物を設置することができるそうです。壁面が木材になっているからかリビングとは印象が違いますね。
デザインの好みは時が経つにつれて変わっていくものです。少し費用はかかりますが、壁紙や家具以外にインテリアの選択肢が増やせると、長い間愛着を持って暮らすことができるでしょう。
柱がないから開放的、水まわりの位置も自由
こちらの住宅は柱が少なく広々として開放的ですね。リビングの真ん中にはキッチンとダイニングテーブルが作られています。スケルトン住宅では二重で床をつくり、水道の配管を通すことができるので、このように自由に給排水設備を設置することが可能なのです。
上の写真右手に見える収納兼子どものベッドルームは、ロールスクリーンを活用して間仕切りにしています。壁やパーテーションと違い出し入れも自由なので、もしスケルトン住宅に住むならマネしてみたいアイデアです。
スケルトン住宅についてイメージすることができたでしょうか? ところで、スケルトン建築で家を建てる場合、どのような点に注意すればいいのでしょうか?
次に、そのメリットやデメリットをご紹介します。
スケルトン(SI)住宅のメリット・デメリット
<メリット>
・内装のメンテナンスが容易
旧来の住宅とは異なり、スケルトン住宅ではインフィル(内装部分)の交換が比較的簡単にできます。変更可能場所は内壁や天井、床だけでなく、給排水や電気設備も含まれるので、消耗具合に応じて交換することで、より長い期間住宅を活用できるでしょう。
・ライフスタイルの変化に応じて間取りが変更できる
両親の介護や子どもの成長など、ライフスタイルの変化に対応して、家の間取りを変更できます。たとえば、介護がしやすいように玄関近くに両親の部屋を設けたり、子ども部屋をつくるために壁を増築したりすることもできるのです。
・建物の寿命や耐震性が高くなりやすい
スケルトン住宅は建物の性質上、スケルトン部分(構造部や外装)に高い耐久性や剛性が求められます。そのため、長寿命で耐震性が高い住宅であることが一般的です。スケルトン部分は100年以上の耐久性を持つことも多いので、適時インフィルを取り替えれば住み続けることができます。
<デメリット>
・メンテナンスコストが割高になりやすい
上記のメリットはスケルトン住宅のデメリットに関係します。内装を変えれば工事費用や材料費などがかかるので、その分コストがかかってしまうのです。スケルトン(構造部や外装)は耐用年数が長く、家を子や孫に引き継ぐこともできますが、最終的に「ローコストだった」と実感できるのは、建て替えが必要になる20~30年後の話になります。
・賃貸タイプの場合、騒音が気になることがある
後述しますが、スケルトン住宅には賃貸タイプのものがあります。賃貸タイプの場合、借りる部屋ごとに間取りが異なるので、寝室の天井上に上階のお風呂場が来てしまう、なんてことも。排水音が気になって眠れなかったり、隣室の音楽が流れてきたりすることを想定して、インフィルは防音をしっかり施しましょう。
スケルトン「賃貸」という選択肢も
先ほど少しだけ紹介しましたが、スケルトン住宅には賃貸住宅にも見受けられます。この場合、賃貸者はスケルトンの一定区画を借り、内装は実費で工事が必要です。オフィスや店舗では一般的ですが、住居の場合は退去時に現場復帰費用がかかるので、コストの面でデメリットが目立ちます。よほど間取りや内装にこだわりたい場合を除き、避けたほうがいいかもしれません。
この記事でご紹介したメリット・デメリットから、スケルトン住宅とはロングライフに適しているが、比較的コストがかかる住宅だとわかります。
もしスケルトン住宅を選ぶなら、祖父の代から住み続けている土地で将来的に相続を考えている場合や、高齢時に建てて子どもに相続することを考えている場合など、家族に譲り渡す場合に適しているのではないでしょうか。
SuMiKaにはスケルトン(SI)住宅以外にも、家と暮らしのキーワードに関する解説記事が掲載されています。記事下のリンクから確認することができるので、気になる単語があれば併せて確認してみましょう。
ライタープロフィール
スズキガク(@haresoratabiya1) ライター・暮らしの編集者。1986年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、自転車日本一周やユーラシア大陸横断旅行に出かける。帰国後はライター・編集者として活動中。日本の暮らし方を再編集するウェブメディア「未来住まい方会議by YADOKARI」の元・副編集長。著書に「京都の小商い〜就職しない生き方ガイド〜(三栄書房)」。おいしい料理とビールをこよなく愛しています。
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