長野の山々の中で、幼少時代を過ごしました。
森林の中に秘密基地を作ったり、日常の遊び場が木々に囲まれていたことが良き思い出として心に残っています。今、大人になってもその原体験のせいか、森林の匂いや木のぬくもりを自然と好むようです。
家具に触れるとき、気になってしまうのは「木質」です。
オーク、チェリー、チーク、ウォルナット、シダー…特にチーク材の持つ深みがかった色、強さと硬さ、手触りを好むのです。
社会人1年目、初めてのボーナスで家具を買いに吉祥寺に出かけました。
木の感触を頼りにチーク材のシンプルなローテーブルを探していたところ、目に留まったのは1960年代の北欧デンマークで作られたものでした。
一目惚れのローテーブル。
新卒ボーナスが一瞬にして無くなってしまう値段。
悩んだ挙句、その日は一度家に帰って考えましたが、どうにも忘れられませんでした。次の日、お店の開店と同時に飛び込んで、迷わず購入。
それから北欧家具に魅せられて早10年。
好きが高じてフィンランドやデンマーク現地まで家具や食器を買い付けに行くようになり、少しずつヴィンテージ家具に囲まれる暮らしに。
月初めの休日は、オイル片手に家具の手入れも。
オイルで磨き上げる姿を、妻と息子は「また始まった」と呆れ顔もしばしば。
お気に入りのヴィンテージ家具に囲まれて、朝のコーヒーを飲む時間は至福のひととき…
なんて優雅な時間はあまりありませんが、毎日の食卓や、いこいの時間を積みかさねる中で、いつのまにか暮らしに馴染み、佇んでいます。
(Text: ウエスギセイタ)
著者プロフィール
ウエスギセイタ
暮らしを変えた家具 バックナンバー
Vol.01 大塚久美子(株式会社大塚家具 代表取締役社長)
Vol.02 柳澤大輔(面白法人カヤック 代表取締役CEOJ)