こんにちは。Interstudioの笹木と申します。
確かに伝統構法と言ってもいろいろあります。
Z03Zさんが、なぜ伝統構法に惹かれているのかを省みればおのずと答えはわかると思います。
一応一般的な意見を述べさせていただきます。
(1)かっこいい。
歴史的なことに興味をお持ちであれば、木組みだけで組み立てる、金物を使わない、職人技、歴史の重み、日本的、などの魅力はたまらないと思います。多くのファンはここが入口だと思いますが、もう一歩深入りして欲しいと思います。
(2)健康にいい。
木材が健康に良いと一般的に思われていると思いますが、本当によいのは土壁だと思います。線(柱・梁)を構成する木材よりも面を構成する壁材の方が圧倒的に空気環境を支配しています。伝統住宅の柔らかい空気感は土壁が作っています。(断熱性・蓄熱性・吸放湿性・放射熱など)さらに土壁にするなら、骨組みを伝統構法にするのがベストです。プレカットでは持たないでしょう。
(3)強い。
本格的な伝統構法の骨組みにすれば、確かに強いです。筋交や合板で水平剛性を各部で高める現行法のやり方に疑問を持つ方は多勢います。しかし本格的な伝統構法を構造的に立証するのは選りすぐりのチームで取組む必要がありますし、クライアントにもそれなりの理解力が求められます。
ちなみにコンクリート基礎にすべきか、石場建てにすべきか、全体的にみれば局部的な工法の問題の差ではないでしょうか? 確かに木とコンクリートは相性が悪いので基本的には避けるべきですが、これは良好な土地に建てる場合のみ有効な手段だと思います。地面の下部構造次第です。
(4)自然。環境にいい。
環境負荷の少ない工法です。ほとんどの部材が自然素材で作ることが可能です。これを実現するためにはそれなりの設計者と施工体制を作る必要があります。アイディアだけでは失敗すること間違いなし、です。
次にデメリットです。
(A)高い。
かつて普通に行なわれていた伝統構法をそのまま実現するためには、良質の木材、技術とメンタリティ両面において質の高い施工体制、(レベルの高い構造設計者)、が必要になります。私が関わっている地域では容易にすべてを手配することが可能で、決して高価というほどではありません。しかし大都市中心部では困難あるいはかなり高価になってしまいます。
(B)構造設計と役所がネック
確認申請が必要な地域の場合は、建築基準法が大変な足かせになります。緩和規定で通過できる地域とそうでない地域の差もあります。正面突破するにはレベルの高い構造設計者との協働が必要になります。役所の申請料も格段に高価になります。おそらく適合性判定を受けなくてはならないと思います。(改正されたのかな?)
(C)中途半端なニセモノになりがち
これはデメリットではありませんが、(1)~(4)のすべてを満たしているのが本来の伝統構法なので、どれかだけでよい、という「ええとこどり」に陥る可能性が大なのです。そうすると効果が半減してしまう恐れがあります。質感の違いは、見る人が見ればすぐにわかってしまいます。
おおまかな話ではこんな感じです。
この中のどれがよいのか、ではなくてこれだけ多面性がある、ということだと思います。
4つの問題はお互いに繋がっていますので、どういうバランスを取るのか、というところに落とし込めばよいのではないでしょうか?
各部の部品・工法・テクニックの話になるととてもまとめきれません。
とりあえずはご自分の方向を見定めていただければ幸いです。
ご質問があればいつでもお気軽にどうぞ。
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