みずき様
ご相談の内容は「環境工学」という専門分野になりますがこれが非常に専門的で断熱材の話だけで説明できるものではありません。地域の気候や冷暖房設備の方式によって適切な工法が変わり、それらを統合的に設計する技術が必要です。
詳しい説明はこのフォームでは限度がありますのでこの場ではご相談についてのみ参考になればと思います。
(1)
ご心配されている通り壁内結露が日本においては最も注意しなければならない事のひとつです。ポイントは高気密にすることができるかにあります。
高気密は一般的には冷暖房エネルギーを低く抑えることが注目されていますがそれ以前に木造住宅においては壁内結露をしないようにするために高気密にすると言った方が正しいです。前述の専門家さんのスペースラボさんの書かれている内容に同じです。この防湿層を極力隙間無く施工する技術が求められます。防湿シートとシートの重なりの部分をしっかり固定できるように下地を組むとか、コンセントボックスなどの設備機器の部分でしっかり気密が確保されているかなど、チェック項目は多岐にわたります。そこがしっかり施工されていれば袋付きグラスウールでも理論上問題ありません。
(2)
グラスウールは吸湿性がありそれが原因で重くなりずれ下がり、部分的に断熱が欠損して、またそこが結露しやすくなるという悪循環に入る恐れがあります。気密工事が完璧であればその心配はないのですが、完璧でないことを見込んで、吸湿しても問題を起こさない断熱材に替えるという方法があります。繊維系断熱材ではポリエステル系断熱材がオススメです。例としてパーフェクトバリアという商品があります。その他発砲ウレタン系の例としてアクアフォームがあります。
極力高気密施工して、どうしても壁内に流れ込む湿気に対して吸湿しても問題を起こさない断熱材を選ぶという考え方です。
なお参考までに繊維系断熱材は一般的に大工さんが施工します。
発砲ウレタン系断熱材の工事は専門業者さんが施工します。専門業者さんはメーカーが認定している場合が多いので施工精度の信頼はあると考えられます。
(3)
その次にどうしても室内から壁内に入ってしまった湿気を外に排出するために「通気工法」を屋根、壁に設けます。
(4)
さらに念を入れるならば遮熱シートを断熱材の外側(屋外側)に設けるという方法です。前述の専門家さんのエアロックさんの書かれている内容に該当します。
熱の移動をカットするためには輻射熱もカットしなければなりません。輻射熱は電磁波の種類の一つですが、これがまた厄介で、外壁の材質によっては熱を透過します。結露の原因は壁内と室内の温度差と湿度との関係で発生するので、できるだけ外側で輻射熱をカットする遮熱シートを設けることが望まれます。
結局のところ検討されているハウスメーカーさんの性能基準や施工基準、無ければその担当者がこの(1)から(4)までをしっかり理解されているかにかかっています。それがどうしても不安であれば、それに詳しい人に第三者的に見てもらうという方法もあります。
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カナデラボ 金谷 聡史 (Satoshi Kanatani)
一級建築士/日本建築学会員/JSHIホームインスペクター
http://kanadelabo.strikingly.com/以下はご参考までに。
そもそも「快適とは何か」に言及すると前述の専門家さんの「森林力の家」さんの書かれていることも正論となります。不快に感じるからエアコンにスイッチを入れます。エアコンの効きを良くするために高気密高断熱が求められます、、、というように高気密高断熱が当たり前になっているのですが、そもそもなぜ不快に感じるかということを追求することも同じように重要だと考えられており、その分野の研究も盛んです。調湿効果のある素材によって高温多湿の日本の夏を不快さを緩和し、通風を確保すればエアコンが無くても快適に過ごすことが可能な場合もあります。また蓄熱の効果を利用し冬の冷え込みや夏の室内温度(輻射環境を含めた)の上昇を緩和することで快適さを増します。上述の輻射熱による温熱環境を改善することも重要です。ここまで掘り下げるとエアコンの設定温度26度が快適という世界ではないことがお分かりだと思います。
周辺環境の状況にもよりますし、どれが正しいというものはありません。
住まわれる方の価値観の問題だったりもします。それらを丁寧に読み取り、統合的に設計することができる技術が建築家(設計者)に求められる能力です。それが冒頭でお伝えしたかったことでした。